多世帯住宅は、親世帯・子世帯・祖父母世帯など、複数の世帯が一つの住まいで暮らす住宅の形態です。
共働き世帯の増加や子育て・介護の負担、将来の相続や住宅コストへの不安などを背景に、多世帯住宅は「支え合いながら暮らす現実的な選択肢」として検討されるようになっています。
しかし一方で、間取りや費用分担、生活音、家族間の距離感を十分に考えずに進めてしまうと、暮らし始めてからトラブルに発展するケースも少なくありません。
多世帯住宅を成功させるためには、その特徴や間取りの違い、起こりやすい問題点を事前に理解したうえで、自分たちに合った住まい方を見極めることが重要です。
ここからは、多世帯住宅が増えている背景や代表的な間取りタイプ、円満に暮らすためのトラブル対策について詳しく解説していきます。
多世帯住宅の需要が増えている時代的な背景
共働き家庭の増加や家族それぞれのライフステージの変化に伴い、多世帯住宅を選択する家庭は増えています。
このような背景を理解しておくことで、自分たちにとって多世帯住宅が本当に適した選択肢なのかを判断しやすくなります。
ここでは、多世帯住宅が増えている時代的な要因について見ていきましょう。
共働き世帯の増加と支え合う同居スタイルの広がり
共働き世帯は年々増えており、子育て・家事・仕事を同時にこなすことがこれまで以上に大きな負担となっています。
厚生労働省のデータによると、1980年頃に約600万世帯だった共働き世帯は、2000年に約950万世帯、2010年には約1,000万世帯、そして2020年には約1,250万世帯へと大幅に増えています。
特に共働きで小さな子どもを育てている家庭では、保育園の送迎や急な発熱などのトラブルへの対応、日々の家事負担など、サポートが必要になる場面が多くなりがちです。
そのため、親世帯のサポートを受けやすい「同居」や「近居」への関心が高まっており、生活スタイルに合わせて柔軟にサポートし合える「多世帯住宅」が注目されるようになっています。
子世帯にとっては安心して生活がしやすくなり、親世帯にとっても子ども世帯が身近にいることで日々の心配が減り、将来の介護の備えとしてもプラスになります。
親世帯・子世帯のどちらにもメリットがあることから、多世帯住宅は現代のニーズに合った住まい方として広く選ばれるようになっています。
ライフステージの変化や相続を見据えた家づくり
多世帯住宅への関心が高まっている背景には、家族のライフステージが変化していることや、将来の相続まで見据えた家づくりを考える家庭が増えていることが挙げられます。
親が高齢になっていく中で「実家や親名義の土地をどのように活用するか」というテーマは、多くの家庭で避けて通れない課題です。
こうした状況が、多世帯住宅を検討し始める大きなきっかけとなっています。
また、将来の介護負担をどう分担するか、子どもの成長に合わせてどのような生活動線を確保するかなど、長期的な視点で家づくりを考えるケースも増えています。
二世帯・三世帯で暮らすことで、お互いのサポートがしやすくなるというメリットも、多世帯住宅の検討を後押しする要因の一つです。
ただし、多世帯住宅を建築する際には、名義や持分、建築費の負担方法など、相続にも直結する重要な内容が多く含まれています。
そのため、これらを曖昧なまま進めてしまうと、後々家族間のトラブルにつながる可能性もあるため注意が必要です。将来を見据えた話し合いや専門家のアドバイスを取り入れながら進める姿勢が重要になります。
建築費や生活費の負担軽減
建築費や生活費の負担を軽減できることから、多世帯住宅を選ぶ家庭は少なくありません。
通常、一世帯だけで家を建てる場合、土地代や建築費、オプション費用、税金など、あらゆる費用を自分たちだけで負担する必要があります。
しかし、多世帯住宅であれば、親世帯と子世帯が協力して費用を出し合えるため、総額の負担が軽くなり、家づくりの選択肢や予算に余裕を持ちやすくなります。
また、入居後の生活コストにおいてもメリットは大きく、水道光熱費や固定資産税など、毎月・毎年かかる支出の負担を抑えることが可能です。
たとえば「共用スペースの光熱費は世帯間で按分する」「固定資産税は折半する」など、負担を分け合うことで家計への影響を小さくできます。
近年は物価上昇が続き、マイホームの建築・維持にかかる負担が増しているため「マイホームを持ちたいがコストはできるだけ抑えたい」というニーズは高まっています。
建築段階から入居後の生活まで経済的な負担軽減が期待できることは、多世帯住宅を選択する大きな後押しになるポイントです。
