注文住宅では、建物本体や土地の費用以外にも、契約時・着工前・引き渡し前後に発生する細かな諸費用がかかります。
そのため、想定していたよりも出費が多くなり、支払いのタイミングで慌てたり、自己資金が足りずに計画を見直すケースも見られます。
注文住宅の諸費用は「いくらかかるか」だけでなく、「いつ・どこで発生するか」を理解しておくことが重要です。
支出の流れを事前に把握しておくことで、資金計画のズレや予算オーバーを防ぎ、安心して家づくりを進めやすくなります。
もくじ
注文住宅で後悔しないために最初に知るべき「諸費用」の重要性
注文住宅を購入する際には、「建物本体の価格」と「土地代」だけを見て計画しがちですが、実際にはそれ以外にも多くの諸費用が必要になります。
例えば、地盤調査・付帯工事・登記費用・ローン関連費用・火災保険・引越し費用など、家づくりの工程ごとに細かな支払いが発生し、総額は土地代と建物代を合わせた費用の約10〜20%が目安ともいわれています。
諸費用はハウスメーカーによって、見積り金額が異なるケースや自己資金で支払うため見積り含まれないなどのケースもあります。
そのため「思ったより総額が大きく膨らんだ」「支払いのタイミングが分からず資金繰りに困った」といった失敗事例も少なくありません。
そこで、ここでは「ハウスメーカーごとに諸費用の内訳や扱いが異なる点」、そして「一部の諸費用は住宅ローンの融資対象外になる可能性があること」について紹介します。
本体価格だけで計画すると予算がずれやすい
注文住宅の計画で最も多い失敗が「予算が想定より大きく膨らんでしまう」というケースです。
その大きな理由は、本体価格だけを基準に資金計画を立ててしまい、付帯工事や諸費用を十分に見込んでいないことにあります。
本体価格はあくまで建物だけの費用であり、実際には生活できる状態に仕上げるための工事や各種申請、保証、保険、ローン関連費など、多くの費用が別途発生します。
特に注意したいのは、諸費用は契約後に判明するものも多く、当初の見積もりに含まれていない項目が後から追加されることがある点です。
例えば、屋外給排水工事・電気引込工事・地盤改良工事は、土地の状況次第で費用が大きく変動し、50〜150万円以上増えることも珍しくありません。こうした工事費用は契約前に確定できないケースも多く、予算がずれやすい要因になります。
さらに、火災保険料や登記費用、住宅ローンの事務手数料などの諸費用は必ず発生するにもかかわらず、本体価格の見積もりには含まれないのが一般的です。
結果として、本体価格だけで計画すると、後から諸費用が積み上がり、総額が大きく膨らむという状況につながります。
こうした予算トラブルを避けるためには、最初から「本体価格以外の費用」も含めた総額で資金計画を立てることが極めて重要です。総額から逆算する考え方に変えるだけで、予算オーバーのリスクは大幅に減らせるでしょう。
ハウスメーカーによって諸費用が変わる理由とは?
注文住宅の諸費用は、同じ延床面積や同じようなプランでも、ハウスメーカーによって大きく差が出ます。その理由のひとつが、会社ごとに「どこまでを本体工事に含めるか」の基準が異なるためです。
一般的には諸費用として扱われる地盤調査費や地盤改良費などを、本体工事の一部として組み込んでいるメーカーもあります。
例えば、ある会社では地盤改良費が別途30〜100万円程度かかるのに対し、別の会社では本体価格に込みとしているため、表面上の本体価格が高めに見えても、総額では安くなるケースもあります。
また、確認申請費や長期保証費用、仮設工事の一部を「本体価格」に含める会社もあれば、「諸費用」や「付帯工事」として別枠で計上する会社もあります。
さらに、外構工事の一部を含めるメーカーもあれば、完全に別工事扱いにするメーカーもあり、見積書の構成は実にバラバラです。結果として、同じ本体価格1,800万円という表示でも、実際に支払う総額が200万円以上変わる場合もあります。
このように、諸費用の扱い方は会社ごとに大きく違うため、数字だけで比較すると誤解が生まれやすいのが注文住宅の難しいところです。
複数社の見積もりを比べる際には、「どの費用が本体に含まれ、どれが別途なのか」を細かく整理したうえで、必ず総額で比較することが重要になります。
諸費用は融資対象外となる費用もある
注文住宅の諸費用の中には、住宅ローンでまかなえない「融資対象外」の費用が含まれることがあります。これを知らずに計画を進めると、引き渡し直前に「現金が足りない」という状況に陥ることも珍しくありません。
以下は、融資対象外となりやすい費用の例です。
- 地鎮祭
- 上棟式の費用
- 引越し費用
- 仮住まい費用
- 融資手数料
これらは住宅ローンに含められないため、手元資金として準備しておく必要があるのです。
