軽量鉄骨造とは?特徴と間取りの向き不向きを解説

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軽量鉄骨造とは?特徴と間取りの向き不向きを解説

軽量鉄骨造は、家を支える柱や梁などの骨組みに、薄い鋼材を使う住宅構造です。

薄い鋼材といっても、剛性・強度が高いため設計の自由度と構造の安全性を両立しやすいのが特徴です。一方で、鋼材は熱を伝えやすい性質があるため、断熱・気密・防露などの性能が不足すると、結露や室温の不安定につながることがあります。
軽量鉄骨の長所を活かしつつ温熱面の注意点に配慮できるかが、住み心地を左右します。以下で特徴と、対応するハウスメーカーの取り組みを見ていきます。

軽量鉄骨造とは?

軽量鉄骨造では、厚さが6mm未満の鋼材を使用します。
この鋼材は工場でC形鋼や角形鋼管などに成形され、柱・梁といった骨組みに用いられます。さらに、工場で壁・床のパネルや箱形ユニットまで組み上げ、現場ではそれらを連結して据え付ける(高力ボルト緊結など)方式が広く使われています。

骨組みは基礎コンクリートに埋め込んだアンカーボルトとベースプレートでしっかり固定し、その上に外壁・屋根・内装を重ねて住まいとして仕上げます。

なお、6mm以上の鋼材を用いる重量鉄骨は中大規模建物で多用されますが、戸建住宅で採用するメーカーもあります(商品ラインにより異なります)。

工場生産が中心で品質が安定しやすい

軽量鉄骨造の多くは工場で部材を製作し、溶接やボルト接合の精度が厳密に管理されます。工場では温湿度や加工精度を一定に保ちやすいため、現場での誤差が少なく、設計通りの構造性能を確保しやすいのが強みです。

また、鋼材は乾燥収縮や反りがほとんどないため、寸法安定性にも優れます。結果として柱・梁をスリム化しやすく、大きな窓や広い一体空間など、開放的な間取りを計画しやすい点がメリットです。さらに、防錆処理や耐火被覆を工場で一括施工できるため、現場での手間や不具合リスクを低減できます。こうした工業化のメリットは、耐久性の向上や長期のメンテナンス性にもつながります。

規格化・モジュール化で工期短縮・納期が読みやすい

軽量鉄骨造は、部材・接合部の規格化やモジュール設計を採用することが多く、工場で前取りした部材を現場で組み立てるため、現場加工が少なく工期短縮が見込めます

規格化により部材の手配や納期も安定し、全体スケジュールの見通しが立てやすくなります。初めて家づくりをする方でも、完成までの期間や費用計画を立てやすいのが利点です。

標準化された部材は将来の修繕や部分更新にも対応しやすく、長期の維持管理を見据えた計画が取りやすくなります。

軽量鉄骨で実現しやすいプランニング

軽量鉄骨造は柱や梁の配置を柔軟に設計できるため、以下のような自由度の高い間取りを実現しやすくなっています。

  • 大開口・大スパンと吹き抜けを活かす空間設計
  • ビルトインガレージと屋内外動線の最適化
  • 整形グリッドと可変性を前提にした間取り設計
  • 日射・通風・庇計画による熱環境の最適化

これらの空間設計が軽量鉄骨だとなぜ実現しやすいのか、その理由について詳しく解説します。

大開口・大スパンと吹き抜けを活かす空間設計

鋼は木材より高い剛性を持つため、柱・梁のスリム化や柱本数の削減がしやすく、大きな窓や長い梁間、吹き抜けなどを構造的に安定させやすいのが特徴です。

ただし、大開口・大スパンでは梁のたわみや接合部の力が大きくなるため、構造計算に基づく部材寸法・接合方法の選定が重要です。熱面でも、遮熱性の高いガラス・適切な断熱、ゾーン空調や空気循環などの計画を併せて行いましょう。

ビルトインガレージと屋内外動線の最適化

1階の大開口を要するビルトインガレージは、柱を少なくしても耐力を確保しやすい軽量鉄骨と相性が良い計画です。玄関・ガレージ・室内をスムーズにつなぐ動線計画が取りやすく、雨天時の利便性も高まります。

