高齢者やからだが不自由な方はもちろん、健常者も快適に暮らせる家がバリアフリーの家です。そのため、健康な方にとっても暮らしやすいかどうかは、バリアフリー住宅をつくるうえで大切なポイントです。
本記事ではリフォーム会社での勤務経験をもとに、バリアフリー住宅をつくる際の工夫ポイントから費用相場、補助制度までわかりやすく解説します。
もくじ
この記事でわかること
- 安全で快適なバリアフリー住宅を実現するための設計・間取りのポイント
- バリアフリー化に必要な工事内容と場所別の費用相場
- 費用負担を軽減するために活用できる補助金や減税制度の種類
バリアフリー住宅とは?
バリアフリー住宅と聞くと、高齢者や介護が必要な人のための家というイメージがあるかもしれません。しかし実際には、小さな子どもから大人まで、家族全員が快適に暮らせるように配慮された住まいを指します。ここでは、バリアフリー住宅の基本的な考え方とメリットについて解説します。
家族全員が快適に暮らせる家
バリアフリー住宅は、日常生活の障壁(バリア)を取り除くことで、あらゆる年代の人が安全に暮らせるように設計されています。近年では、特定の人のためだけでなく、誰にとっても暮らしやすいユニバーサルデザインの視点を取り入れるケースが増えています。
室内の段差をなくすことは、足腰が弱い高齢者のためだけでなく、小さな子どもが転倒する危険性を減らす効果もあります。妊娠中の方やケガをした方にとっても、動きやすい空間は大きなメリットになります。家族みんなが安心して過ごせる場所を作ることこそが、バリアフリー住宅の本質的な目的です。
高齢者が住みやすい家の条件については「高齢者が住みやすい家の条件とは?安心して暮らせるポイント10選」で詳しく紹介しています。
家庭内での事故を予防できる
バリアフリー住宅を建てることで、家庭内で起こりやすい事故を未然に防ぐ効果が期待できます。家の中の転倒事故は、わずかな段差や滑りやすい床材などが原因で起こることが少なくありません。段差の解消や手すりの設置などを行うことで、こうしたケガのリスクを大きく軽減できます。
また、将来自分や家族のからだが不自由になったときでも、そのまま住み続けられるという安心感もメリットの一つです。日々の生活の安全性を高め、長期的なライフスタイルの変化にも柔軟に対応できる点は、バリアフリー住宅ならではの大きな魅力といえます。
バリアフリーの家をつくる際の工夫ポイント8選
バリアフリーの家をつくる際のポイントを8つ紹介します。
玄関にスロープをつくる

玄関スロープ
玄関スロープ外から家の中に入るとき、一般的な家のつくりではどうしても段差が生じます。通常、玄関を出てすぐのスペースである玄関ポーチには、階段状のステップをつくり家の中に入りやすいようにしますが、バリアフリーの家では階段状のステップだけでなく、スロープもつくります。
玄関ポーチの屋根、おしゃれな形は?種類と費用、施工時の注意点4つ
住宅性能・構造スロープをつくる場合は勾配に注意が必要です。車いす利用者や高齢者が安全で円滑に利用できるスロープの勾配は、法的な基準では1/12とされています。これは、高さ10センチを上り下りするには、水平方向に長さ120センチの距離が必要なことを意味します。
使いやすいスロープの設置は想像以上にスペースが必要なため、設計段階で十分に検討する必要があります。
法的な勾配の基準は1/12ですが、使いやすいかどうかがもっとも大切です。敷地の都合など設置スペースが十分に取れない場合、勾配が多少きつくなっても問題ないと判断できるのであればスロープを設置できます。
玄関への上り下りがしやすくなるように、専門家と相談してスロープの有無を検討しましょう。
手すりを設置する
家の中には階段や玄関から廊下に上がるためのスペースなど、手すりが欲しい箇所が複数あります。
たとえば、お風呂やトイレは座ったり立ったりの動作をスムーズにするために、手すりを設置したい箇所です。室内の移動でも手すりがあると補助になるため、バリアフリーの家には手すりの設置が必要です。
手すりの設置についての詳細は、下記記事よりご確認ください。
室内ドアや玄関を引き戸にする