多世帯住宅における3つの間取りスタイルと特徴
多世帯住宅の間取りは、大きく「完全同居型」「部分共有型」「完全分離型」の3つのスタイルに分類されます。
スタイルごとに生活空間の使い方やプライバシーの確保の仕方が異なるため、事前に特徴を理解しておくことが大切です。
自分たちの暮らし方に合った間取りを選びやすくなり、完成後の住み心地や日々の満足度を高めることにつながります。
ここでは、多世帯住宅における3つの間取りスタイルと特徴について見ていきましょう。
完全同居型:家事・食事・団らんを一緒に過ごす

キッチンや浴室、玄関といった設備をそれぞれに用意する必要がないため、他の間取りスタイルに比べて建築費用や維持費を抑えられることが特徴です。
他の間取りスタイルでは、キッチンや浴室、玄関などが2つ以上必要になることもありますが、完全同居型であれば1つで済むため、建築費用や維持費を抑えることが可能です。
完全同居型には、次のようなメリット・デメリットがあります。
| メリット | デメリット |
|---|---|
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部分共有型:玄関や水まわりなど「必要な部分だけ共有」

部分共有型とは、キッチンや浴室、トイレの水回りなど、家の中の一部分だけを親世帯と子世帯で共同利用して暮らす間取りスタイルです。
完全分離型よりも設備投資や建築費を抑えやすく、完全同居型よりはプライバシーを確保しやすいという特徴を持っています。
部分共有型には、次のようなメリット・デメリットがあります。
| メリット | デメリット |
|---|---|
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完全分離型:玄関から水まわりまで全て独立

完全分離型とは、親世帯と子世帯それぞれが独立した生活空間と設備を持ち、日常生活を完全に分けて暮らす間取りスタイルです。
玄関やキッチン、浴室、トイレ、リビングなど、必要な設備をそれぞれの世帯に設置するため、プライバシーが守られやすい点が特徴です。
ただし、建築費用や日々の維持費が高くなる傾向があります。
完全分離型には、次のようなメリット・デメリットがあります。
| メリット | デメリット |
|---|---|
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多世帯住宅で起きやすいトラブルと対策
生活音や金銭面、相続に関する問題など、多世帯住宅ではさまざまなトラブルが起こりやすくなります。
どのようなリスクがあるのかを事前に理解し、対策を押さえておくことで、将来的なトラブルを未然に防ぎやすくなります。
ここでは、多世帯住宅で起きやすいトラブルと対策について見ていきましょう。
良かれと思った完全同居が裏目に…距離が近すぎて関係性が悪化
多世帯住宅で起こりやすいトラブルの1つが、距離が近すぎて関係性が悪化してしまうという問題です。
良かれと思って完全同居を始めても、親世帯と子世帯が家事や生活の多くを共有する環境では、日常のちょっとした違いがストレスにつながることがあります。
例えば、以下のように、世代によって価値観が異なる部分は多く、無意識のうちに相手の生活へ干渉してしまうことがあります。
- 生活リズムの違い
- 物事の優先順位の違い
- 家事や育児に対する考え方の違い
料理や掃除の方法に意見を挟んでしまったり、子育て方針が食い違ったりすることで、「良かれと思って」した行動が逆に相手の不満につながってしまうことも珍しくありません。
また、完全同居ではプライバシーの確保が難しく、距離感の近さがストレスの原因となることもあります。小さな不満が積み重なり、せっかく同居を選んだのに気疲れして、家族関係がぎくしゃくしてしまうことも多く見られます。
こうしたトラブルを防ぐには、物理的な距離を確保することが効果的です。たとえば、キッチンやリビングを分けて生活空間を部分的に独立させるだけでも、互いの生活リズムやスタイルを尊重しやすくなります。
また、事前に役割分担や家庭内ルールを話し合い、価値観の違いを共有しておくことも大切です。
「1〜2ヶ月に1回」など一定期間ごとに家族会議を開き、小さな不満を早めに解消する仕組みをつくることで、良好な関係を保ちやすくなります。
生活音や生活リズムのズレで起こる音トラブル
