重量鉄骨造は、柱や梁など建物の主要構造部(躯体)に板厚6mm以上の鋼材を用いる建築構造です。
施工の際は、工場で加工された鋼材を溶接やボルト締結で組み上げ、建物全体を支える骨組みを形成します。板厚の鋼材を採用しており、高い強度があるので大開口や大空間、ビルトインガレージといったプランを実現しやすくなります。
一方で、建物自体が重くなるので、基礎や地盤補強の費用がかさみやすく、断熱・気密、耐火・防錆といった対策や定期的なメンテナンスが欠かせません。後悔のない選択のため、見積もり内訳やメンテナンスの頻度・範囲を採用前に確認しておきましょう。
もくじ
重量鉄骨造とは?
板厚6mm以上の鋼材を使った重量鉄骨造は、耐久性と安全性を求められる高層ビルや大型の商業施設、工場などで広く採用されています。
鋼材は強くてしなやかで、地震や風に耐えつつ大空間をつくりやすいためです。重力鉄骨造は、骨組みの形状は「地面から垂直に立つ鋼材と鋼材(柱)」の間に「横につなぐ鋼材(梁)」を接合して四角い枠を作り、1階、2階、3階と上に積み重ねていきます。さらに隣の部屋にも同じような枠を作ることで、建物全体が箱のような形になります。
箱型の形状は、建物にかかる重さや地震・風などの力を全体で分散して受け止めることで、高い強度を実現しています。そのため、一般住宅においては、板厚6mm未満の鋼材を使用する「軽量鉄骨造」が採用されるケースが多くなっています。
しかし、一部のハウスメーカーでは、重量鉄骨造の一般住宅も対応可能です。
規格化・モジュール化により完成時期が読みやすい
重量鉄骨造では、工場で材料の切断、穴あけ、溶接まで完了した状態で現場に納品されます。
現場での材料加工がほとんどないため、他の工法と比べて現場での作業ミスや材料不足が起こりにくく、工事が予定通りに進みやすいという特徴があります。また、完成時期の予想がつきやすくなることで、購入者側は、工期に合わせて動きやすくなります。
例えば、お子様の転校手続きを新学期に合わせて余裕を持って進められ、現在お住まいの賃貸契約も適切なタイミングで解約できます。また、仮住まいであれば、期間を最小限に抑えることで、余計な家賃や引っ越し費用を節約できます。インターネット回線工事や家具家電の配送も事前に予約できるため、新居での生活をスムーズに開始できます。
そのため、重量鉄骨造の工期の安定性は、購入者にとって非常に重要なメリットといえるでしょう。
適切な管理で100年以上使うこともできる
重量鉄骨の家は、その耐久性の高さから100年以上もつとも言われています。
長期間住めることで、建て替え頻度が減るため老後の住居費負担を大幅に軽減できます。また、子どもや孫の代まで住むことができるので、家族の財産として次世代に引き継ぐことが可能です。ただし、鉄骨はサビることで強度や耐久性を失ってしまいます。
サビの原因となる水分には特に注意が必要になるため、雨漏り対策、結露対策など、適切な管理や対策を施すことが重要です。また、鉄骨部分は適切にメンテナンスすれば100年以上持つ可能性はありますが、外壁や屋根、内装、給湯器といった設備機器などは、定期的な点検や修理、交換が必要です。
例えば、外壁塗装は一般的に10~15年ごと、給湯器は10年ほどで交換時期を迎えることが多いです。屋根や外壁のひび割れや設備機器の故障は、雨漏り、漏水といった鉄骨のサビの原因になる可能性があるため注意が必要です。
重量鉄骨で実現しやすいプランニング
重量鉄骨造は、強靭な骨組みで建物全体をしっかり支えられるため、自由度の高い空間づくりが可能です。
そのため、以下のような多彩な空間プランニングも実現できます。
- 大空間・大開口を活かした開放的な住まい
- 多階層ガレージと立体的な空間活用
- 間取り自由度の高い可変性住宅
木造住宅では、広いリビングを作ろうとすると部屋の真ん中に支える柱を立てる必要があったり、太い梁(はり)を天井に見せる必要があったりと、間取りに制約が生まれやすくなります。
一方、重量鉄骨造はこのような制限が少ないため、ライフスタイルに合わせた柔軟な空間設計が可能です。
大空間・大開口を活かした開放的な住まい
重量鉄骨造の家は、柱と梁で建物を支える「ラーメン構造」を採用していることが多いです。
壁で家を支える壁式構造と違って、柱と梁が建物を支えるため、間仕切が少なくても頑丈な家が建てられます。また、重量鉄骨であるため柱の数が少なくて済むので、柱のない広々としたリビングや、大きな窓を設けた開放的なLDKのプランニングが可能となっています。
