在宅での介護は、介護する側・される側の双方にとって心身ともに大きな負担となり得ます。
その負担を少しでも軽くするためには、日々の生活を送る「家」の間取りを工夫することが非常に重要です。
特に、階段のない平屋の新築や、現在の住まいを改修するリフォームは、安全で快適な介護環境を実現するための有効な選択肢です。
この記事では、介護しやすい間取りの基本原則から、場所別の具体的なポイント、費用や補助金制度までを網羅的に解説します。
もくじ
この記事でわかること
- 介護の負担を軽減する間取りの基本原則
- 平屋の新築やリフォームなど状況に応じた実現方法
- 介護改修で活用できる補助金制度と費用相場
介護しやすい間取りが家族の心と体の負担を軽くする
介護が必要になると、それまでの暮らしが一変します。
夜中のトイレ介助や入浴の手伝いなど、一つ一つの動作が介護者の体に負担をかけ、精神的な疲労にもつながります。
介護しやすい間取りの家は、被介護者の安全を守るだけでなく、介護者の移動距離を短縮し、無理のない姿勢で介助できるスペースを確保することで、日々の負担を軽減します。
結果として、家族全員が心にゆとりを持って暮らせる時間が増え、より良い関係を築くための基盤となります。
高齢者が住みやすい家の条件については「高齢者が住みやすい家の条件とポイント」で詳しく紹介しています。
【最重要】後悔しないために!介護しやすい間取りの5つの基本原則
将来にわたって安心して暮らせる家を建てる、あるいは改修するためには、介護の視点から押さえておくべき基本的な原則があります。
これから紹介する5つの原則は、被介護者の自立を促し、介護者の負担を軽減する家づくりに不可欠な要素です。
これらを設計や計画の初期段階から盛り込むことで、いざという時に「こうしておけば良かった」と後悔することを防ぎます。
原則1:介護動線はできるだけ短くシンプルにする
在宅介護において最も負担が大きい作業の一つが、トイレへの移動介助です。
特に夜間は、介護者・被介護者ともに心身への負担が大きくなります。
この負担を軽減するためには、寝室、トイレ、浴室といった介護で頻繁に使う空間をできるだけ近くに配置し、動線を短くすることが最も重要です。
理想は、寝室のすぐ隣にトイレを設けるなど、生活空間をコンパクトにまとめること。
この「ユニット化」により、家の中での移動介助が格段に楽になります。
原則2:車椅子での移動やUターンが可能な通路幅を確保する
将来的に車椅子を利用する可能性を考慮し、通路や出入り口の幅を十分に確保しておくことが大切です。
車椅子でスムーズに通るためには、廊下幅は80cm以上が推奨されます。
また、廊下の曲がり角や部屋の入り口など、方向転換が必要な場所には、車椅子が回転できる直径140cm程度のスペースを設けるのが理想です。
設計段階で考慮しておかないと、後からの改修は大規模な工事になります。
原則3:室内の小さな段差も徹底的に解消する
高齢になるとわずかな段差でもつまずきやすく、転倒による骨折は寝たきりの原因にもなりかねません。
部屋の敷居や、フローリングと畳の境目、玄関の上がり框など、家の中にあるあらゆる段差をなくす「バリアフリー化」は、安全な住環境の基本です。
新築の場合は床を完全にフラットに設計し、リフォームの場合はスロープを設置したり、床材のかさ上げを行ったりして段差を解消します。
特に浴室やトイレの出入り口は、水回り用の段差解消部材などを活用してフラットに保つことが重要です。
バリアフリーの家づくりについては「バリアフリーの家をつくる際の工夫ポイント」で詳しく紹介しています。
原則4:扉は開閉しやすい引き戸を標準にする
室内の扉は、開き戸よりも引き戸を選ぶのが原則です。
開き戸は、扉を開ける際に体を前後に動かす必要があり、車椅子を使っている場合や杖をついている場合には開閉が困難になります。
一方、引き戸は体を大きく動かさずに横にスライドさせるだけで開閉できるため、誰にとっても使いやすいのが特徴です。
特に、扉がゆっくり閉まるソフトクローズ機能付きや、上から吊るすことで床にレールがなく、つまずく心配のない「上吊り式引き戸」が介護には適しています。
原則5:介助者が無理なく動ける作業スペースを設ける
