【一級建築士が解説】「ランドリールーム」は本当に便利? 乾かない・使われない部屋になる落とし穴

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【一級建築士が解説】「ランドリールーム」は本当に便利? 乾かない・使われない部屋になる落とし穴

注文住宅や住宅性能など、住まいづくりの判断に欠かせないテーマを、一級建築士が実務目線で解説する連載コラムです。設計現場で実際に多い悩みや失敗事例をもとに、「何を確認すべきか」「どう考えるべきか」を具体的に整理します。

毎月第2・第4木曜日更新(予定)

ランドリールームは、ここ数年でご要望が本当に増えました。

「天気を気にせず干したい」「花粉の季節がつらい」「共働きなので夜に洗濯したい」打ち合わせでこの言葉が出ない日はない、というくらいの人気ぶりです。ファミリークローゼットとセットで「洗う→干す→しまう」動線として提案されることも多く、SNSでも家事ラク間取りの定番になっています。

ただ、住み始めてから「思ったより乾かない」「生乾き臭がする」「結局リビング干しに戻って、今は物置です」という声も、同じくらい耳にするのです。ランドリールームは「部屋を作れば乾く」のではなく、乾く条件を設計して初めて機能する空間です。ここが抜けたまま採用されると、理想と現実のギャップがはっきり出ます。

この記事では、ランドリールームの魅力はちゃんと認めたうえで、設計者として現場で見てきた「住んでから効いてくる盲点」を、包み隠さずお話しします。広さや間取りを決める前に、図面だけでは分からない部分を一緒にのぞいてみましょう。

もくじ

1. なぜ「ランドリールーム」は人気なのか?


まずは、なぜこれほど支持されるのか、魅力から整理しておきます。背景には、共働き世帯の増加や花粉・天候への備えといった、暮らしの変化があります。

天気・時間帯・花粉を気にせず洗濯できる

ランドリールームがあれば、天気や時間帯、季節に左右されず、いつでも洗濯物を干せます。

外干しのように「取り込み忘れて雨に濡れた」「夕方には洗濯物が冷たくなっていた」といったストレスを減らせるほか、花粉や黄砂が気になる季節にも安心です。防犯面から屋外に洗濯物を干したくない方や、共働きで夜に洗濯することが多いご家庭にとっては、ランドリールームを採用する大きな理由になるでしょう。

リビングに洗濯物を出さず、生活感を隠せる

リビングや寝室で部屋干しをすると、洗濯物が目につきやすく、どうしても生活感が出てしまいます。

来客のたびに慌てて片付けたり、取り込んだ洗濯物をソファの上に置いたままにしたりすることもあるでしょう。

ランドリールームがあれば、洗濯物を干す場所を専用の空間にまとめられるため、リビングや寝室をすっきりと保ちやすくなります。

「洗う→干す→しまう」をワンフロアで完結できる

脱衣室で脱いで、洗って、隣で干して、そのままファミリークローゼットへしまう。

この一直線の動線は、毎日の洗濯を確実にラクにします。重い洗濯かごを持って家中を移動する必要がなくなるのは、体感として大きい部分です。

ただし、この「干す場所としまう場所が近い」という便利さ、実は湿気の話と表裏一体なのです(ここは第2章「住んでから気づく「ランドリールーム」の盲点」で詳しくお話しします)。

間取り提案でも、定番になっている

ファミリークローゼット、ランドリールーム、脱衣室をひとまとめにした水回り動線は、いまや間取り提案の定番です。SNSの間取り図でも頻繁に見かけますし、「これがあると家事ラクな家」という共通認識ができつつあります。人気には、確かな理由があるのです。

2. 住んでから気づく「ランドリールーム」の盲点


ここからは、住み始めてから気づきやすいポイントを整理します。

共通するのは、「部屋を作ること」「洗濯物が乾くこと」は別問題だという点です。4つの観点から見ていきます。

乾かない盲点:部屋を作っただけでは、乾かない

洗濯物が乾く条件は、温度・湿度・気流の3つで決まります。

室温がある程度高く、湿度が低く、風が当たっている。この3つが揃って、初めて洗濯物は乾くのです。

ところが、部屋を用意しただけでは、このどれも満たされません。むしろ、濡れた洗濯物が蒸発させた水分で室内の湿度はどんどん上がり、乾きにくい環境になっていきます。風がなければ、洗濯物のまわりに湿った空気が滞留したまま。

「専用の部屋なのに乾かない」のは、乾く条件が設計されていないからなのです。そして乾きが遅いと雑菌が増え、あの生乾き臭の原因にもなります。朝干した厚手のパーカーが、夜になってもまだ湿っている。この状態が続くようなら、部屋ではなく空気の流れに問題があると考えてください。