重量鉄骨造では、下記のような家族がのびのびと過ごせる、明るく快適な住まいが実現できます。
- 柱のない大空間リビング:家族が集まるリビングを広々と使いたい、来客が多いという家庭に最適です。
- 大きな吹き抜け:天井を高くすることで、実際の広さ以上の開放感を演出できます。
- LDKの一体空間:キッチン、ダイニング、リビングを一体化することで、家族のコミュニケーションが取りやすい間取りを可能とします。
多階層ガレージと立体的な空間の活用
重量鉄骨造は、5〜6mくらいの幅であれば柱なしでも強度を確保できるので、車1〜2台分のビルトインガレージを作りやすいのが特長です。
また、耐力壁に頼らずに水平力へ抵抗できるため、ガレージの後ろに玄関・土間収納・内階段を連ねても動線が崩れません。ビルトインガレージは、大きな開口が必要になるので、上に太い梁を一本通し、2階や3階の重さを左右の柱へうまく分散させます。
このしくみにより、1階は広い間口のまま、上の階にLDKや個室を載せたり、さらに屋上テラスをつくることも可能です。また、吹き抜けやスキップフロアといった立体的なプランにも柔軟に対応できます。
間取り自由度の高い可変性住宅
重量鉄骨造は、太い鉄の柱と梁で骨組みをつくるため、室内の多くの壁は「家を支えるための壁」ではありません。
そのぶん壁の位置を変えたり、取り払って広いワンルームにしたりと、間取りを柔軟に計画できます。例えば、子ども部屋を1室→2室に区切る/2室→1室に戻す、リビングの一角を引き戸で仕切って在宅ワーク用スペースにする、収納を拡張するといった更新が比較的スムーズに行えます。
よくある可変例
- 引き戸や可動間仕切りで「開く/閉じる」を切り替え、来客時だけ個室化
- 広いLDKづくり:柱本数を抑えやすいので、家具配置を変えても動線が乱れにくい
- 計画のコツ:将来を見越して、配線・換気の通り道(スリーブ)やコンセント位置に余裕を持たせておく
ただし、柱・梁・ブレースなどの骨組み、階段や配管・ダクトの「縦の通り道」は基本的に動かせません。
また、キッチン・浴室・トイレなど水まわりを大きく移動する場合は、排水勾配や防水、換気の条件確認が必要です。
重量鉄骨の注文住宅を建てる際の注意点
重量鉄骨造は、多くのメリットがあり、魅力的な構造であるといえますが、メリットがある分、以下のようなデメリットとなる部分も存在します。
- 気をつけておきたい「柱の出っ張り」
- 建築コストと地盤改良工事費用が高額になりやすい
- 鉄骨の錆発生と定期メンテナンスの必要性
上記の点について詳しく紹介していきます。
気をつけておきたい「柱の出っ張り」
重量鉄骨造では、木造などと比べて柱の部材が太くなる傾向があるため、室内に柱部分が出っ張ることがあります。大開口や大空間を可能にする強度の高さから、骨組み部分は大きくなってしまいます。
これが家具の配置や内装デザインに影響することもあるので、プランニングの段階で、どうやってうまくデザインに取り込むかを建築会社と相談しておくことが大切です。
例えば、柱型をうまく活かして本棚や収納スペースを造作したり、照明計画の一部として組み込んだりする工夫が求められます。
このような一見デメリットに見える部分についても、うまく活用することで、印象的でオリジナリティのある空間づくりも可能です。
建築コストと地盤工事費用が高額になりやすい
重量鉄骨造は、木造や軽量鉄骨造に比べて建築コストが高くなる傾向にあります。使用する鋼材が高価であり、それを加工・組み立てるための技術も高度なためです。
また、建物自体の重量が重いため、地盤が弱い土地では、建物を支えるための地盤改良工事が必要となり、その費用も高額です。土地探しの段階から、地盤の状態を専門家に見てもらうなど、事前の調査が非常に重要になります。
鉄骨の錆発生と定期メンテナンスの必要性
重量鉄骨造の重要な鉄は水に触れると錆びてしまいます。鉄は錆によって、強度や耐久性の低下を招いてしまいます。
この錆が発生する原因として考えられるのが、屋根や外壁の雨漏り、結露などが考えられます。そのため家の構造体である鉄骨を守るために、屋根外壁のひび割れや塗装の剥がれがないかなど定期的にチェックし、必要に応じてメンテナンスを行うことが大切となってきます。
重量鉄骨造に対応した工務店・ハウスメーカーの一覧
重量鉄骨造にはメリットとデメリットがあり、その特性を理解した計画と施工が欠かせません。
