住宅展示場を見て回っていると、ハウスメーカーの営業担当者から「うちはラーメン構造を採用しています」「壁式構造で高い耐震性を実現しています」といった説明を受けることがあります。
しかし、それぞれの構造について理解ができても、比較したときにどちらがライフスタイルに適しているのか、判断に迷うことがあるかもしれません。
そこで、本記事では、ラーメン構造と壁式構造の違いを詳しく解説し、どのような方にどちらの構造が適しているかを解説します。
もくじ
「ラーメン構造」と「壁式構造」は何が違う?
ラーメン構造と壁式構造では、主に以下の点が異なります。
- 家を支える仕組み
- 耐震性
- 設計の自由度(間取り・開口部)
- 建築コスト
- 施工期間
- 室内の凹凸
上記の観点が、暮らし心地や将来的な増改築にも影響します。まずは構造原理の違いを押さえましょう。
家を支える仕組み
ラーメン構造と壁式構造の仕組みを比較すると、以下のような特徴があります。
構造 | ラーメン構造 | 壁式構造 |
---|---|---|
特徴 | 欧米の鉄骨技術に基づいたフレーム構造 | 耐力壁で全体を包む安定型の構造 |
支え方 | 柱と梁で構成された枠組み | 壁と床で構成された箱型構造 |
設計の自由度 | 壁の配置に制限が少なく自由度が高い | 壁の位置に制約がある |
ラーメン構造は、柱と梁を剛接合して一体のフレーム(骨組)を形成し、これ自体の曲げ抵抗で地震力などの水平力に耐える方式です。戦後の日本で欧米の鉄骨技術を導入し、特に都市部の高層住宅やデザイン性の高い住宅に多く使用されています。
鉄骨(S)や鉄筋コンクリート(RC)だけでなく、木質ラーメン(例:住友林業のBF〈木質梁勝ちラーメン〉)も実用化されています。
一方、壁式構造は、床・壁・天井などの面を一体化した「箱」で力を受ける方式で、RCの壁式RCのほか、枠組壁工法(2×4/2×6)や木質パネル接着工法のように「壁を主耐力要素」とする工法が該当します(例:三井ホーム「プレミアム・モノコック」、ミサワホーム「木質パネル接着工法」)。
耐震性
ラーメン構造と壁式構造では、耐震性において以下のような違いがあります。
構造 | ラーメン構造 | 壁式構造 |
---|---|---|
基本的な耐震性 | 接合部に力が集中するため補強が必要 | 壁全体で揺れを分散しやすく耐震性が高い |
耐震性の工夫 | 制震ダンパーや免震装置により性能向上 | 壁・床の接合強化や高性能パネルを採用 |
耐震性については、どちらが絶対に強いという単純な比較はできません。
ラーメン構造は、骨組み(柱・梁)の接合部が地震時の挙動を左右するため、剛性と粘り(靭性:壊れにくく粘る性質)を確保する設計が重要です。さらに、制震ダンパーで揺れのエネルギーを吸収したり、免震で建物に伝わる揺れ自体を小さくすることで、大地震でも性能を維持しやすくなります。
ただし、ラーメン構造は柱と梁の剛接合によって建物の強度を確保していますが、接合部に大きな力が集中しやすい構造的な特性があるため、耐震性能を高めるには入念な構造計算と補強設計が必要です。
一方、壁式構造では、壁・床・天井を一体化した面で荷重や地震力を受けるため、層間変形が小さくなりやすい=剛性が高いのが特徴です。設計では、壁量・壁厚・配筋、開口の大きさや位置、壁の配置バランスなどのルールが日本建築学会の壁式RC規準で定められており、これに沿って計画することで安定した耐震性能を確保できます。
そのため、耐震性については、構造の違いというよりは、設計の良否と仕様選択が性能を左右します。
設計の自由度(間取り・開口部)
ラーメン構造と壁式構造を比べた場合、設計の自由度という点で以下の違いがあります。