引き戸車いすや歩行が困難な方にとって、スムーズな出入りは日常生活の利便性を向上させます。
引き戸は開き戸と比べて出入りしやすいドアです。車いすの場合、開き戸ではドアを開くために前後の動きが必要になるなど使いにくさがあります。
引き戸にすることでドアの幅が開き戸と同じでも、ドアをスライドさせることで広い開口幅を確保できます。そのため、前後の動きが必要なくなり出入りしやすくなります。
移動のしやすさを重視してバリアフリーの家をつくるなら、ドアは引き戸にしましょう。
ヒートショック対策をする

脱衣室に設置した暖房機ヒートショックとは、気温が変化した影響を受け血圧が上下することによって心臓や血管の疾患が起こる健康被害のことです。
温度差が大きいほど危険性が高まるため、特に下記のような場所を行き来する際は注意する必要があります。
冬の時期に暖房の効いたリビングから寒い脱衣室に移動したとき浴室から脱衣室に移動したときヒートショックは部屋の温度差が原因で起こる健康被害のため、温度差の発生を防ぐことで予防できます。浴室や脱衣室に暖房機を設置するなどして、室内の温度差を抑えるようにしましょう。
高齢者が室内の移動をしやすいことだけが、バリアフリーの家ではありません。暖かい浴室のように家族全員が使いやすい家、健康被害が起きにくい家というのもバリアフリーの家づくりには大切な考えです。
- 冬の時期に暖房の効いたリビングから寒い脱衣室に移動したとき
- 浴室から脱衣室に移動したとき
ヒートショックは部屋の温度差が原因で起こる健康被害のため、温度差の発生を防ぐことで予防できます。浴室や脱衣室に暖房機を設置するなどして、室内の温度差を抑えるようにしましょう。
高齢者が室内の移動をしやすいことだけが、バリアフリーの家ではありません。暖かい浴室のように家族全員が使いやすい家、健康被害が起きにくい家というのもバリアフリーの家づくりには大切な考えです。
段差をなくす

以前はドアの閉まる位置を固定するために、廊下から部屋に入るドア下や脱衣室と浴室のあいだにも段差があるのが一般的でした。しかし、高齢になり足が上がらなくなると、この数センチの段差が、つまずきや転倒の原因となります。
そのため最近では段差をなくすために敷居の設置を避け、フラットな床面を実現するデザインや工夫が広まっています。
構造上完全に段差のない家にすることは難しいかもしれませんが、リビングから寝室やトイレ、お風呂など主要な室内の動線上では段差をできるだけ設けないようにしましょう。
通路になる廊下の幅や入口ドアの幅を広げる

車いすを利用して室内を移動するなら、通路の幅は90センチ必要です。さらに、誰かとすれ違うことを想定すると150センチの幅が必要です。
柱を立てる間隔の関係から一般的な木造住宅の場合、通路幅は約80センチです。そのため、車いすを想定した動線を確保するなら、通路幅を90センチ以上確保できる構造と間取りを考えましょう。
高さを考える

平面的なことだけでなく、高さ方向の使いやすさについて考えることもバリアフリーの家づくりでは大切なポイントです。
具体的には、以下のような工夫が挙げられます。
- 車いすを利用したままでも使えるように、システムキッチンや洗面化粧台の高さを決める
- 浴槽の深さを約40センチにする
また、高さを調節できるテーブルにすると、からだの状態に合わせられるため使いやすくなるでしょう。家族みんなが使いやすい高さを考えて計画することが大切です。
水回りスペースでは滑りにくい床材を使う