湿気の盲点:こもった湿気が、隣のクローゼットまで及ぶ

一回の部屋干しで、室内に放出される水分は、およそ1〜2リットルです。

それが毎日、一室で蒸発し続ける。換気が不十分だと、壁や天井にカビが生えたり、窓サッシや洗濯機の裏が湿気でやられたりします。
そして、ここが第1章でお話しした表裏です。「干す場所としまう場所が近い」ほど動線は便利ですが、近いほど湿気も移りやすい。ランドリールームとつながったファミリークローゼットでは、収納している衣類が湿気を吸って、ニオイがうつったりカビが出たりする悩みが実際に起きています。便利な直結動線は、湿気の通り道にもなるのです。

広さの盲点:目安は「2〜3人で2帖、4人以上で3帖」

家族分の洗濯物を干すには、思った以上のスペースが要ります。

目安としては、2〜3人家族で2帖、4人以上なら3帖ほどといわれています。4人家族の一日分をハンガーで掛けていくと、竿はあっという間に埋まっていきます。「洗面脱衣室の隅に竿を1本」では、まず干しきれません。

しかも、干しきれないからとぎゅうぎゅうに掛けると、洗濯物同士の間を風が通らず、さらに乾かなくなる。狭さは、干せる量の問題だけでなく、乾きの悪循環に直結するのです。

設備の盲点:換気扇・除湿機・サーキュレーターが「前提」になる

ランドリールームを本当に機能させようとすると、換気扇で湿気を排出し、除湿機で湿度を下げ、サーキュレーターで風を当てる、という設備の合わせ技がほぼ前提になります。

「部屋さえあれば自然に乾く」わけではなく、動かし続ける道具と手間がセットでついてくるのです。ここは、採用前に知っておいてほしい現実です。

3. 一級建築士の視点で見る、ランドリールームの誤解


ここでは、設計の現場で施主との間に生まれやすい「ズレ」を3つ整理します。いずれも、広さや間取りを決める前に押さえておきたいポイントです。

「日当たりの良い部屋なら乾く」とは限らない

「南向きの明るい部屋にすれば乾きますよね?」と聞かれることがあります。気持ちはよく分かります。ただ、室内干しの乾燥に効くのは、日射よりも「湿った空気をどう外へ出すか」「風をどう当てるか」なのです。日当たりだけでは、湿気は部屋にこもったままです。

そもそも、日当たりの良い南側は多くの家でリビングに充てられるため、ランドリールームは北側や日の入りにくい場所になりがちです。それで構いません。
極端にいえば、窓がなくても、空気の入口と出口さえ設計されていれば洗濯物は乾かせるのです。方角や窓の大きさより、湿気の逃げ道と気流の設計。ここに力を入れたほうが、確実に乾く部屋になります。

「ランドリールームを作れば家事ラク」ではない

洗濯物の量、洗濯の頻度、乾燥機を使うかどうか。

この3つで、必要なランドリールームの姿はまったく変わります。毎日2回洗濯する5人家族と、乾燥機メインで週末だけ干す共働き夫婦とでは、同じ「ランドリールーム」でも必要な広さも設備も別物なのです。

間取りの流行に合わせて作るのではなく、わが家の洗濯のやり方から逆算する。順番はこちらが先です。

乾燥機とランドリールームは、トレードオフの関係にある

ガス衣類乾燥機や乾燥機能付き洗濯機に投資すれば、干す物は大きく減らせます。

干す物が減れば、ランドリールームは小さくてよく、浮いた面積を収納やリビングに回せる。設備と面積は、天秤にかけられる関係なのです。ただし、「全部乾燥機に任せればランドリールーム不要」とまではいきません。乾燥機と相性の悪い衣類(縮みやすいもの、型崩れしやすいもの)は必ず残るからです。乾燥機を導入する場合でも、最小限の干すスペースは確保しておく。

この塩梅が、いちばん現実的な答えだと思います。

4. ランドリールームにこだわりすぎると起きやすい暮らしの不都合


ランドリールームそのものが悪いわけではありません。
ただ、採用を最優先にしすぎると、暮らし全体にしわ寄せが出ることがあります。

乾かない部屋は、物置になっていく

第2章の「乾かない」が続くと、何が起きるか。
結局、乾きの早い外干しや、エアコンのあるリビング干しに戻っていくのです。使われなくなった部屋には、いつの間にか段ボールや季節家電が置かれ始める。「あの2帖、収納にしておけばよかった」という声は、決して珍しくありません。