また、金融機関によっては、さらに登記費用や火災保険料をローンに組み込めない場合もあります。特に「つなぎ融資」を利用する場合は、手数料や利息の支払いが発生しますが、これらも自己資金が必要になるケースがあるため注意しましょう。
重要なのは、「ローンで払える費用と払えない費用」を早い段階で整理し、自己資金の必要額を把握することです。見積もり比較のときに、諸費用の融資対象可否までチェックしておけば、予想外の出費を避け、より安心して家づくりを進めることができます。
注文住宅の諸費用が発生するタイミングと金額の目安
注文住宅の諸費用は、契約時から完成後まで段階的に発生します。タイミングを把握しておくことで、支払い時期の混乱や資金不足を避けやすくなります。
ここでは支払いが発生するタイミングごとの諸費用について紹介します。
| 発生タイミング | 項目 | 相場目安 | 詳細 |
|---|---|---|---|
| ① 契約時 | 印紙税(建物の請負契約書) | 千〜3万円 | 契約金額によって変動 |
| 印紙税(土地売買契約書) | 5千〜3万円 | 契約金額によって変動 | |
| プラン作成費・設計申込金 | 数万円 | ハウスメーカーによって発生 | |
| 手付金 | 売買価格の5〜10% | 初期支出として重要 | |
| 仲介手数料の一部(土地購入時) | 数万円〜数十万円 | 土地購入時に発生する場合あり | |
| ② 着工前 | 地盤調査費 | 5万〜10万円 | 工事を始める前に必須 |
| 地盤改良費 | 数十万〜100万円 | 地盤調査の結果によって発生 | |
| 建築確認申請費 | 5万〜15万円 | 建築許可取得に必要 | |
| 設計費・設計監理費 | 数万〜数十万円 | 建築士に依頼する場合に必要 | |
| 住宅ローン事務手数料・保証料 | 数万円〜数十万円 | 金融機関に支払う費用 | |
| 地鎮祭費用(任意) | 3万〜10万円 | 行う場合のみ必要 | |
| ③ 上棟〜工事中 | 中間金 | 工事費の30〜40% | 契約に基づき上棟時に支払い |
| 追加工事費 | 数万〜数十万円 | コンセント追加、照明変更、収納造作など | |
| ④ 引き渡し前 | 登記費用(所有権保存・抵当権設定) | 数万〜10万円以上 | 司法書士に依頼する場合あり |
| 司法書士手数料 | 数万円 | 登記手続きの代行費用 | |
| 住宅ローン保証料 | 数十万円 | ローン契約に伴う費用 | |
| 火災保険料 | 1万〜5万円 | 引き渡しまでに契約、最長5年分可能 | |
| 水道加入金 | 1万〜20万円 | 自治体によって必要 | |
| 最終金の支払い | 工事費の残額 | 契約に基づき支払い | |
| 完了検査費 | 数千円〜数万円 | 必要に応じて発生 | |
| ⑤ 完成以降 | 引っ越し費用 | 3万〜20万円 | 荷物量や距離による |
| 家具・家電購入費 | 数十万円 | 新居に合わせた購入費 | |
| 外構工事費 | 約100万円前後 | 駐車場・庭・フェンス整備など | |
| 不動産取得税 | 数万〜数十万円 | 新築取得時に一度発生 | |
| 固定資産税 | 数万円〜数十万円/年 | 初年度以降、毎年課税 | |
| 光回線・ガス・水道などのインフラ契約費用 | 数千〜数万円 | 生活開始に必要な契約費用 |
① 契約時に発生する諸費用
- 印紙税(建物の請負契約書)
- 印紙税(土地売買契約書)
- プラン作成費や設計申込金(メーカーによる)
- 手付金(諸費用ではないが初期支出として重要)
- 土地購入時の仲介手数料の一部(発生する場合)
契約時には、工事請負契約に伴う契約金(手付金)や契約書の印紙税など、複数の費用が発生します。建物の請負契約書には1千〜3万円程度、土地売買契約書には5千〜3万円程度が一般的ですが、契約金額によって変動するので注意しましょう。
土地から探す場合は、土地の手付金(売買価格の5〜10%程度)も必要となるため、このタイミングでまとまった現金を用意する必要があります。さらに、ハウスメーカーによってはプラン作成費や設計申込金が契約時に発生することもあり、数万円単位の費用が加わる場合があります。
契約時は支払いが複数重なるため、事前に必要額を把握しておくことで、資金計画のズレや不足を防ぎ、安心して家づくりを進めることができるでしょう。
② 着工前に発生する諸費用
- 地盤調査費
- 地盤改良費(必要時)
- 建築確認申請費
- 設計費または設計監理費
- 住宅ローン事務手数料、保証料
- 地鎮祭費用(任意)
着工前は、地盤調査費や建築確認申請費など、工事を始めるために必須となる手続き費用がまとまって発生する時期です。
地盤調査の結果によっては地盤改良工事が必要になり、数十万〜百万円規模の追加費用が発生することもあります。
