ZEH(ゼッチ)住宅は本当に必要?追加コストに見合う暮らしの変化とは

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ZEH(ゼッチ)住宅は本当に必要?追加コストに見合う暮らしの変化とは

これから注文住宅を建てる人にとって「どの程度の省エネ性能を確保すべきか」は避けて通れないテーマとなっています。

その中でよく耳にするのが、ZEH(ゼッチ)住宅です。省エネ性能の高い住宅というイメージがある一方、「本当にそこまで必要なのか」「追加コストに見合う暮らしの変化はあるのか」と迷う人も少なくありません。

では、ZEHに対応した注文住宅では、暮らしや家計にどんな影響があるのでしょうか。制度の流れを踏まえながら、ZEH住宅が自分たちにとって必要な選択肢かどうかを整理していきます。

ZEH(ゼッチ)住宅とは何かをシンプルに整理

ZEH(ゼッチ)住宅とは、「高断熱」「省エネ」「創エネ」を組み合わせることで、年間の一次エネルギー消費量を実質ゼロ以下に近づけることを目指した住宅の考え方です。

「ゼロ」と聞くと、電気代がまったくかからない家を想像してしまいがちですが、実際には少し異なります。国が定める基準となる住宅と比べて、断熱性能や省エネ性能を高めて消費エネルギーを減らし、さらに太陽光発電などでエネルギーを創ることで、年間トータルの収支を概ねゼロに近づける、という考え方です。

ZEH住宅と一般的な注文住宅との違いは、外観やデザインではなく、性能のつくり込み方にあります。

そのため、見た目が特別な家になるわけではなく、ぱっと見ではZEHかどうか分からないケースも少なくありません。

高い断熱性能でエネルギーを無駄にしない

断熱や気密を強化することで、外の暑さや寒さの影響を受けにくくなり、冷暖房でつくった空気が逃げにくくなります。

結果として、エアコンの効きが安定し、設定温度を極端に上下させなくても快適な室内環境を保ちやすくなります。

断熱性能の低い住宅では、リビングは暖かいのに、廊下や洗面所、脱衣室が極端に寒いといった状態が起こりがちです。しかしZEH住宅では、家全体の断熱性能が高いため、部屋ごとの温度差が生じにくく、どこにいても快適に過ごすことができます。

断熱は後から大きく改善しにくい領域でもあります。

設備は将来的に交換できますが、壁や窓の性能を住んでから大幅に上げるのは簡単ではありません。そのため、ZEHを検討する際は、設備よりも先に断熱性能をどう確保するかを考えることが重要になります。

省エネ設備で使うエネルギーそのものを減らす

断熱でエネルギー消費量のロスを減らしたうえで、次に考えるのが省エネ設備です。

省エネというと、「我慢する暮らし」をイメージする方もいるかと思います。

しかし、ZEHの考え方は逆です。主に冷暖房、給湯、換気、照明といった日常的に使う設備の効率を上げることで、同じ快適さをより少ないエネルギーで実現することを目指します。

例えば、少ない電力でしっかり暖まるエアコンや、効率よくお湯をつくる給湯設備を採用することで、生活の質を落とさずに消費エネルギーを抑えることができます。

ここで重要なのは、設備のスペックだけを見るのではなく、住宅全体の性能と組み合わせて考えることです。断熱が弱い状態で高性能な設備を入れても、本来の力を発揮しにくくなります。ZEHでは、外皮性能と設備性能をセットで最適化することが前提になります。

太陽光発電でエネルギー消費量が実質ゼロ

断熱と省エネ設備によって消費エネルギーを減らしたうえで、最後に加わるのが太陽光発電などの創エネです。

ZEH住宅では、断熱性能と省エネ機器によってエネルギー消費量を減らし、さらに創エネで電力を賄うことで、年間トータルでの収支を概ねゼロ以下に近づけます。

太陽光発電というと、売電収入を前提に語られがちですが、ZEHでは自家消費の視点が重要です。昼間に発電した電気を自宅で使うことで、「買う電気」を減らし、電気料金の変動リスクを抑えやすくなります。

また、停電時の備えとして安心感につながる点も、暮らし側の価値といえるでしょう。

ただし、太陽光発電の効果は、屋根の形状や向き、周囲の建物による影、設置容量などによって左右されます。

すべての住宅で同じ効果が得られるわけではないため、計画段階で条件を確認し、自分たちの家に合った提案かどうかを見極めることが欠かせません。

ZEH(ゼッチ)住宅は本当に必要?