介護しやすい家づくりでは、被介護者の動きやすさだけでなく、介助者が作業するためのスペースを確保することも忘れてはなりません。
例えば、トイレでは便器の横に立ち、移乗を補助するためのスペースが必要です。
ベッド周りでは、シーツ交換やおむつ交換、着替えの介助などをスムーズに行うために、ベッドの三方からアクセスできる空間が求められます。
介助者が無理な姿勢で作業を続けると腰痛などの原因にもなるため、十分なスペースを確保することが長期的な介護には不可欠です。
【場所別】毎日の介護負担を軽減する間取り設計のチェックポイント
介護しやすい家を実現するためには、全体的な原則に加えて、生活シーンごとの具体的な工夫が求められます。
トイレや浴室、寝室といった毎日使う場所だからこそ、少しの配慮が日々の負担を大きく左右します。
ここでは、特に重要となる場所別に、間取りを設計する際のチェックポイントを詳しく解説します。
これから家づくりやリフォームを計画する際の参考にしてください。
トイレ:寝室の隣が理想!介助スペースを含めた広さを確保する
トイレは、介護において最も重要な場所の一つであり、寝室の隣に配置するのが理想的な間取りです。
夜間の移動距離を最小限にすることで、双方の負担を大幅に削減できます。
広さについては、車椅子で中に入り、扉を閉めた状態で便器へ移乗できるスペースが必要です。
具体的には、一般的な0.75坪(約1.5畳)程度の広さを確保し、便器の横と前方に十分な介助スペースを設けることが推奨されます。
また、立ち座りを補助するL字型の手すりや、緊急時に外部から駆けつけられるよう外開き戸または引き戸を採用することも、安全な家づくりには欠かせません。
浴室:入口の段差解消と洗い場の十分な広さがカギ
浴室は転倒事故が起こりやすい場所のため、安全対策が特に重要です。
まず、脱衣所と浴室の出入り口の段差を完全になくし、床は滑りにくい素材を選びましょう。
扉は、開口部を広く取れる3枚引き戸などが適しています。
洗い場には、シャワーチェアを置いても介助者が楽に動ける十分な広さを確保することが大切です。
浴槽はまたぎやすい高さのものを選び、浴槽内や洗い場の壁には、立ち座りや移動を支える手すりを複数設置すると、安心して入浴できます。
手すりの種類については「手すりの種類と新築住宅に設置する際の選び方」で詳しく紹介しています。
寝室:介護ベッドの配置と見守りやすさを最優先に考える
寝室は、被介護者が一日の多くを過ごす場所であり、心身ともに安らげる環境づくりが求められます。将来的に介護用ベッドを設置することを想定する場合、主介助側には80cmから100cm程度の作業スペースを確保できる広さが推奨されます。日中は扉を開放しておくことで、家族の気配を感じながら過ごせ、孤立感を和らげることができます。夜間の急な呼び出しに備え、介護者の寝室との距離が近いことも考慮すべき点です。
玄関・アプローチ:手すりの設置と車椅子が回転できるスペースを確保
玄関周りは、外出時のスムーズな移動をサポートする重要なポイントです。
屋外のアプローチから玄関ポーチまでは、階段ではなく緩やかなスロープを設置することが望ましいです。
玄関ドアは、車椅子でも開閉しやすい引き戸が理想ですが、難しい場合はアーム付きのドアクローザーなどで開閉を補助する方法もあります。
玄関の土間は、車椅子を置いたり、方向転換したりできる広さを確保しましょう。
また、上がり框の段差を低くし、縦型の手すりを設置することで、靴の着脱や立ち上がりの動作が安全に行えます。
LDK:家族の気配が感じられ、孤立させない配置計画
被介護者が日中過ごすリビング・ダイニング・キッチン(LDK)は、家族とのつながりを感じられるオープンな空間にすることが大切です。
寝室がLDKに隣接していれば、引き戸を開放するだけで一体的な空間として使え、被介護者はベッドにいながら家族とコミュニケーションを取ることができます。
キッチンからリビング全体が見渡せる対面キッチンなども、調理をしながら様子を見守れるため安心です。
車椅子での移動を考慮し、家具の配置にゆとりを持たせ、家の中での移動が妨げられないように計画しましょう。
【新築・建て替え】将来の介護まで見据えた平屋の間取りアイデア
これから新築や建て替えを計画するなら、将来の介護まで見据えた設計が可能な平屋が非常におすすめです。