性能を引き出すには、重量鉄骨の知識と実績が豊富な工務店・ハウスメーカーに依頼するのが確実です。経験のあるパートナーなら、構造計画や耐火・防錆などの要件も踏まえ、理想の住まいに近づけられます。
ここからは代表的な事例として、「積水ハウス」「へーベルハウス」「パナソニック ホームズ」を紹介します。
積水ハウス:フレキシブルβシステム
積水ハウスのフレキシブルβシステムは、3~4階建て住宅向けの重量鉄骨構法です。「通し柱」を不要にする「梁勝ちラーメン構造」によって最大9mの広さまで柱なしで建てられます。通し柱が無いことで各階で柱配置を変えられるため、250mm刻みの細かい寸法でのプランニングにも対応します。
また、大きな窓や吹き抜け、屋上庭園など、お客様の様々な要望を形にできる自由度の高さが魅力となっています。独自の外壁材「ダインコンクリート」は、その高い耐久性と意匠性の高さで知られており、重量鉄骨造の強靭な構造体と組み合わせることで、長期にわたって美観を保つ住まいを提供しています。
ただし、積水ハウスのフレキシブルβシステムは、最上位クラスの構造であり、軽量鉄骨よりも坪単価が大幅に上昇します。そのため、予算面で大きなハードルになります。
旭化成ホームズのへーベルハウス
旭化成ホームズのへーベルハウスは、独自の重量鉄骨造と、外壁に独自素材のALCコンクリート「ヘーベル」を使用しているハウスメーカーです。へーベルハウスの重量鉄骨造は主に2種類あります。
重鉄・システムラーメン構造
高層ビルに用いられるラーメン構造をベースに、太く肉厚な重量鉄骨の柱と梁を強固に接合した構造です。これにより、柱や壁に頼らず建物を支えるため、大空間や大開口の大きな窓を設けることが可能となっています。
重鉄制震・デュアルテックラーメン構造
重鉄・システムラーメン構造に独自の制震技術を組み込んだ構造です。
地震エネルギーを吸収する特殊な鋼材やオイルダンパー制震装置を搭載し、地震の揺れを効果的に低減し、建物の損傷を抑える効果を与えます。重量鉄骨造のメリットを生かしつつ、地震対策の制震システムを追加できるへーベルハウスは、魅力的なハウスメーカーのひとつといえます。
パナソニック ホームズ
パナソニック ホームズは、パナソニックグループの最新のIoT技術や住宅設備から快適な住環境を提供するハウスメーカーです。
パナソニックホームズの重量鉄骨造は「NS工法」と呼ばれ、高層ビルにも採用される構法を住宅向けに進化させたものを採用しています。さらに大地震の揺れを大幅に減らす制震システムが全邸に標準装備されているので、高い安心感があります。
これらの技術を生かして、都市部や多層階住宅において人気がある住宅となっています。
家づくりプランで重量鉄骨造に対応したハウスメーカーの提案を一括で比較
コスト面などのデメリット以上にたくさんのメリットがあるのが重量鉄骨造です。
そんな重量鉄骨造を自分たちの予算や理想に合ったものにするためには、実績豊富で相性のいいハウスメーカーを見つけることが一番重要です。しかしモデルハウスに何度も足を運んで相談するのは時間も労力もかかって大変です。
そんなときは、メタ住宅展示場の家づくりプラン比較サービスが非常に便利です。メタ住宅展示場は、メタバース(仮想空間)の技術を活用したオンライン展示場です。
VRの技術によって実際の展示場に行かなくても、スマートフォンなどで、いつでもどこでも展示場の見学が可能です。さらにこのサービスを使うことで、希望の条件を入力するだけで、重量鉄骨造を得意とする複数のハウスメーカーや工務店から、まとめてプランや見積もりを受け取れます。
家づくりは、一生に一度の人生において大きなイベントです。後悔のない選択をするためにも、まずはたくさんの選択肢を知ることが大切です。
ぜひ、メタ住宅展示場のサービスを利用して、家づくりの第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
この記事の編集者
メタ住宅展示場 編集部
メタ住宅展示場はスマホやPCからモデルハウスの内覧ができるオンライン住宅展示場です。 注文住宅の建築を検討中の方は、時間や場所の制限なくハウスメーカー・工務店を比較可能。あなたにヒッタリの家づくりプランの作成をお手伝いします。 注文住宅を建てる際のノウハウなどもわかりやすく解説。 注文住宅でわからないこと、不安なことがあれば、ぜひメタ住宅展示場をご活用ください。
運営会社:リビン・テクノロジーズ株式会社(東京証券取引所グロース市場)