一方で、ガレージ上の居室では音や振動が伝わりやすくなるため、浮き床(二重床)や吸音・遮音の配慮を行いましょう。

整形グリッドと可変性を前提にした間取り設計

柱・梁をグリッド状に計画しておくと、将来の間取り変更(例:子ども部屋の分割、ワークスペース追加)に構造影響を与えにくい改修が可能です。

ただし、可変性を盛り込み過ぎるとコスト増につながる場合もあるため、必要箇所に絞って計画するのが得策です。

日射・通風・庇計画による熱環境の最適化

軽量鉄骨は開口計画の自由度が高く、南面の採光・通風経路をつくりやすいのが利点です。

夏は庇や外付けブラインド等で日射を遮り、冬は日差しを取り込む工夫を組み合わせ、季節に応じた室内環境を整えましょう。ただし、西日対策など、窓だけでは不十分な場面もあるため、遮熱ガラス・外付け日除け・通風計画をセットで検討します

軽量鉄骨造に対応した工務店・ハウスメーカーの一覧

軽量鉄骨造に対応した主な工務店・ハウスメーカーは以下の通りです。

  • 積水ハウス(軽量鉄骨軸組ブレース構法)
  • ダイワハウス(軽量鉄骨プレハブ工法
  • パナソニックホームズ(HS構法)
  • ヘーベルハウス(ハイパワード制震ALC構造)
  • セキスイハイム(軽量鉄骨ユニット工法)
  • トヨタホーム(軽量鉄骨ユニット工法)

ここからは、軽量鉄骨造の家を得意にしている「積水ハウス」「ダイワハウス」「パナソニックホームズ」の3社をピックアップして紹介します。

積水ハウス:軽量鉄骨軸組ブレース構法

積水ハウスの軽量鉄骨軸組ブレース構法には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

メリット
  • 通し柱が不要で各階の間取りをそれぞれ自由に設計できる<
  • 大開口や吹き抜けなど開放感のある空間設計も可能
  • 独自の制震装置「シーカス」採用で建物の変形を約1/2に抑えられる
  • 3種の防錆加工で「サビ」に強い
デメリット
  • 建築費用が高くなる傾向がある
  • 木造に比べて断熱性・遮音性で劣る場合がある

積水ハウスの軽量鉄骨軸組ブレース構法は、通し柱を必要とせず各階ごとに自由な間取りを設計できるため、リビングやダイニングに大開口や吹き抜けを設けるなど、開放感のある空間づくりが容易です。

独自の制震装置「シーカス」を採用しており、地震時の揺れや建物の変形を従来の約半分に抑えることができ、安全性の高い住宅を実現します。部材は工場での「邸別生産」が基本となっており、寸法や品質が精密に管理されているため、設計通りの精度で住宅が完成しやすく、建築後の安心感にもつながります。

また、積水ハウスの鋼材は3種の防錆加工(合金化亜鉛めっき処理・リン酸亜鉛処理・カチオン電着塗装)が行われるため、「サビ」に強いのも特徴です。建築費用が高額になりやすく、断熱性・遮音性は木造住宅に比べてやや劣るというデメリットもあるので注意が必要です。

ダイワハウス:軽量鉄骨プレハブ工法

ダイワハウスの軽量鉄骨プレハブ工法には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

メリット
  • 規格化された鉄骨プレハブで工期短縮&安定した施工精度を両立可能
  • 吹き抜けや大きな窓など大空間も設計可能
  • 独自の耐力壁「D-NΣQST」が採用され耐震性も高い
デメリット
  • プレハブ規格の制約によりリフォームや増改築が難しい場合がある
  • 木造に比べて断熱性・遮音性で劣る場合がある

ダイワハウスの軽量鉄骨プレハブ工法は、規格化された鉄骨プレハブ部材を工場生産することで、施工精度を安定させながら工期短縮が可能です。工場生産による精度の高い部材を用いることで、現場での組み立てミスや施工トラブルが少なく、快適で安全な住まいを手に入れやすくなります。

また、柱や梁の配置を最適化できるため、吹き抜けや大きな窓など開放感のある大空間の設計も可能で、明るく快適な住環境を作りやすくなっています。さらに、独自の耐力壁「D-NΣQST」によって耐震性が高く、地震時の揺れを抑え、安全性を確保しているのもダイワハウスの特徴です。

一方で、軽量鉄骨造は防音性や遮音性は木造住宅に比べて劣る場合があり、プレハブ規格の制約により大幅なリフォームや増改築には設計の自由度が制限されたりする場合もあります。