多世帯住宅では、生活音や生活リズムの違いから生じる音のトラブルにも注意が必要です。
たとえば、以下のような何気ない生活音が思いのほかストレスにつながることがあります。
- 早朝の物音で眠れない
- 夜遅くに洗濯機や掃除機の音が響いて落ち着けない
- 子どもの走り回る足音が階下にダイレクトに響く
- テレビの音や話し声が壁越しに聞こえて集中できない
- お風呂やトイレの排水音が思った以上に響いて気になる
特に木造住宅や2階建ての場合、上下階の音は伝わりやすく、深夜や早朝の足音やドアの開閉音が気になるという声も少なくありません。
また、キッチンや浴室まわりの生活音も想像以上に響きやすく、食器の片付け音や換気扇の音、シャワーの音など、毎日の積み重ねが大きなストレスになることがあります。
「少し気になる」程度の音でも、毎日続くと不満が溜まり、関係性に影響を及ぼすこともあるため注意しましょう。
このようなトラブルを防ぐためには、お互いの生活リズムを共有し、迷惑になりやすい時間帯の家事や行動を見直すなどの配慮が大事です。防音性の高い床材や吸音材の採用、キッチンや浴室の配置を上下階でずらすといった、建築段階での音対策も効果的です。
さらに、音の悩みを溜め込まず、定期的に話し合いの場を設けて改善策を見つけていくこともトラブルを未然に防ぐポイントとなります。
建築費・名義・相続で揉める…金銭トラブルが関係悪化の引き金に
多世帯住宅を建てる際に注意したいのが、建築費や名義、将来の相続に関する金銭トラブルです。
例えば、以下のような内容は、日々の金銭的な負担だけでなく、将来の資産管理や相続の分配にも直結するため、とてもデリケートな問題です。
- 建築費を誰がどの程度負担するのか
- 住宅ローンを誰の名義で組むのか
- 毎月の返済額をどのように分担するのか
- 家の名義をどちらの世帯で持つのか
少しの意見のズレでも対立につながりやすく、話し合いが進まないケースも珍しくありません。
曖昧なまま計画を進めてしまうと「不公平だ」「想像していた話と違う」といった不満となり、大きな亀裂へと発展する可能性もあります。そして、金銭が絡む問題は一度こじれると修復が難しく、同居そのものへの不信感につながってしまい、家族間の深刻なトラブルを招く恐れもあります。このようなトラブルを避けるためには、建築費の負担割合や名義の持ち方、ローンの支払い方法などを事前にしっかりと話し合い、明確にしておくことが大事です。
また、決めたことは口約束で済ませず書面に残し、後で解釈のズレが生まれないようにすることも重要です。
さらに、必要に応じて税理士やファイナンシャルプランナーに相談してアドバイスをもらうことで、将来のリスクを見据えた最適な選択が可能になります。
多世帯住宅は実績豊富なプロと一緒に考えるのが成功への近道
多世帯住宅は、計画段階で十分に検討しないまま進めてしまうと、生活音への不満や金銭面での行き違いなどが起こりやすく、家族の関係性がぎくしゃくしてしまうおそれがあります。
多世帯住宅は建築費用が高額な上、家が完成した後の生活スタイルや家族の距離感にも深く影響します。
そのため、経験豊富なハウスメーカーのアドバイスを取り入れながら、慎重に計画を進めていくことがとても大事。
豊富なノウハウを持つプロに相談することで、潜在的なトラブルを早い段階で防ぎ、安心して長く住める住まいを実現しやすくなります。家族の希望を反映しつつ、将来のライフスタイルまで考慮した提案を受けることもできます。
ピッタリのハウスメーカーを選ぶには、複数社比較がポイント。
各社のプランや提案内容、実績、対応の丁寧さなどを比べることで、自分たちの条件に合い、安心して任せられる会社を見つけることができます。
複数のハウスメーカー・工務店を効率よく比較したい場合は、「家づくりプラン」の利用がおすすめです。
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この記事の編集者
メタ住宅展示場 編集部
メタ住宅展示場はスマホやPCからモデルハウスの内覧ができるオンライン住宅展示場です。 注文住宅の建築を検討中の方は、時間や場所の制限なくハウスメーカー・工務店を比較可能。あなたにヒッタリの家づくりプランの作成をお手伝いします。 注文住宅を建てる際のノウハウなどもわかりやすく解説。 注文住宅でわからないこと、不安なことがあれば、ぜひメタ住宅展示場をご活用ください。
運営会社:リビン・テクノロジーズ株式会社(東京証券取引所グロース市場)