洗面所など水回りのスペースでは、滑りにくい床材を使うことも大切です。
年を重ねて足腰が弱まると、ぬれた床で滑って転倒しケガする心配があります。そのようなリスクを避けるために、滑り止め効果のある床材を選ぶとよいでしょう。
たとえば、株式会社サンゲツが販売しているクッションフロア※の「消臭快適フロア」はペット対応商品ですが、滑りにくい加工がされています。また、ペット対応商品の床材はフローリングでも表面に滑りにくい加工がされています。
タイルはノンスリップ加工といわれるような、表面加工されているものは滑りにくいです。
※クッションフロア=プラスチック(ビニール)を主成分とする、柔らかいクッション性を持つフローリング素材のこと。
バリアフリー住宅の間取りを考えるコツ
バリアフリー住宅を新築する際、どのような間取りにするかは非常に重要です。快適な生活を送るためには、設備だけでなく生活動線や部屋の配置にも工夫が求められます。ここでは、バリアフリー住宅の間取りを決める際の具体的なコツを3つ紹介します。
介護しやすい間取りについては「介護しやすい間取りで負担を減らす。平屋・リフォームのポイント」で詳しく紹介しています。
生活動線をできるだけ短くする
バリアフリー住宅において重視したいのが、生活動線をできるだけ短くすることです。とくに、寝室とトイレ、浴室、洗面所などの水回りは極力近づけて配置し、毎日の移動にかかる負担を減らす間取りを検討します。
移動距離を短くするだけでなく、移動のしやすさも重要なポイントです。直角に曲がる回数を減らして直線的に移動できる動線を確保すると、車椅子や歩行器を使う場合でもスムーズに部屋を行き来できるようになります。家族の日常的な動きを具体的にイメージしながら部屋を配置していくのがおすすめです。
廊下を極力減らして移動の負担を抑える
移動を楽にするためには、廊下をできるだけ少なく設計することも効果的です。一般的な住宅では廊下を通って各部屋へ向かいますが、あえて廊下をなくしてLDK(リビング・ダイニング・キッチン)を中心とした間取りにすることで、移動の手間を大きく省けます。
たとえば、玄関ホールから直接リビングに入り、そこから各個室や水回りへアクセスできるような空間構成が推奨されます。部屋と部屋の距離が近くなるため、介助が必要になった際にも家族の目が行き届きやすく、コミュニケーションが取りやすいという利点もあります。
平屋や1階で生活が完結する間取りにする
バリアフリー住宅を建てるなら、上下階の移動がない平屋住宅が理想的といえます。階段の上り下りがないため、将来的に足腰が弱くなったときや車椅子生活になった場合でも、家じゅうを不自由なく移動できます。
もし敷地の広さなどの都合で2階建てにする場合は、設計段階から工夫が必要です。少なくとも寝室やトイレ、お風呂といった生活に欠かせないスペースは1階にまとめ、ワンフロアで日常生活が完結するようにしておきます。また、後からホームエレベーターを設置できるよう、あらかじめ空間を確保しておくのも一つの方法です。
バリアフリーの家をつくる際の費用相場
バリアフリーの家づくりのポイントをふまえて、場所別でみる工事費用の相場は以下のとおりです。なお、工事内容によって金額は変動します。
| 工事内容 | 費用 |
|---|---|
| スロープをつくる | 15万円~ |
| 玄関引き戸設置 | 30万円~ |
| 手すりの設置 | 12万円~ |
| 工事内容 | 費用 |
|---|---|
| 車いす用洗面化粧台の設置 | 20万円~ |
| 入口引き戸設置 | 7万円~ |
| 手すりの設置 | 2万円~ |
| 滑りにくい床材での仕上げ | 4万円~ |
| 工事内容 | 費用 |
|---|---|
| システムバスの設置(段差解消含む) | 90万円~ |
| 浴室暖房機の設置 | 10万円~ |
| 手すりの設置 | 3.5万円~ |
| 工事内容 | 費用 |
|---|---|
| 和式トイレを洋式トイレに変更 | 40万円~ |
| 入口引き戸の設置 | 7万円~ |
| 手すりの設置 | 4万円~ |
| 滑りにくい床材での仕上げ | 4万円~ |
| 工事内容 | 費用 |
|---|---|
| 廊下の幅拡張 | 30万円~ |
| 手すりの設置 | 10万円~ |
お年寄りも若い方も、からだが不自由な方も健康な方もそこに住んでいる家族の誰しもが使いやすい家が、バリアフリーの家です。
家族構成や置かれている状況によって、使いやすさは異なります。また、状況が変化する可能性があることも忘れてはいけません。変化への対応も想定しつつ、専門家を交えて家族で話し合って計画しましょう。
バリアフリーの家をつくる際に利用できる補助金
バリアフリーの家をつくる際に利用できる補助制度について紹介します。
通常より金利の低い「【フラット35】S」
【フラット35】Sは住宅ローン商品である【フラット35】の金利を、条件によって5年間もしくは10年間にわたって0.25%引き下げる優遇制度です。