すべての生活空間がワンフロアに収まる平屋は、階段での転倒リスクがなく、車椅子での移動もスムーズに行えます。
設計の自由度も高いため、介護動線と家事動線を両立させた、効率的で暮らしやすい間取りを実現しやすいのが大きなメリットですし、将来的な多世帯住宅を検討している場合にも適しています。
多世帯住宅については「多世帯住宅で円満に暮らす間取り選びとトラブル対策」で詳しく紹介しています。
水回り(トイレ・浴室)を集約して家事と介護を効率化する
平屋の設計では、寝室の近くにトイレ、洗面脱衣室、浴室といった水回りを集約させる間取りが効果的です。
これにより、夜間のトイレ介助などの介護動線が最短になるだけでなく、洗面脱衣室で洗濯から室内干し、収納まで完結させるなど、日々の家事動線も非常に効率的になります。
介護と家事の両方の負担を軽減できるこのレイアウトは、家族全員が快適に暮らせる平屋を実現するための基本と言えるでしょう。
家の中の移動をスムーズにする「回遊動線」を取り入れる
回遊動線とは、家の中に行き止まりがなく、ぐるりと一周できる動線のことです。
例えば、キッチンからパントリーを抜けて洗面室へ、そして廊下を通ってリビングへ戻れるような間取りが挙げられます。
この動線を取り入れると、車椅子での移動が楽になるだけでなく、家族が朝の忙しい時間帯にすれ違う際にもストレスがありません。
日々の暮らしやすさと介護のしやすさを両立できるため、特に平屋で採用しやすい人気のアイデアです。
【リフォーム】今の住まいを改修!介護しやすい間取りにする具体策
現在の住まいで介護を行う場合、大掛かりな建て替えが難しくても、リフォームによって暮らしやすさを大きく改善することが可能です。特に2階建ての住宅では、生活の拠点を1階にまとめることが重要なポイントになります。
制約がある中でも、ポイントを押さえた改修を行うことで、安全で負担の少ない介護環境を整えることができます。
生活の中心を1階に集約し、上下移動をなくす
2階建て住宅の介護リフォームで最も効果的なのは、生活のすべてが1階で完結するように間取りを変更することです。
これまで2階にあった寝室を1階に移し、リビングの一角を改修して寝室スペースを設ける、あるいは使っていない和室を寝室にするといった方法が考えられます。
1階にトイレや浴室があれば、危険な階段の昇り降りが不要になり、被介護者の安全確保と介護者の負担軽減に直結します。
このリフォームは、介護生活を送る上での基本となります。
手すりの設置や床材の変更で転倒リスクを減らす
比較的小規模なリフォームでも、安全性は大きく向上します。
廊下や階段、トイレ、浴室、玄関など、立ち座りや移動の際に体を支える必要がある場所に手すりを設置することは、転倒予防の基本です。
また、滑りやすいフローリングをクッションフロアやカーペットなど、グリップが効きやすく衝撃吸収性の高い床材に変更することも有効です。
部屋の敷居などの小さな段差を解消するリフォームとあわせて行えば、家の中での移動がより安全になります。
介護リフォームにかかる費用相場と活用できる補助金制度
介護のための住まい改修を考える際、気になるのが費用です。
リフォームの内容によって費用は大きく異なりますが、公的な補助金制度を活用することで、経済的な負担を軽減できる場合があります。
ここでは、リフォームにかかる費用の目安と、代表的な補助金制度である介護保険の住宅改修について解説します。
計画を立てる前に、これらの情報を把握しておくことが重要です。
場所別のリフォーム費用を把握して計画を立てる
介護リフォームの費用は、工事を行う場所や内容によって大きく変動します。
例えば、手すりの設置は数万円から可能ですが、和式トイレを洋式に変更し、スペースを拡張するようなリフォームでは20万円から50万円以上かかることもあります。浴室をユニットバスに交換し、バリアフリー化する工事は50万円から150万円程度が目安です。
どこに優先的にお金をかけるべきか、専門家と相談しながら、必要な工事内容と予算を照らし合わせて計画を立てましょう。
介護保険で利用できる住宅改修費の支給とは?対象工事と申請手順
要支援または要介護認定を受けている場合、介護保険制度を利用して住宅改修費の補助を受けることができます。