ZEH住宅を検討する際、多くの人が最初に気になるのが「価格」です。

ZEH住宅は、高い断熱性能に加え、高効率な冷暖房・給湯設備、さらに太陽光発電設備などを組み合わせてつくるため、一般的な注文住宅と比べて初期費用が高くなりやすい傾向があります。

ただし、ZEH住宅の判断には、建築費の総額だけを見るのではなく、視点を整理することが欠かせません。具体的には、以下の4つの軸で考えると、判断の納得感が高まります。

  1. 住んでからの快適性
  2. 光熱費など家計への影響
  3. 補助金や優遇制度といった公的支援
  4. 将来的な住宅の省エネ化

ZEHが本当に必要かどうかは、価格の高低だけで決めるのではなく、自分たちの暮らしに照らして整理することが重要です。

ZEH(ゼッチ)住宅は将来的に標準的な性能になる可能性が高い

国の政策では、2025年4月には新築住宅への省エネ基準適合が原則義務化され、さらに2030年までに省エネ基準をZEH水準へ段階的に引き上げる方針が示されています。

そのため、現在は上位仕様に見えるZEHも、中長期的には「当たり前の性能」になる可能性が高いといえます。

国がZEH水準を標準仕様として位置づけようとしている背景には、住宅分野においてそれだけ高い省エネ性能が求められているという事情があります。

この流れが進めば、2030年以降はZEH水準を下回る性能の住宅が新築として建てられなくなり、将来的に市場に残る住宅は、ZEH水準以上の性能を備えたものが中心になります。

それ未満の性能の住宅は、性能面で見劣りしやすくなり、資産価値や評価が下がりやすくなるという可能性もあります。

今後の住宅選びでは、「今の基準を満たしているか」だけでなく、将来の基準から見てどう評価されるかという視点を持つことが、後悔しない判断につながります。

補助金や優遇制度の活用で自己負担を減らせる

ZEH住宅では、国の支援制度としてZEH支援事業などの補助金が用意されています。

制度名 対象(新築) 補助額(主な水準)
戸建住宅ZEH化等支援事業 ZEH/ZEH+の新築戸建
(建築・購入)等
ZEH:55万円/戸+α、ZEH+:90万円/戸+α(蓄電池等の導入で加算があり得る)
子育てグリーン住宅支援事業 注文/分譲/賃貸の新築
(※区分により対象者条件あり)
ZEH水準住宅:40万円/戸
長期優良:80万円/戸
GX志向型:160万円/戸
東京ゼロエミ住宅普及促進事業 都内の新築
(戸建・集合住宅等)
住宅建設費:戸建
水準C 40万円/戸
水準B 160万円/戸
水準A 240万円/戸
太陽光:kWあたり助成(上限あり)
蓄電池:12万円/kWh
V2H:上限50万円(条件で上限100万円)など

ZEH住宅は補助金だけでなく、火災保険料や地震保険料が住宅性能等で優遇される場合があります。

また、新築住宅では一定期間、固定資産税の軽減措置が適用されるほか、長期優良住宅などの基準を満たす場合は、減税期間や軽減額が拡充されることもあります。

このように、ZEH住宅は補助金による初期費用の軽減に加え、保険料や税金といったランニングコスト・保有コストの面でもメリットがあるため、建築時の費用だけで判断するのではなく、住み始めてからの支出も含めて全体で考えることが大切になります。

