建物の高さを制限する斜線制限には、道路斜線・隣地斜線・北側斜線の3種類があります。
これらの制限は、土地がどの用途地域にあるかによって適用の有無や内容が異なります。
この記事では、それぞれの斜線制限の目的や具体的な数値を解説し、用途地域ごとの違いが一目でわかる一覧表も掲載しています。
家を建てる前に、自分の土地にどのような高さ制限があるのかを把握しましょう。
もくじ
この記事でわかること
- 3種類の斜線制限(道路・隣地・北側)それぞれの目的と仕組み
- 用途地域ごとに異なる斜線制限の適用ルール
- セットバックによる緩和措置や、あわせて知るべき他の高さ制限
斜線制限とは?建物の高さや形を決める建築基準法のルール
斜線制限とは、道路や隣地の採光・通風を確保し、圧迫感をなくすために定められた建築基準法のルールのことです。
敷地の境界線(道路または隣地)から一定のルールで引かれた斜めの線(斜線)の内側に、建物を収めなければならないという高さ制限です。
このルールがあるため、建物の上が斜めに削られたような形になることがあります。
斜線制限について正しく理解することで、土地を最大限に活用した設計が可能になります。
斜線制限は「道路斜線」「隣地斜線」「北側斜線」の3種類
斜線制限の種類は、制限の基準となる場所によって「道路斜線制限」「隣地斜線制限」「北側斜線制限」の3つに分けられます。道路斜線は前面道路の環境を、隣地斜線は隣の敷地の環境を、北側斜線は北側にある隣地の住環境を保護することが主な目的です。
これらの制限は単独ではなく、土地の条件に応じて複数適用される場合があるため、それぞれの内容を理解しておく必要があります。
道路斜線制限:道路の採光や風通しを確保するための高さ制限
道路斜線制限は、建物の前面道路の採光や風通しを確保し、周辺の開放的な空間を保つための高さ制限です。具体的には、前面道路の反対側の境界線から敷地に向かって、一定の勾配で引かれた斜線の内側に建物を建てる必要があります。この制限により、道路に面した建物が過度に高くなることを防ぎ、街並みの圧迫感を軽減する役割を果たしています。多くの用途地域において適用される基本的な制限です。
適用される区域と勾配の具体的な数値
道路斜線制限は、原則としてすべての用途地域に適用されます。
ただし、用途地域によって勾配の数値が異なります。
住居系の用途地域(第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、準住居地域、田園住居地域)では勾配が「1.25」と定められています。
一方、商業地域や工業地域など、それ以外の用途地域では勾配が「1.5」となり、より高い建物を建てることが可能です。
セットバック(壁面後退)による緩和措置について
道路斜線制限には、セットバックによる緩和措置があります。
セットバックとは、建物を前面道路の境界線から後退させて建てることを指します。
建物を後退させた場合、その後退した距離と同じ分だけ、前面道路の反対側の境界線が外側にあるとみなして斜線を引くことができます。
これにより、高さ制限が緩やかになり、同じ敷地でもより高さのある建物を建てることが可能になります。
隣地斜線制限:隣の敷地の日照と風通しを守るための高さ制限
隣地斜線制限は、隣の敷地の日照や風通しを確保し、良好な環境を保つための高さ制限です。
隣地との境界線を起点として、一定の高さを超える部分に規定の勾配で引かれた斜線の内側に建物を収める必要があります。
この制限により、高層の建物が隣地に近接して建つことで生じる日照問題や圧迫感を防ぎます。ただし、すべての用途地域に適用されるわけではなく、主に中高層の建物を想定した規制です。
適用されない区域と基準となる高さ(20m・31m)
隣地斜線制限は、すべての区域に適用されるわけではありません。第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域では、より厳しい「絶対高さ制限」や「北側斜線制限」があるため、隣地斜線制限は適用されません。
制限が適用される地域では、まず基準となる高さが定められています。住居系用途地域では基準高さが20m、商業・工業系用途地域では31mとなり、建物のうちこの高さを超える部分に対して斜線制限がかかります。
用途地域ごとに異なる勾配の数値
隣地斜線制限の勾配は、基準となる高さを超えた部分に適用され、その数値は用途地域によって異なります。
基準高さが20mとされる第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、準住居地域では、勾配は「1.25」です。
一方、基準高さが31mとされる準工業地域、商業地域、近隣商業地域、工業地域、工業専用地域では勾配が「2.5」と定められており、より緩やかな制限となっています。
北側斜線制限:北側隣地の日照を確保する最も厳しい高さ制限
北側斜線制限は、建物の北側にある隣地の日照を確保することを目的とした、斜線制限の中で最も厳しいとされる高さ制限です。
日本では住宅を南向きに建てることが多いため、北側の隣家の日当たりを特に保護する必要があります。
この制限は、北側の隣地境界線から一定の高さを起点として、規定の勾配で引かれる斜線の内側に建物を収めるよう定めています。
主に住居系の用途地域に適用される規制です。
第一種・第二種低層住居専用地域などで適用される
北側斜線制限は、良好な住環境の保護を目的としているため、主に住居系の用途地域で適用されます。
具体的には、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域が対象です。
これらの地域では、特に北側隣地の日照権を確保することが重要視されています。
なお、日影規制の対象区域では、この制限が緩和される場合があります。
基準面の高さ(5m・10m)と勾配の考え方
北側斜線制限では、まず北側の隣地境界線上に基準となる高さを設定します。
第一種・第二種低層住居専用地域と田園住居地域では、この高さが5mに設定されます。