構造 | ラーメン構造 | 壁式構造 |
---|---|---|
間取り変更 | 自由に変更しやすい | 耐力壁があるため大きな変更は難しい |
吹き抜け・大開口 | 比較的実現しやすい | 設計上制限が多く難しい |
リノベーション | 自由に変更しやすい | 耐力壁があるため大きな変更は難しい |
設計自由度では、ラーメン構造が優れています。
柱と梁の剛接合フレームが地震力を負担するため、耐力壁の位置に縛られにくく、壁や柱の配置・開口計画を柔軟に組めるからです。
例えば、大開口・連続窓・コーナーサッシ、吹き抜けや大スパンのLDKなどの一体空間、将来の間仕切り変更や可変プランといった要望を実現しやすく、眺望・採光・動線の最適化が図れます。
また、逆梁・アウトフレーム等の手法を併用すれば室内側の梁型を抑え、家具配置の自由度も高められます。
一方で、壁式構造は、耐力壁の位置や長さ、開口(窓や出入口)の大きさ・位置が構造性能に直結するため、大開口や吹き抜けの取り方、将来の壁移動には一定の制約が生まれます。壁式を選ぶ場合は、初期段階でゾーニング(部屋の配置)・採光・動線・収納量を十分に詰めておくと相性がよく、完成後に大規模な間取り変更を想定しない計画に向いています。
建築コスト
ラーメン構造と壁式構造では、建築コストが以下のように違います。
構造 | ラーメン構造 | 壁式構造 |
---|---|---|
建築コスト | 材料費・施工費が高くなりやすい | 工場生産の部材を使いコストを抑えやすい |
構造計算 | 複雑で人件費も高くなりやすい | 単純な構造で計算が比較的容易 |
費用対効果 | 設計自由度やデザイン性とのバランスで判断が必要 | 安定した品質とコストパフォーマンスが魅力 |
壁式構造は工場生産のパネルなどを活用できるため施工効率が高く、コストを抑えやすいというメリットがあります。
一方、ラーメン構造は設計の自由度が高い分、材料費・施工費が増えやすく、壁式構造に比べるとコストが高くなりがちです。
ただし、自由な設計が可能でデザイン性を高められるというメリットもあるため、「どこにでもあるようなデザインは嫌」「自分のこだわりを反映したい」という場合は、費用対効果を総合的に判断することが重要です。
なお、現場打ちRCや意匠条件次第では差が縮まる/逆転する場合もあるため、個別見積で比較が必須です。
施工期間
ラーメン構造と壁式構造は、それぞれ以下のように施工期間が異なります。
構造 | ラーメン構造 | 壁式構造 |
---|---|---|
工期 | 柱や梁の接合に時間がかかり長くなりがち | プレキャストなどで短期間施工が可能 |
現場作業 | 現場での調整が多く複雑 | 工程が均一で管理しやすい |
引越しへの影響 | 工期が延びる可能性がある | 工期が読みやすく計画しやすい |
壁式構造はシンプルな型枠工事と配筋で施工できるため、施工期間は壁式構造の方が一般的に短くなります。
一方で、ラーメン構造は梁・柱の複雑な接合や補強が必要で、設計自由度が高い分、現場での調整や手作業が多くなりやすいため、工期が長くなる傾向があります。
工期が長引くと引越し時期や資金計画にも大きく影響するため、工期の延長によって施工費用が増えることが心配な方や、引っ越し時期が延びると困る方は壁式構造を選んだほうが安心です。
室内の凹凸
ラーメン構造と壁式構造を、室内の凹凸という点から比較すると以下の違いがあります。
構造 | ラーメン構造 | 壁式構造 |
---|---|---|
柱・梁の出っ張り | 室内に出っ張りがあり部屋が狭く感じられる場合がある | 柱や梁が壁内に収まり室内がすっきり |
