バリアフリーの家をつくる際の工夫ポイント8選|費用や補助金も解説

更新日:
バリアフリーの家をつくる際の工夫ポイント8選|費用や補助金も解説

高齢者やからだが不自由な方はもちろん、健常者も快適に暮らせる家がバリアフリーの家です。そのため、健康な方にとっても暮らしやすいかどうかは、バリアフリー住宅をつくるうえで大切なポイントです。

本記事ではリフォーム会社での勤務経験をもとに、バリアフリー住宅をつくる際の工夫ポイントから費用相場、補助制度までわかりやすく解説します。

バリアフリーの家をつくる際の工夫ポイント8選

バリアフリーの家をつくる際のポイントを8つ紹介します。

玄関にスロープをつくる

玄関スロープ
玄関スロープ

外から家の中に入るとき、一般的な家のつくりではどうしても段差が生じます。通常、玄関を出てすぐのスペースである玄関ポーチには、階段状のステップをつくり家の中に入りやすいようにしますが、バリアフリーの家では階段状のステップだけでなく、スロープもつくります。

スロープをつくる場合は勾配に注意が必要です。車いす利用者や高齢者が安全で円滑に利用できるスロープの勾配は、法的な基準では1/12とされています。これは、高さ10センチを上り下りするには、水平方向に長さ120センチの距離が必要なことを意味します。

使いやすいスロープの設置は想像以上にスペースが必要なため、設計段階で十分に検討する必要があります。

法的な勾配の基準は1/12ですが、使いやすいかどうかがもっとも大切です。敷地の都合など設置スペースが十分に取れない場合、勾配が多少きつくなっても問題ないと判断できるのであればスロープを設置できます。

玄関への上り下りがしやすくなるように、専門家と相談してスロープの有無を検討しましょう。

手すりを設置する

家の中には階段や玄関から廊下に上がるためのスペースなど、手すりが欲しい箇所が複数あります。

たとえば、お風呂トイレは座ったり立ったりの動作をスムーズにするために、手すりを設置したい箇所です。室内の移動でも手すりがあると補助になるため、バリアフリーの家には手すりの設置が必要です。

手すりの設置についての詳細は、下記記事よりご確認ください。

室内ドアや玄関を引き戸にする

引き戸
引き戸

車いすや歩行が困難な方にとって、スムーズな出入りは日常生活の利便性を向上させます。

引き戸は開き戸と比べて出入りしやすいドアです。車いすの場合、開き戸ではドアを開くために前後の動きが必要になるなど使いにくさがあります

引き戸にすることでドアの幅が開き戸と同じでも、ドアをスライドさせることで広い開口幅を確保できます。そのため、前後の動きが必要なくなり出入りしやすくなります。

移動のしやすさを重視してバリアフリーの家をつくるなら、ドアは引き戸にしましょう。

ヒートショック対策をする

脱衣室に設置した暖房機
脱衣室に設置した暖房機

ヒートショックとは、気温が変化した影響を受け血圧が上下することによって心臓や血管の疾患が起こる健康被害のことです。

温度差が大きいほど危険性が高まるため、特に下記のような場所を行き来する際は注意する必要があります。

  • 冬の時期に暖房の効いたリビングから寒い脱衣室に移動したとき
  • 浴室から脱衣室に移動したとき

ヒートショックは部屋の温度差が原因で起こる健康被害のため、温度差の発生を防ぐことで予防できます。浴室や脱衣室に暖房機を設置するなどして、室内の温度差を抑えるようにしましょう。

高齢者が室内の移動をしやすいことだけが、バリアフリーの家ではありません。暖かい浴室のように家族全員が使いやすい家、健康被害が起きにくい家というのもバリアフリーの家づくりには大切な考えです。

段差をなくす

段差のない脱衣室
段差のない脱衣室

以前はドアの閉まる位置を固定するために、廊下から部屋に入るドア下や脱衣室と浴室のあいだにも段差があるのが一般的でした。しかし、高齢になり足が上がらなくなると、この数センチの段差が、つまずきや転倒の原因となります。

そのため最近では段差をなくすために敷居の設置を避け、フラットな床面を実現するデザインや工夫が広まっています。

構造上完全に段差のない家にすることは難しいかもしれませんが、リビングから寝室やトイレ、お風呂など主要な室内の動線上では段差をできるだけ設けないようにしましょう。

通路になる廊下の幅や入口ドアの幅を広げる

通路幅が90センチ以上の玄関廊下
通路幅が90センチ以上の玄関廊下

車いすを利用して室内を移動するなら、通路の幅は90センチ必要です。さらに、誰かとすれ違うことを想定すると150センチの幅が必要です。

柱を立てる間隔の関係から一般的な木造住宅の場合、通路幅は約80センチです。そのため、車いすを想定した動線を確保するなら、通路幅を90センチ以上確保できる構造と間取りを考えましょう。

高さを考える

車いすの高さに合わせた洗面台
車いすの高さに合わせた洗面台

平面的なことだけでなく、高さ方向の使いやすさについて考えることもバリアフリーの家づくりでは大切なポイントです。

具体的には、以下のような工夫が挙げられます。

  • 車いすを利用したままでも使えるように、システムキッチンや洗面化粧台の高さを決める
  • 浴槽の深さを約40センチにする

また、高さを調節できるテーブルにすると、からだの状態に合わせられるため使いやすくなるでしょう。家族みんなが使いやすい高さを考えて計画することが大切です。

水回りスペースでは滑りにくい床材を使う

滑り止め効果のある床材を使った部屋
滑り止め効果のある床材を使った部屋

洗面所など水回りのスペースでは、滑りにくい床材を使うことも大切です。

年を重ねて足腰が弱まると、ぬれた床で滑って転倒しケガする心配があります。そのようなリスクを避けるために、滑り止め効果のある床材を選ぶとよいでしょう。

たとえば、株式会社サンゲツが販売しているクッションフロアの「消臭快適フロア」はペット対応商品ですが、滑りにくい加工がされています。また、ペット対応商品の床材はフローリングでも表面に滑りにくい加工がされています