干すための面積が、暮らしを圧迫する

2〜3帖という面積は、間取りのなかで決して小さくありません。
ランドリールームを確保した分、リビングが狭くなった、収納が削られた、ということが起こります。使いこなせれば価値のある投資ですが、使われなければ、家の中でいちばん高い物置です。

湿気対策の扉が、動線を閉じる

ファミリークローゼットへの湿気移りを防ごうとすると、間に扉を設けて、干している間は閉めておく運用になりがちです。
すると、売りだったはずの「干す→しまう直結動線」が、日常的には閉じられた動線になる。便利さと湿気対策の板挟みは、住んでから気づきやすいジレンマです。

5. 後悔しないための設計のチェックポイント


ここまで挙げた課題は、設計段階の工夫でかなり抑えられます。最後に、採用を決める前に確認しておきたいポイントを整理します。

換気と気流を最優先に設計する

何よりも先に、湿気の逃げ道です。

空気の入口と出口を確保し、湿った空気が滞留しない流れをつくる。おすすめの工夫がひとつあります。24時間換気の排気口を、物干しスペースの真上に配置することです。高気密高断熱の家ならもともと付いている設備なので、位置を工夫するだけ。追加費用なしで、湿った空気を効率よく外へ出せます。

干す量から、必要な広さと竿の長さを逆算する

一日分の洗濯物を実際に思い浮かべて、竿何メートル分になるかを数えてみてください。

目安として、1人が1日に出す洗濯物は約1.5kg、4人家族なら約6kgといわれています。そのうえで、2〜3人で2帖、4人以上で3帖という広さの目安と照らし合わせる。
「なんとなく2帖」ではなく、わが家の洗濯量から逆算することが、干しきれない後悔を防ぎます。

乾燥機との役割分担を先に決める

「全部干す」のか「乾燥機と併用して一部だけ干す」のか。ここを先に決めると、必要な広さは大きく変わります。

乾燥機メインなら、ランドリールームはコンパクトにして、浮いた面積を他に回す。この判断は、間取りを描き始める前にしておきたいところです。

位置関係と「閉じられる工夫」をセットで考える

脱衣室・洗濯機・ファミリークローゼットとのつながりは、一直線に近いほど便利です。そのうえで、クローゼットとの間には引き戸などで閉じられる工夫を。
開ければ直結動線、干している間は閉じて湿気をブロック。引き戸ひとつ分の建具費用はかかりますが、動線と湿気対策を両立できる備えとして、十分に価値のある投資だと思います。

コンセントと多目的化を忘れない

除湿機とサーキュレーターを同時に使えるよう、二口コンセントを設けておくと安心です。
あわせて、アイロンがけや洗濯物を畳める作業カウンターがあると、部屋の稼働率がぐっと上がります。「干すだけの部屋」にしないことが、物置化を防ぐいちばんの予防策です。

まとめ:ランドリールームは『空気の流れ』で決まる


ランドリールームは、天気からも時間からも花粉からも洗濯を自由にしてくれる、確かに魅力的な空間です。

共働きのご家庭にとって、その価値は大きいと思います。私自身、ご家庭の暮らし方によっては積極的に提案する間取りです。

ただ、洗濯物を乾かすのは部屋ではなく、湿気の排出と空気の流れです。ここを設計しないまま部屋だけ作ると、乾かない、臭う、使われない、物置になる、という順番で理想が崩れていきます。
だから、広さや場所を決める前に、答え合わせをしてほしいのです。

わが家は一日にどれだけ干すのか。乾燥機は使うのか。湿った空気はどこから出ていくのか。この3つに答えられれば、ランドリールームはきっと、毎日働いてくれる部屋になります。それが、SNSの間取り図では見えてこない、本当の住み心地につながると思います。

この記事の執筆者

ライター名:yukiasobi保有資格:一級建築士

自治体の建築技術職として住宅政策・確認審査・都市計画などの実務経験を積み、現在は一級建築士としての知見を活かし、住宅・不動産分野を中心に記事執筆・監修を行っている。

注文住宅の間取り、住宅性能(断熱・耐震・省エネ)、リフォーム、住まいの維持管理などを主なテーマとし、専門性と分かりやすさの両立を重視。住まいの情報を、生活者目線で実践的に伝えることを心がけている。
また、建築・住宅系ライターとしての生き方や、FIREを目指す過程の記録も発信している。

note:https://note.com/sanayuki_

この記事の編集者

リビンマッチ編集部 メタ住宅展示場 編集部

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