第一種・第二種中高層住居専用地域では10mです。
この高さを起点として、真北方向の隣地に向かって1.25の勾配で斜線が引かれます。
建物はこの斜線の内側に収まるように設計しなければならず、屋根の形が北側に向かって下がる特徴的なデザインになることが多くあります。
【用途地域別】斜線制限の一覧早見表で適用の有無をチェック
これまで解説した3つの斜線制限が、どの用途地域で適用されるかをまとめました。
ご自身の土地がどの地域に該当するかを確認し、どのような制限がかかるのかを把握するための参考にしてください。
ただし、特定行政庁による条例などで内容が異なる場合があるため、正確な情報は必ず役所で確認が必要です。
斜線制限の用途地域別概要
- 【第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域】
- 道路斜線:適用(勾配1.25)
- 隣地斜線:原則として適用なし。ただし、特定行政庁が定める場合は適用されることがあります。
- 北側斜線:適用(基準高さ5m、勾配1.25)
- 【第一種・第二種中高層住居専用地域】
- 道路斜線:適用(勾配1.25)
- 隣地斜線:適用(基準高さ20mまたは31m、勾配1.25または2.5)※特定行政庁が定める
- 北側斜線:適用(基準高さ10m、勾配1.25)※日影規制の適用がある場合は除外される
- 【第一種・第二種住居地域、準住居地域】
- 道路斜線:適用(勾配1.25)
- 隣地斜線:適用(基準高さ20mまたは31m、勾配1.25または2.5)※特定行政庁が定める
- 北側斜線:原則として適用なし
- 【近隣商業地域、商業地域】
- 道路斜線:適用(勾配1.5)
- 隣地斜線:適用(基準高さ20mまたは31m、勾配1.25または2.5)※特定行政庁が定める
- 北側斜線:原則として適用なし
- 【準工業地域、工業地域、工業専用地域】
- 道路斜線:適用(勾配1.5)
- 隣地斜線:適用(基準高さ20mまたは31m、勾配1.25または2.5)※特定行政庁が定める
- 北側斜線:原則として適用なし
複雑な斜線制限もプロに相談!無料の家づくりプランで解決
斜線制限は用途地域や土地の形状によって内容が複雑に変わるため、専門的な知識がないと正確な判断は難しいものです。
自分の土地にどのような家が建てられるのか、最大限にスペースを活かすにはどうすれば良いかを知るためには、建築のプロに相談するのが確実です。
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斜線制限以外にも知っておきたい建物の高さに関する規制
建物の高さを制限するルールは、斜線制限だけではありません。
地域によっては、さらに厳しい高さに関する規制が設けられている場合があります。
特に住居系の用途地域で家を建てる際には、「絶対高さ制限」と「日影規制」についても知っておくことが重要です。
これらの規制は、斜線制限と合わせて建物の設計に大きな影響を与えます。
絶対高さ制限:低層住居専用地域に定められた高さの上限
絶対高さ制限は、第一種・第二種低層住居専用地域および田園住居地域に適用される規制です。
これらの地域では、良好な住環境を保護するため、建物の高さを原則として10mまたは12m以下にしなければならないと定められています。
斜線制限をクリアしていても、この上限を超えることはできません。
都市計画によって具体的な高さが決められており、低層住宅が立ち並ぶ穏やかな街並みを形成する役割を果たしています。
日影規制:一定時間以上の日影ができないようにするルール
日影規制は、周辺の土地に一定時間以上の日影が落ちないように建物の高さを制限するルールです。
特に冬至の日を基準とし、敷地境界線から一定の範囲内にできる影の時間を測定します。
この規制は、中高層の建物によって近隣の日照が妨げられるのを防ぐために設けられています。
商業地域や工業地域などを除く多くの用途地域で適用される可能性があり、建物の形や配置に影響を与える重要な規制の一つです。
斜線制限の一覧に関するよくある質問
斜線制限に関して、特に疑問に思われがちな点をQ&A形式でまとめました。
-
隣地斜線制限と北側斜線制限はどのように違うのですか?
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一番の違いは目的と対象地域です。
隣地斜線は隣地全体の日照や通風を守る目的で中高層の建物が対象ですが、北側斜線は特に日照条件の悪い北側隣地を保護するための、より厳しい制限です。
そのため、北側斜線は低層・中高層の住居専用地域に限定して適用されます。 -
商業地域など、斜線制限の一部が適用されない用途地域はありますか?
-
はい、あります。
商業地域、近隣商業地域、工業地域、工業専用地域などでは、北側斜線制限は適用されません。また、第一種・第二種低層住居専用地域などでは隣地斜線制限が適用されません。
ただし、道路斜線制限は原則としてすべての用途地域で適用される点に注意が必要です。 -
道路斜線制限はセットバックすると、どのように緩和されますか?
-
建物を道路の境界線から後退(セットバック)させると、その距離の分だけ道路の反対側の境界線が外側にあるものとみなして、高さ制限の斜線を引くことができます。
これにより、斜線の角度が緩やかになり、同じ敷地でもより高い建物を建てられるようになるという緩和効果があります。
まとめ
建物の高さを規制する斜線制限には、「道路斜線」「隣地斜線」「北側斜線」の3種類が存在します。
これらの制限は、土地の用途地域によって適用の有無や勾配などの数値が細かく定められており、建物の形状や配置に大きく影響します。
特に住居系の地域では、複数の制限が重なることも少なくありません。
理想の家づくりを実現するためには、これらの複雑な規制を理解している建築の専門家への相談が不可欠です。
この記事の編集者
メタ住宅展示場 編集部
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