省エネルギー性や耐震性などの技術基準のうち、いずれかを満たす質の高い住宅を取得する場合に適用され、その技術基準のひとつにバリアフリー性が定められています。
具体的には、高齢者等配慮対策等級に定められている内容を基準としています。
移動等に伴う転倒・転落等の防止および介助用車いすの使用者が基本的な生活行為を行うことを容易にする措置を確保した住宅とする
引用:住宅金融支援機構【フラット35】Sの技術基準の概要「バリアフリー性に関する基準[高齢者等配慮対策等級4]
部屋の配置や段差、階段や手すりなどについての条件が定められています。詳しい条件は、住宅金融支援機構のWebサイトで確認してください。
国や自治体の補助制度
国や自治体の補助制度
国や自治体が実施している補助制度があります。多くの補助金はリフォームでバリアフリーの家をつくる場合に利用できる補助制度ですが、なかには新築でも利用できる補助制度があります。
詳しくは建設予定地やお住まいの自治体に問い合わせるか、依頼先の専門業者に確認しましょう。
リフォーム補助金については「リフォーム補助金【2026年度最新】一覧|国・自治体の対象工事・金額・申請方法を解説」で詳しく紹介しています。
高齢者住宅改修費用助成制度
新築住宅や建て替えでは、利用できる補助・助成制度が少ないのが実情です。
リフォームでバリアフリーの家をつくる際に利用できる制度が、「高齢者住宅改修費用助成制度」です。
介護保険制度による補助制度で助成を受けるには、対象者が「要介護」もしくは「要支援の介護認定」を受けていることが条件です。
助成金額は工事にかかった費用の9割が支給され、工事費用の限度基準額は20万円と定められているので、最大で18万円が支給されます。工事費用が20万円に満たない場合は、かかった費用の9割にあたる金額が支給されます。
工事費用の限度基準額20万円は対象者ひとりにつき総額で、という考え方なので、1度目が10万円の工事であれば、2回目の工事では10万円までの工事が助成対象です。
主な対象となる工事は次のとおりです。
- 手すりの設置や段差の解消
- 通路幅の拡大や転倒防止を目的とした床材への変更
- 扉や便器の取り換え
所得税、固定資産の減税制度
リフォームでバリアフリーの家をつくると、所得税や固定資産の減税制度を利用できます。この制度も新築や建て替えでは利用できません。
現金で支払うか住宅ローンを利用したかで税金の控除内容は変わりますが、定められた期間で定められた割合の額の控除を受けられます。確定申告での手続きが必要になるため、増改築等工事証明書などを用意する必要があります。詳しい内容は、一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会の「リフォーム減税制度の概要」を参照してください。
専門家のアドバイスをもとにバリアフリー住宅をつくろう
バリアフリー住宅は、身体的な制約を持つ人にとって利用しやすい設計が求められます。そのため、バリアフリー住宅の設計では専門家のアドバイスが欠かせません。
建築家やインテリアデザイナー、バリアフリーの専門家は、豊富な知識と経験を持っているため、自分たちの要件やニーズにもとづいて、最適な間取りを提案してくれます。住む側の意見と専門家のアドバイスを組み合わせることで、理想に近いバリアフリー住宅がつくれるでしょう。
家づくり、こんなお悩みありませんか?
- 何から始めればいいのかわからない
- 情報収集はどうすればいい?
- ハウスメーカーの比較が難しい
- 理想の家はいくらで建つ?
- 間取りを具体的にイメージしたい
- カタログ請求してみたけれど、どう進めればいいかわからない
初めての家づくりは、誰もが不安や迷いを抱えるもの
マイホームの検討を始めたら、まずは家づくりプランをもらってみましょう!
家づくりプランとは、カタログのような一般的な情報ではなく、あなたの予算や希望をもとにオリジナルで作成される「家の提案書」 のこと。
複数のハウスメーカーや工務店が、あなた向けのプランを用意してくれるため、自宅にいながら比較・検討が可能で、家づくりの第一歩が踏み出せます
プランを比較することで、理想の家づくりに大切なイメージが“なんとなく”から“具体的”に変わります。
まずは気軽に依頼してみてください。
この記事の編集者
メタ住宅展示場 編集部
メタ住宅展示場はスマホやPCからモデルハウスの内覧ができるオンライン住宅展示場です。 注文住宅の建築を検討中の方は、時間や場所の制限なくハウスメーカー・工務店を比較可能。あなたにヒッタリの家づくりプランの作成をお手伝いします。 注文住宅を建てる際のノウハウなどもわかりやすく解説。 注文住宅でわからないこと、不安なことがあれば、ぜひメタ住宅展示場をご活用ください。
運営会社:リビン・テクノロジーズ株式会社(東京証券取引所グロース市場)