家具配置 | 出っ張りにより制限が出ることがある | 出っ張りが少なく家具配置がしやすい |
ラーメン構造は柱や梁が室内に出っ張ることが多く、視覚的にも物理的にも部屋を狭く感じさせる場合があり、家具配置にも制限がかかり居住性に影響します。
ただし、最近では、逆梁アウトフレーム工法が普及し、室内に梁を出さずにすっきりとした空間を確保する方法も増えています。これにより、ラーメン構造でも室内空間を広く見せる工夫が可能になってきました。
一方、壁式構造は構造体が壁内に収まるため、柱や梁の出っ張りが少なく、室内を広く使えインテリアの自由度も高いのがメリットです。
ラーメン構造?壁式構造?構造選びの判断基準
家づくりでは構造選択が重要で、どの構造が自分に合うかは、生活スタイルや家族構成、将来設計によって異なります。
ここではラーメン構造にするか、壁式構造にするかの判断基準をご紹介します。
ラーメン構造がおすすめな人の特徴
ラーメン構造は、主に以下のような方におすすめです。
- 将来的に間取り変更を考えている方
- 大きな窓や吹き抜けが欲しい方
- デザイン性の高い建物を建てたい人
壁で強度を確保する壁式構造と違い、ラーメン構造は柱と梁で構造を支えるため壁の位置に縛られず柔軟に間取り変更できるので、将来的に子供の成長やライフスタイルの変化に応じて間取りを変更しやすいのが特徴です。
大きな窓や吹き抜けなどの大空間も実現しやすいため、広々とした開放的な空間を求める方にも向いています。
また、壁の制約が少なく自由な設計が可能なため、個性的なデザインを重視したい方にもピッタリです。
壁式構造がおすすめな人の特徴
壁式構造は、主に以下のような方におすすめです。
- 耐震性を重視する方
- 建築コストを抑えたい方
- 間取り変更の予定がない方
壁式構造は箱型の構造で耐震性能が高いため地震に対する安心感を重視したい方や、施工効率が良く工期が短いため建築コストを抑えたい方に向いています。
また、壁式構造はラーメン構造と比較して間取り変更が難しいというデメリットがありますが、将来的に間取り変更の予定がない方であれば、このデメリットによる影響を受けにくくいため、壁式構造との相性が良いはずです。
ラーメン構造と壁式構造のハウスメーカー選び
「ラーメン構造」と「壁式構造」は、それぞれ特徴が異なるため、これらの構造を得意とするハウスメーカーや工務店の選び方が重要です。どちらの構造を採用しているかによって、間取りの自由度やコスト、耐震性の高さなどに違いが出るため、事前の理解が欠かせません。
ここからは、ラーメン構造と壁式構造の特徴を踏まえ、それぞれを得意とする代表的なハウスメーカー・工務店を紹介します。
ラーメン構造を得意とするハウスメーカー・工務店
以下のハウスメーカー・工務店は、ラーメン構造を活かした住宅の実績が豊富で、それぞれ独自の技術を持っています。
ハウスメーカー | 構法・構造 | 構造の特徴 |
---|---|---|
住友林業 | ビッグフレーム構法 | 木質梁勝ちラーメン構造で木の温かみを感じることができ、通し柱が不要&各階で自由に柱を配置できるため、間取りの自由度が高いのが特徴。 |
セキスイハイム | ボックスラーメン構造 | 単体で建築基準法の新耐震設計基準(二次)を上回る強靭な構造体が特徴で、代開口も吹き抜けもプランも可能。 |
積水ハウス | 重量鉄骨ラーメン構造 | 鉄骨造の強さを活かした高い耐震性、断熱性、耐久性能を備えているのが特徴。 |
ヘーベルハウス |
|
柱と梁の堅牢なつくりで大地震にも耐えられる高い耐震性に加え、解放感ある大開口やゆとりある室内空間が可能。 |