支給限度基準額は20万円で、そのうち自己負担額を差し引いた金額が支給されます。
対象となる工事は、手すりの設置、段差の解消、床材の変更、引き戸などへの扉の交換、和式便器から洋式便器への取替えなどです。
利用するには、必ず工事着工前に市区町村への申請が必要なため、まずは担当のケアマネジャーに相談することから始めましょう。
参考:【厚生労働省】介護保険における住宅改修(PDF)
介護しやすい間取りに関するよくある質問
ここまで介護しやすい間取りについて解説してきましたが、実際に家づくりやリフォームを検討する際には、さまざまな疑問が生じるものです。
ここでは、特に多く寄せられる質問とその回答をまとめました。
計画を進める上での参考にしてください。
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今ある家を介護リフォームする場合、どこから手をつけるべきですか?
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夜間の排泄介助は介護において負担が大きい側面の一つです。そのため、排泄ケアに関する工夫が重要とされています。例えば、寝室の近くに手すり付きで介助スペースのあるトイレを設けることや、寝室からトイレまでの動線を確保することは、負担を軽減する一つの方法として考えられます。これらの改善は、日々の介護負担の軽減につながる可能性があります。
家全体のリフォームが難しい場合でも、まずはこれらのポイントから検討することをおすすめします。
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将来の介護を考えて平屋を建てるなら、何坪くらいの広さが必要ですか?
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夫婦2人暮らしに加えて将来の介護を想定する場合、25坪から30坪程度の広さが一つの目安となります。
内訳は、LDK、夫婦の寝室、介護用の個室、水回りに加え、車椅子が通れる広い廊下や介助スペースを確保するための余裕分です。
コンパクトながらも、介護に必要なスペースをしっかりと確保した無駄のない間取りの平屋が求められます。 -
被介護者だけでなく、介護する側が楽になる間取りの工夫はありますか?
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介護動線と家事動線をできるだけ短く、重ね合わせることが有効です。
例えば、洗面脱衣室に室内物干しスペースや下着・タオル類の収納をまとめることで、入浴介助と洗濯、片付けがスムーズに連携できます。
また、家の中を行き止まりなく移動できる「回遊動線」のある平屋なども、日々の移動距離を減らし、介護する側の身体的な負担を軽減する工夫の一つですし、新築に必要な設備を検討する上でも参考にしてください。
新築にいらない設備と付けて良かった設備については「新築にいらない設備と付けて良かった設備ランキング」で詳しく紹介しています。
まとめ
介護しやすい間取りとは、被介護者の安全と自立を支え、同時に介護者の心身の負担を軽減する住まいの形です。
その基本は、動線の短縮化、段差の解消、十分なスペースの確保にあります。
これから家を建てるなら、ワンフロアで生活が完結する平屋が理想的です。
現在の家で介護に備える場合は、生活空間を1階に集約するリフォームが有効な手段となります。
いずれの場合も、専門家のアドバイスを受けながら、家族の状況に合った最適なプランを検討することが後悔のない家づくりにつながります。
この記事の編集者
メタ住宅展示場 編集部
メタ住宅展示場はスマホやPCからモデルハウスの内覧ができるオンライン住宅展示場です。 注文住宅の建築を検討中の方は、時間や場所の制限なくハウスメーカー・工務店を比較可能。あなたにヒッタリの家づくりプランの作成をお手伝いします。 注文住宅を建てる際のノウハウなどもわかりやすく解説。 注文住宅でわからないこと、不安なことがあれば、ぜひメタ住宅展示場をご活用ください。
運営会社:リビン・テクノロジーズ株式会社(東京証券取引所グロース市場)




