吹き抜けのデメリットとは?一級建築士が教える、後悔をゼロにする3つの絶対条件

更新日:
吹き抜けのデメリットとは?一級建築士が教える、後悔をゼロにする3つの絶対条件

注文住宅や住宅性能など、住まいづくりの判断に欠かせないテーマを、一級建築士が実務目線で解説する連載コラムです。設計現場で実際に多い悩みや失敗事例をもとに、「何を確認すべきか」「どう考えるべきか」を具体的に整理します。

毎月第2・第4木曜日更新(予定)

開放感あふれる「吹き抜け」や「リビング階段」は、注文住宅ならではの“気持ちが上がる”ポイントですよね。図面やパースで見たときに、空間が一気に明るく、広く感じられるのも魅力です。

一方で、実際に住み始めてから「思っていたのと違った…」という声が出やすい場所でもあります。私も相談を受ける中で、吹き抜けが原因で悩みが増えてしまったケースを何度も見てきました。

「エアコンが効きにくい」「音が家中に響く」「掃除が大変」。こうした後悔の多くは、吹き抜けの“見た目の良さ”に気持ちが向く一方で、空気の動きや音、メンテナンスといった現実的な対策が設計段階で後回しになってしまうことで起こります。

せっかくのこだわりを後悔に変えないために、この記事では一級建築士としての実務目線で、吹き抜けで失敗しないための「3つの絶対条件」を分かりやすく整理します。

1. なぜ「理想の吹き抜け」が「不満の種」に変わるのか?

吹き抜けを検討すると、ハウスメーカーの担当者から「最近の家は断熱性能が高いので、吹き抜けでも寒くなりにくいですよ」と言われることがあります。

たしかに住宅性能は昔に比べて上がっていて、その説明自体は間違いではありません。ただ、ここで一つ補足したいのは、“性能が良いだけ”では解決が難しい、ということです。

空間が大きくなる分、温度差や空気の流れ、音の伝わり方が変わりやすく、対策の有無が暮らし心地に直結します。

① コールドドラフト現象:冬の「足元が寒い」の正体

吹き抜けでよく聞くのが「冬、足元が冷える」という悩みです。

単に「部屋が広いから寒い」というより、コールドドラフト現象が関係しているケースが少なくありません。私も現場で「温度計はそこまで低くないのに、なんだか足元だけ冷えるんです」と相談されることが多いのですが、まさにこの現象が原因になっている可能性が高いです。

暖かい空気は軽いので天井付近に溜まりやすく、反対に窓ガラス付近の空気は外気で冷やされて重くなります。吹き抜け上部に大きな窓があると、冷えた空気が壁を伝って床へ落ち、滝のように“冷気の流れ”ができることがあります。これがコールドドラフトです。

暖房を強めても、床付近に冷たい空気が流れ続けると、どうしても体感として「寒い」と感じます。断熱材の厚みなど“数値の説明”だけで終わらず、空気の動きまで含めて対策を考えることが大切になります。

② 2階まで筒抜けになりやすい「音の道」

次に「音」です。吹き抜けを作ると、上下階が空間としてつながるため、生活音も行き来しやすくなります。私は打ち合わせでよく「音の道ができやすい」とお伝えします。

特に、家族の生活時間が少しズレてくると、音のストレスはじわじわ効いてきます。1階で家族が話している声、テレビの音、キッチンで食器を洗うカチャカチャ音、掃除機の音。こうした音は吹き抜けを通って2階ホールに上がり、さらに各部屋のドアの隙間から入り込みやすくなります。

「家族の気配を感じられる」というメリットは魅力ですが、静かに休みたい時間帯がある家庭や、在宅ワークのある家庭では、思った以上に気になることもあります。

「うちはどうだろう?」と一度だけ具体的に想像しておくと、対策を打ちやすくなります。

③ 地震に強い家にするための「工夫」

少し専門的になりますが、吹き抜けは「床がない」状態でもあります。

家を地震から守るうえでは壁の強さに目が行きがちですが、実は「床の強さ(水平構面)」も大切で、床がしっかり働くことで建物全体のねじれが抑えられます。吹き抜けで大きな“抜け”ができると、その分、建物のねじれに対して弱くなりやすい傾向があります。

だからこそ、「耐震等級3だから安心」で終わらせず、吹き抜け部分をどう補う設計になっているかを確認することが重要です。吹き抜けを入れる代わりにどこで壁量やバランスを調整しているのか、丁寧に説明してくれる設計士かどうかで、安心感は大きく変わります。

2. 失敗を防ぐための3つの絶対条件

吹き抜けを「作ってよかった」と思える空間にするには、デザインだけでなく設備や構造もセットで考える必要があります。

ここからは、私が打ち合わせで必ず確認する「3つの絶対条件」を、できるだけ具体的に紹介します。どれも「あとから」では直しにくいポイントなので、最初に押さえておくと安心です。

条件①:断熱・気密性能と「空調・換気設計」を連動させる

吹き抜けのある家では、高気密・高断熱は“こだわり”というより、快適に暮らすための土台になります。まずは性能の目安として、以下を一つの基準にしてみてください。

  • 断熱性能(UA値):地域にもよりますが、HEAT20 G2(6地域で0.46以下)を目安にすると安心
  • 気密性能(C値):C値は1.0以下、できれば0.5以下を目指したい