トヨタホーム | パワースケルトン | 業界トップクラスの125ミリ角の太い柱、接合部には変形防止プレートの採用により耐震性が高い。 |
これらのメーカーは長年にわたりラーメン構造の技術開発を進めており、大開口や大空間の設計に定評があります。
ただし、取り扱っているすべての住宅にラーメン構造が使用されているわけではなく、希望する住宅の種類によっては別の構造が使用されている可能性もあるため、どうしてもラーメン構造が良い場合は、事前にラーメン構造の住宅を探していることを担当者に相談しておくと、ラーメン構造の住宅をピックアップして紹介してくれるので安心です。
壁式構造を採用しているハウスメーカー・工務店
以下のハウスメーカー・工務店は、壁式構造の実績が豊富です。
ハウスメーカー | 構法・構造 | 構造の特徴 |
---|---|---|
三井ホーム | プレミアム・モノコック構法 | 2×4工法をさらに進化させた三井ホーム独自の構法で、床・壁・天井の6つの面で建物を支えることで、高い強度と耐震性能を実現。 |
大成建設ハウジング | パルコン | 大型のコンクリートパネルで床・壁・屋根を一体化した強靱な壁式構造で、揺れや変形(ゆがみ)を最小限に抑えられる耐震性が特長。 |
百年住宅 | WPC工法 | 工場生産による高品質なパネルを使用した壁式鉄筋コンクリート住宅で、高い耐震性・耐火性・耐久性が特徴。 |
ミサワホーム | 木質パネル接着工法 | 1枚ずつ正確に生産された5種類のパネルが使用されており、動的水平加振実験でも高い強度と変形のしにくさを実証。 |
一条工務店 | ツインモノコック構法 | 各階を六面体の箱型パネルで構成し、力を「面」で受けて地震の力を分散するため、全棟耐震等級「最高等級3」を取得するなど高い耐震性が強み。 |
上記のハウスメーカー・工務店の壁式構造は耐震性や施工効率が高く、コストパフォーマンスに優れているのが魅力です。
ただし、壁式構造は将来的にリノベーションが必要になったときに、ラーメン構造よりも柔軟な対応が難しいため、壁式構造を選ぶなら家を建てる際に将来的に大規模なリノベーションや間取り変更を行わないで済むような設計にしておきましょう。
構造選びで迷ったら「家づくりプラン」で専門家に相談
構造選びは家づくりの根幹に関わる重要な判断ですが、専門知識がない一般の方には、どちらの構造が自分に合っているか見極めることは難しいものです。
そんな時は、複数のハウスメーカーや工務店に一括資料請求&相談できる「家づくりプラン」を活用するのがおすすめです。
「家づくりプラン」は、家づくりに関する専門知識を持つスタッフが構造の特徴を踏まえた上で相談に乗ってくれます。
複数のメーカーを一気に比較できるため、自宅にいながら費用の相場も把握しやすく、構造選びの不安を解消できるのが魅力です。
実際の施工事例も紹介してくれるので、耐震性能やコスト面、設計の自由度など、自分に合った構造の家づくりをイメージしやすくなります。
また、家を建てる際の補助金や税制優遇などの最新情報も教えてもらえるため、初めての家づくりで不安がある方は、ぜひ活用してみてください。
この記事の編集者
メタ住宅展示場 編集部
メタ住宅展示場はスマホやPCからモデルハウスの内覧ができるオンライン住宅展示場です。 注文住宅の建築を検討中の方は、時間や場所の制限なくハウスメーカー・工務店を比較可能。あなたにヒッタリの家づくりプランの作成をお手伝いします。 注文住宅を建てる際のノウハウなどもわかりやすく解説。 注文住宅でわからないこと、不安なことがあれば、ぜひメタ住宅展示場をご活用ください。
運営会社:リビン・テクノロジーズ株式会社(東京証券取引所グロース市場)