また、住宅ローンを利用する場合は、審査や契約に伴う事務手数料や保証料など、金融機関への支払いもこの時期に集中しやすくなります。さらに、建築士に依頼している設計費や設計監理費、地域によっては地鎮祭費用なども必要になることがあります。
本体工事とは別で動く費用が多く、思った以上に現金が必要になるタイミングです。事前に必要額を把握しておくことで、資金計画のズレや不足を防ぎ、安心して工事を進めることができます。
③ 上棟時〜工事中に発生する諸費用
- 中間金(工事請負契約の支払い)
- 追加工事費(仕様変更・設備追加)
上棟時では、ハウスメーカーによって中間金を支払うケースがあります。請負契約に基づく中間金の支払いの多くの場合、工事全体の30〜40%を上棟時に支払います。
また、建物の実際の空間が目で確認できるようになるため、図面段階では気付きにくかったコンセント位置の追加や照明の変更など、細かな要望が出やすくなります。
さらに、収納の造作や設備のグレードアップなど、日々の生活に直結する部分を工事中に変更するケースも多く、追加費用が積み上がりやすい時期です。
工事が進むほど変更が難しくなるため、上棟から内装工事の期間は「追加費用が最も発生しやすいタイミング」と認識しておくことが重要です。事前にどの部分を変更する可能性があるかを把握しておくことで、予算オーバーを防ぎやすくなります。
④ 引き渡し前に発生する諸費用
- 登記費用(所有権保存・抵当権設定)
- 司法書士への手数料
- 住宅ローン保証料
- 火災保険料(引き渡しまでに契約)
- 水道加入金
- 最終金の支払い
- 完了検査費
引き渡し前には、住宅ローン手続きや登記に関わる費用が集中します。まず必要となるのが登記費用で、所有権保存登記や抵当権設定登記に数万〜10万円以上が必要です。司法書士に依頼するための手数料も発生し、こちらも数万円程度が相場となります。
また、住宅ローンの契約に伴い、保証料や金融機関の手数料が発生し、借入額によっては数十万円規模になることがあります。引き渡し時には火災保険の加入が必須となるため、初年度分として1万〜5万円程度を前払いするケースが一般的です。(最長5年分の加入も可能)
自治体や立地によっては水道加入金が必要になり、1万〜20万円程度の幅があります。最終金として工事代金の残額を支払うタイミングでもあり、引き渡し前はまとまった支出が続くため、前もって必要額を把握しておくことが重要です。
⑤ 完成以降に発生する諸費用
- 引っ越し費用
- 家具家電の購入費
- 外構工事費(後回しにした場合)
- 不動産取得税(新築取得時に一度発生)
- 固定資産税(初年度以降、毎年発生)
- 光回線やガス・水道などインフラ契約費用
建物が完成し引き渡しを受けた後も、生活を始めるための諸費用が複数発生します。まず、引っ越し費用は荷物量や移動距離によって3万〜20万円ほどかかります。家具や家電の購入費も含めると、数十万円規模の出費になることがあります。
外構工事を後回しにしている場合は、駐車場やフェンス、庭の整備に100万円前後かかるケースもあります。
また、新築取得時には不動産取得税が一度だけ発生し、その金額は数万円から数十万円になることもあるのです。
固定資産税は初年度から毎年課税されるため、事前に金額を把握して資金計画に組み込むことが重要です。
住宅ローンを利用する場合は地震保険の契約も必要で、数千〜数万円の負担が生じます。さらに、インターネットやガス、水道などのインフラ契約費用も発生するため、入居後の想定外の支出を避けるために事前準備をしておくことが大切です。
複数社のプランと見積もり比較で費用の偏りを知る
注文住宅の諸費用は、契約時から完成後まで段階的に発生し、ハウスメーカーによって見積り内容や扱い方に大きな差があります。そのため、同じ条件でも総額が大きく変わることが珍しくありません。
費用の偏りや見落としを防ぐためには、複数社のプランと見積もりを比較することが重要です。単純に本体価格だけで判断するのではなく、「どの費用が本体に含まれ、どれが別途か」「融資対象になる費用か」を確認することで、総額での比較が可能になります。これにより、予算オーバーや支払いタイミングのトラブルを未然に防ぐことができます。
家づくりプランでは、複数社の見積もりやプラン内容を整理し、諸費用を含めた総額で比較できるため、安心して自分たちに合った住宅会社を選ぶことができます。初めての家づくりでも、資金計画や工事内容の理解をサポートしてくれるため、無理のない予算で理想の住まいを実現できます。
詳しくは、こちらの家づくりプランで比較・相談してみてください。
この記事の編集者
メタ住宅展示場 編集部
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運営会社:リビン・テクノロジーズ株式会社(東京証券取引所グロース市場)