ZEH(ゼッチ)住宅で、暮らしはどう変わるのか

ZEH住宅の特徴は、省エネ性能の高さが数字だけでなく、日々の暮らしの中で実感しやすい点にあります。

光熱費がいくら下がるかといった結果だけで判断するのではなく、住まいの快適性や暮らし方そのものがどう変わるのかという視点で捉えることが重要です。

住環境が安定することで、生活リズムや家族の過ごし方にも影響が及びます。

その積み重ねが、結果として家計の安定や将来の見通しにつながっていくのがZEH住宅の大きな特徴といえるでしょう。

以下では、ZEH住宅にすることで起こりやすい暮らしの変化を、いくつかの観点から整理していきます。

1年を通して快適な室内環境を実現

日本は四季がはっきりしており、夏は高温多湿、冬は冷え込みが厳しく、季節ごとの気候差が大きい国です。

そのため、年間を通して室内環境を一定に保つことは容易ではなく、季節ごとに冷暖房への依存が高まりやすくなります。その結果、快適さを保とうとするほど光熱費がかさみやすく、住まいの性能によっては暮らしの負担が大きくなるケースも少なくありません。

一方、ZEH住宅では、断熱性能が高まることで、夏の強い日差しによる室内の熱気や、冬の底冷えが入りにくくなります。室温が安定しやすくなり、冷暖房を強く効かせなくても快適に過ごせる時間が増えていきます。

また、家の中の温度差が小さくなることで、部屋を移動する際のストレスが減り、体への負担も軽減されます。脱衣所が寒くて着替えがつらい、といった日常の小さな不満が解消されやすくなる点も特徴です。

こうした季節変化による影響を受けにくい住環境づくりがZEH住宅の主な目的のひとつといえます。

光熱費の変動が少なく家計の見通しが立てやすい

高断熱と省エネ設備の組み合わせにより、冷暖房や給湯にかかるエネルギー負担が下がりやすくなります。その結果、月ごとの光熱費のブレが小さくなり、家計管理がしやすくなります。

太陽光発電を導入している場合は、電気を買う量が減るため、電気料金の値上げ局面でも影響を受けにくくなります。

ただし、光熱費の削減効果は家庭ごとに差が出るため、家族人数や在宅時間、エアコンの使い方などを前提に考えることが大切です。

ZEH(ゼッチ)住宅に対応した家づくりの進め方

ZEH住宅は、太陽光発電などの設備を後から追加する住宅ではなく、断熱性能(外皮)、省エネ設備、創エネをセットで最適化する設計が前提です。

そのため、どの順序で性能を高めるかによって、住み心地や省エネ効果に差が出ます。

家づくりを進める際は、まず断熱・気密性能をどう確保するのかを整理し、そのうえで設備や発電容量を検討することが重要です。断熱が不十分なまま設備だけを強化しても、ZEH本来の効果は得られにくくなります。

また、見積もりを比較する際は、「ZEH対応」という表記だけで判断せず、一次エネルギー消費量の計算結果が提示されているかを確認しましょう。

また、補助金を活用する場合は、年度ごとに定められた公募期間や交付決定のタイミングを踏まえ、設計段階から申請を見据えたスケジュール管理が必要になります。

ZEH(ゼッチ)住宅は複数社を比較して選ぶ

ZEH住宅を検討する際の比較軸は、以下の4点をそろえて確認することが大切です。

  1. 断熱性能(外皮)
  2. 設備の効率
  3. 太陽光発電の提案根拠
  4. 一次エネルギー消費量の計算結果

上記の項目が明確になってはじめて、ZEH住宅を比較しやすくなります。

また、同じ予算であっても、ハウスメーカーごとに考え方は異なります。断熱性能を重視する会社もあれば、設備効率や太陽光発電を重視する会社もあり、どこにコストを配分するかは提案によって大きく変わります。

そのため、ZEH住宅を建てる場合は、一社のプランだけで判断するのではなく、複数社の提案を並べて比較することが重要です。

複数のハウスメーカーを効率よく比較したい場合は、メタ住宅展示場の「家づくりプラン」を活用するのもひとつの方法です。

延床面積や間取り、地域、家族構成、暮らし方といった条件をそろえたうえで各社のプランを比較できるため、ZEH対応の違いや性能バランスを冷静に見極めやすくなります。

ZEH住宅で後悔しないためにも、まずは複数社の提案を並べて比べることが大切です。自分たちの条件でZEH対応プランを整理できる「家づくりプラン」を、ぜひ活用してみてください。

この記事の編集者

リビンマッチ編集部 メタ住宅展示場 編集部

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