タイルはノンスリップ加工といわれるような、表面加工されているものは滑りにくいです。

※クッションフロア
プラスチック(ビニール)を主成分とする、柔らかいクッション性を持つフローリング素材のこと。

バリアフリーの家をつくる際の費用相場

バリアフリーの家づくりのポイントをふまえて、場所別でみる工事費用の相場は以下のとおりです。なお、工事内容によって金額は変動します。

玄関の工事内容と費用
工事内容 費用
スロープをつくる 15万円~
玄関引き戸設置 30万円~
手すりの設置 12万円~
洗面脱衣所の工事内容と費用
工事内容 費用
車いす用洗面化粧台の設置 20万円~
入口引き戸設置 7万円~
手すりの設置 2万円~
滑りにくい床材での仕上げ 4万円~
浴室の工事内容と費用
工事内容 費用
システムバスの設置(段差解消含む) 90万円~
浴室暖房機の設置 10万円~
手すりの設置 3.5万円~
トイレの工事内容と費用
工事内容 費用
和式トイレを洋式トイレに変更 40万円~
入口引き戸の設置 7万円~
手すりの設置 4万円~
滑りにくい床材での仕上げ 4万円~
廊下と階段の工事内容と費用
工事内容 費用
廊下の幅拡張 30万円~
手すりの設置 10万円~

お年寄りも若い方も、からだが不自由な方も健康な方もそこに住んでいる家族の誰しもが使いやすい家が、バリアフリーの家です。

家族構成や置かれている状況によって、使いやすさは異なります。また、状況が変化する可能性があることも忘れてはいけません。変化への対応も想定しつつ、専門家を交えて家族で話し合って計画しましょう。

バリアフリーの家をつくる際に利用できる補助金

バリアフリーの家をつくる際に利用できる補助制度について紹介します。

通常より金利の低い「【フラット35】S」

【フラット35】Sは住宅ローン商品である【フラット35】の金利を、条件によって5年間もしくは10年間にわたって0.25%引き下げる優遇制度です。

省エネルギー性や耐震性などの技術基準のうち、いずれかを満たす質の高い住宅を取得する場合に適用され、その技術基準のひとつにバリアフリー性が定められています。

具体的には、高齢者等配慮対策等級に定められている内容を基準としています。

移動等に伴う転倒・転落等の防止および介助用車いすの使用者が基本的な生活行為を行うことを容易にする措置を確保した住宅とする

引用:住宅金融支援機構【フラット35】Sの技術基準の概要「バリアフリー性に関する基準[高齢者等配慮対策等級4]

部屋の配置や段差、階段や手すりなどについての条件が定められています。詳しい条件は、住宅金融支援機構のWebサイトで確認してください。
 

国や自治体の補助制度

国や自治体が実施している補助制度があります。多くの補助金はリフォームでバリアフリーの家をつくる場合に利用できる補助制度ですが、なかには新築でも利用できる補助制度があります。

詳しくは建設予定地やお住まいの自治体に問い合わせるか、依頼先の専門業者に確認しましょう。

高齢者住宅改修費用助成制度

新築住宅や建て替えでは、利用できる補助・助成制度が少ないのが実情です。

リフォームでバリアフリーの家をつくる際に利用できる制度が、「高齢者住宅改修費用助成制度」です。

介護保険制度による補助制度で助成を受けるには、対象者が「要介護」もしくは「要支援の介護認定」を受けていることが条件です。

助成金額は工事にかかった費用の9割が支給され、工事費用の限度基準額は20万円と定められているので、最大で18万円が支給されます。工事費用が20万円に満たない場合は、かかった費用の9割にあたる金額が支給されます。

工事費用の限度基準額20万円は対象者ひとりにつき総額で、という考え方なので、1度目が10万円の工事であれば、2回目の工事では10万円までの工事が助成対象です。

主な対象となる工事は次のとおりです。

  • 手すりの設置や段差の解消
  • 通路幅の拡大や転倒防止を目的とした床材への変更
  • 扉や便器の取り換え

所得税、固定資産の減税制度

リフォームでバリアフリーの家をつくると、所得税や固定資産の減税制度を利用できます。この制度も新築や建て替えでは利用できません

現金で支払うか住宅ローンを利用したかで税金の控除内容は変わりますが、定められた期間で定められた割合の額の控除を受けられます。確定申告での手続きが必要になるため、増改築等工事証明書などを用意する必要があります。詳しい内容は、一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会の「リフォーム減税制度の概要」を参照してください。

専門家のアドバイスをもとにバリアフリー住宅をつくろう

バリアフリー住宅は、身体的な制約を持つ人にとって利用しやすい設計が求められます。そのため、バリアフリー住宅の設計では専門家のアドバイスが欠かせません。

建築家やインテリアデザイナー、バリアフリーの専門家は、豊富な知識と経験を持っているため、自分たちの要件やニーズにもとづいて、最適な間取りを提案してくれます。住む側の意見と専門家のアドバイスを組み合わせることで、理想に近いバリアフリー住宅がつくれるでしょう。

東証グロース上場

リビン・テクノロジーズ株式会社(東証グロース上場 証券コード:4445)が運営する住宅展示場です

Copyright © Living Technologies Inc. All rights reserved.

page
top