ただ、ここで大事なのは数値そのものというより、「空気をどう回すか」です。数値が良くても空気がうまく循環しないと、上下温度差が残りやすいためです。

吹き抜け計画では、暖かい空気が天井付近に溜まったままにならないよう、“循環ルート”を設計に組み込むことが鍵になります。

  • 床暖房の検討:足元の冷え対策として相性が良いケースが多い
  • 全館空調/ダクト循環:上に溜まりやすい暖気を戻す仕組みがあると温度ムラが出にくい

「どこが寒くなりやすいか」「どう循環させるか」を設計者が具体的に説明できるか。ここはぜひ確認したいポイントです。

条件②:シーリングファンの「性能・維持管理」まで詰める

シーリングファンは、おしゃれなインテリアという印象もありますが、吹き抜けの快適性を支える重要な設備です。正直、付けるかどうかで住み心地が大きく変わるケースもあります。

ただし、デザインだけで選んでしまうと、使い勝手や維持管理が負担になり、いつしか回さなくなることもあります。

  • DCモーターの選択:長時間運転を前提に、省エネで微調整しやすいモデルが向く
  • メンテナンスの考え方:高い位置のファンには埃が溜まるため、掃除方法まで事前に決めたい

床から約5メートルの高さに設置されるファンをどう掃除するかは、意外と現実的な問題です。昇降機能付きにするのか、点検通路(キャットウォーク)を設けるのか。

ここを曖昧にすると、数年後に「汚れているけど触れない設備」になりがちです。

条件③:間取りで「音の縁切り」をして、気配は残す

吹き抜けの音問題は、“材料”というより“間取り”で大きく変わります。

逆にいえば、間取りの工夫で改善できる余地が大きい分、ここを押さえると満足度が上がります。

  • 緩衝帯(バッファ)を挟む:吹き抜け近くに寝室ドアを置かない/クローゼットを挟む/廊下を少し曲げる
  • 建具の工夫:ドア下の隙間(アンダーカット)から音が漏れるため、パッキン付き建具や切り離しの仕組みを検討する

リビング階段の入口に引き戸やロールスクリーンを設けて「必要なときに区切れる」ようにするだけでも、暮らしやすさが変わります。

家族の気配は残しつつ、音のストレスだけを減らす ーこのバランスが大切です。

3. 吹き抜けの「照明設計」にプロがこだわる理由

吹き抜けは昼間の印象が強いぶん、意外と忘れられがちなのが「夜の居心地」です。

昼は明るく開放的でも、照明計画が単調だと、夜に“上が暗い”“落ち着かない”と感じることがあります。 せっかくの吹き抜けが、夜になると「なんとなく寒々しい」と感じられるのはもったいないところです。

「床だけ」を照らしても明るさは感じにくい

よくある失敗は、1階の天井に強めのダウンライトを集中させることです。

人は床面よりも、壁や天井がどれくらい明るいかで空間の明るさを判断しやすいと言われます。

1階部分が明るくても、上が暗いままだと視界の上半分が沈んでしまい、吹き抜けの開放感が出にくくなることがあります。

プロが意識する「重層的なライティング」

吹き抜けを心地よく見せるコツは、光を一つで完結させず、複数の“層”で重ねることです。

高さや奥行きを感じられる光の作り方をすると、夜の吹き抜けがぐっと落ち着きます。

  • アッパーライトで天井を照らす:梁の上や壁面に上向きの光を入れ、反射光で全体を包む
  • ウォールウォッシャーで壁に表情を出す:大きな壁面に沿って光を流し、奥行きをつくる
  • ペンダントライトで視線の重心をつくる:空間の中心をつくり、落ち着きやすくする

照明は後から追加もできますが、配線や下地の準備は最初が肝心です。吹き抜けを採用するなら、ぜひ「夜の見え方」まで含めて設計者と話してみてください。

4. 入居後に気づく「掃除と電球交換」の罠

図面を見ているときはワクワクしていて、住んだ後の家事の負担までは想像しにくいものです。

吹き抜けは特に、普段のリビングにはない“高所メンテナンス”が発生します。 暮らし始めてから「やっぱり大変だった…」となりやすい部分なので、先回りしておくと安心です。

高所窓(ハイサイドライト)の掃除問題

高い位置の窓は光を届けてくれる一方で、埃や雨だれはどうしても付きます。

「高い場所だから汚れが見えない」と思いがちですが、斜めから日差しが入ると汚れが意外と目立つことがあります。見た目の印象が落ちると、せっかくの吹き抜けも“もったいない空間”になってしまいます。

対策はシンプルで、「誰が・いつ・どう掃除するか」を決めることです。伸縮ポールで届く高さにするのか、キャットウォーク(点検通路)を設けるのか。設計者と早めに相談しておくのがおすすめです。