パナソニックホームズ:HS構法

パナソニックホームズのHS構法には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

メリット
  • 15cm単位で大空間を含む自由な設計が可能
  • 工場生産による品質管理が徹底され、納期も読みやすい
  • 超高層ビルで使用される「座屈拘束技術」採用で地震に強い
デメリット
  • 建築費用が高くなりやすい
  • 15cm単位のモジュールの制約でデザインが制限される場合もある

パナソニックホームズのHS構法は、軽量鉄骨を用いた耐震構造で、15cm単位のモジュール設計により大空間を含む自由度の高い間取り設計が可能です。

柱や梁を最小限に抑えられるため、吹き抜けや広いリビングなど開放感のある住空間を実現しやすい点が特徴です。部材は工場で精密に加工されるため品質管理が徹底され、現場での施工も迅速で納期が読みやすいというメリットがあります。

また、超高層ビルで使用される制震技術(座屈拘束技術)を活かした「アタックダンパー」&アタックダンパーが組み込まれた耐力壁「アタックフレーム」を採用しているため、地震への備えも万全です。一方で、高性能な構造や設備を採用しているため建設費用は木造住宅より高くなる傾向や、15cm単位のモジュールの制約で極端に個性的なデザインには限界があるというデメリットもあります。

軽量鉄骨の注文住宅を建てる際の注意点

軽量鉄骨造の注文住宅を建てる際には、以下の注意点を押さえておくことが重要です。

  • 結露を防ぐ断熱仕様と窓性能を確認する
  • サビに強い防錆処理と外装・下地の仕様を確かめる
  • 大きな窓や吹き抜けは日よけと冷暖房計画をセットで考える

具体的にどのようにすればいいのか、それぞれの注意点と対策について解説します。

結露を防ぐ断熱仕様と窓性能を確認する

鉄骨は熱を伝えやすいため、断熱仕様が不十分だと結露が発生しやすくなるため、窓や外壁の断熱性能を確認し、気密性と合わせて設計することが重要です。

熱橋を防ぐ施工や高性能窓の採用、換気計画の設計などが快適な住環境のポイントとなります。結露を放置するとカビや腐食の原因になるため、断熱材の種類や厚み、窓ガラスの性能を事前に確認しておきましょう。

また、結露対策として換気システムや調湿建材を活用することで、室内環境の改善が可能です。

サビに強い防錆処理と外装・下地の仕様を確かめる

鉄骨は水分に触れると錆が発生するため、防錆処理が施工されているか確認することが大切です。

溶融亜鉛メッキや防錆コーティングなどの防錆対策が行われているか事前に確認しておくと安心です。サビは構造強度に影響するだけでなく、美観やメンテナンス費用にも影響します。

屋根や外壁の雨仕舞い、排水計画も含めて、防錆対策を一体で考えることが快適で長持ちする住宅につながります。特に塩害が懸念される海の近くなどに軽量鉄骨造の家を建てる場合、防錆対策は必須です。

大きな窓や吹き抜けは日よけと冷暖房計画をセットで考える

大きな窓や吹き抜けは室内を明るく開放的にしますが、日射による暑さやまぶしさの対策が必要になるため、日射取得と日射遮蔽のバランスが重要です。

特に、吹き抜けは上下に熱が移動しやすいため、遮蔽+空調計画+気密断熱を一体で設計する必要があります。初めて家を建てる方は、日射や空調のシミュレーションを行い、冷暖房負荷を最小化する計画を立てましょう。

庇やブラインド、窓ガラスの性能を工夫し、天井ファンや換気計画を組み合わせることで、快適で省エネな空間を実現できます。

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軽量鉄骨はハウスメーカーごとに構法・モジュール・制震技術が異なるため、実現性とコストを横並び比較するのが近道です。

メタ住宅展示場の「家づくりプラン」なら、要望・予算・土地条件を伝えるだけで、複数社から間取り案や資金計画(必要に応じて土地提案・概算見積)を無料一括で受け取り、効率よく比較検討できます。PC・スマホから簡単に申し込め、上場企業(リビン・テクノロジーズ株式会社)が運営しているため、はじめての家づくりでも安心です。

開口・吹き抜け・ビルトインガレージ・防音/断熱仕様など、軽量鉄骨で叶えたい条件の実現性・費用・工期を具体的に比較し、あなたにとっての最適解を絞り込みましょう。

この記事の編集者

リビンマッチ編集部 メタ住宅展示場 編集部

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