照明交換に「足場」が必要になるコストリスク

ダウンライトはスッキリ見えて人気ですが、「高所に付けすぎる」と後から困ることがあります。

LEDは長寿命とはいえ、基板の故障などで交換が必要になるケースはゼロではありません。もし天井高が高い位置に器具を設けていると、脚立では届かず、足場や高所作業が必要になることがあります。

対策は、交換しやすい照明計画にしておくことです。壁付けスポットやペンダントで手の届く範囲をつくる、昇降機能付き器具を検討するなど、「将来の維持費」を最初から想定しておくと後悔が減ります。

5. 「理想」を諦めないための代替案

ここまで読んで、「吹き抜けは憧れるけれど、自分たちの暮らし方には少しハードルが高いかも」と感じた方もいるかもしれません。

とはいえ、吹き抜けを選ばない=開放感を諦める、ではありません。「明るさが欲しい」「抜け感が欲しい」「家族の気配を感じたい」など、目的を整理すると、デメリットを抑えながら満足度を高められる方法が見つかることも多いです。

高窓の活用:床を抜かずに「明るさ」と「抜け感」をつくる

上下階をつなげなくても、リビングの天井付近に横長の高窓(ハイサイドライト)を設ければ、光を奥まで届けることができます。

視線が上へ抜けるので天井が高く感じられ、吹き抜けに近い開放感を得られるのが魅力です。吹き抜けほど空間の体積が増えない分、冷暖房効率や音の回り込みを抑えやすい一方で、夏の日差し対策として庇やシェード、ガラス仕様まで含めて計画しておくと安心です。

勾配天井:2階リビングの強みを活かして“吹き抜け級”の天井高に

2階をリビングにする場合は、屋根の形を活かした「勾配天井」が相性の良い選択肢です。

吹き抜けのように階下へ音が抜けていく心配が少なく、プライバシーを保ちやすいのが利点になります。梁を見せるデザインや間接照明とも相性がよく、見た目の満足度を上げやすい方法です。

夏の暑さが気になる場合は、断熱・遮熱の考え方や窓の取り方も合わせて検討すると安心です。

ハーフ吹き抜け:必要なところだけ“抜く”という考え方

「吹き抜けの良さは欲しいけれど、全体を抜くのは不安」という場合は、ダイニング上だけ、階段上だけなど、部分的に天井を高くする“ハーフ吹き抜け”も有力です。

空間にメリハリが生まれ、視線が抜けるポイントができるため、面積以上に広く感じられます。

吹き抜け部分が限定される分、寒さや上下温度差、音の回り込みといったデメリットも抑えやすく、バランスを取りやすい選択肢です。

図面を見る時にチェックすべき「冬の朝」と「家族の声」

吹き抜けやリビング階段は、対策をきちんと講じれば住まいの魅力を大きく引き上げてくれる要素です。

ただし、成功の鍵は「図面の見映え」よりも、「住んだ後の生活シーン」をどれだけ具体的に想像できるかにあります。私が相談を受ける中でも、後悔が少ない方ほど“暮らしの場面”を細かくイメージしながら決めています。

最後に、図面を見ながら次の2つを想像してみてください。

  • 冷え込む冬の朝、家族がリビングで過ごすとき、足元が冷えすぎないか。
  • 夜にテレビを見たり会話をしたりするとき、2階で休む家族に音が届きすぎないか。

この問いに対して、断熱・気密や空調計画、間取りの工夫といった“具体策”で「大丈夫」と言えるなら、吹き抜け計画はかなり良い状態です。

もし不安が残るなら、それは設計を磨くためのヒントになります。

一級建築士として多くの住まいを見てきた経験から言えるのは、デメリットを理解したうえで打った対策は、数年後の満足度にちゃんと返ってくるということです。

せっかくのこだわりが、長く快適に暮らせる住まいにつながることを願っています。

この記事の執筆者

ライター名:yukiasobi保有資格:一級建築士

自治体の建築技術職として住宅政策・確認審査・都市計画などの実務経験を積み、現在は一級建築士としての知見を活かし、住宅・不動産分野を中心に記事執筆・監修を行っている。

注文住宅の間取り、住宅性能(断熱・耐震・省エネ)、リフォーム、住まいの維持管理などを主なテーマとし、専門性と分かりやすさの両立を重視。住まいの情報を、生活者目線で実践的に伝えることを心がけている。
また、建築・住宅系ライターとしての生き方や、FIREを目指す過程の記録も発信している。

note:https://note.com/sanayuki_

この記事の編集者

リビンマッチ編集部 メタ住宅展示場 編集部

メタ住宅展示場はスマホやPCからモデルハウスの内覧ができるオンライン住宅展示場です。 注文住宅の建築を検討中の方は、時間や場所の制限なくハウスメーカー・工務店を比較可能。あなたにヒッタリの家づくりプランの作成をお手伝いします。 注文住宅を建てる際のノウハウなどもわかりやすく解説。 注文住宅でわからないこと、不安なことがあれば、ぜひメタ住宅展示場をご活用ください。

運営会社:リビン・テクノロジーズ株式会社(東京証券取引所グロース市場)

東証グロース上場

リビン・テクノロジーズ株式会社(東証グロース上場 証券コード:4445)が運営する住宅展示場です

Copyright © Living Technologies Inc. All rights reserved.