プレハブ工法は、「pre fabrication(プレファブリケーション):あらかじめ制作」の通り、柱や梁、壁、骨組みなどの主要部材を、事前に工場で生産・加工して、現場で組み立てる建築方法です。
現場での材料加工がほとんどないため、木造軸組工法=在来工法やRC造などの一般的な建築工法と異なり、天候による作業中断や職人の技量差の影響を受けにくく、工程の安定化と品質の均一化を実現します。
また、断熱・気密・開口部など外皮の仕様を工場で統一でき、設計値どおりの性能を出しやすいので、ZEHなど高性能仕様を標準化しやすくなっています。量産性と性能の再現性も高いため、多くのハウスメーカーで広く採用されています。
ただし、プレハブ工法と一口にいっても、木質系・鉄鋼系・ユニット系・コンクリート系など種類があり、性能や設計の自由度といった特性はそれぞれ異なります。さらに、他の工法にはないデメリットもあるため、自身の敷地条件や希望プラン、将来のメンテナンス方針と照らして確認しておきましょう。
プレハブ工法とは?
プレハブ工法で家を建てる場合、以下の流れで進めていきます。
- 設計・生産計画
- 工場で主要部材を制作
- 主要部材の検品
- 物流・搬入
- 現場据付
- 仕上げ・最終検査
プレハブ工法は、主要部材の制作だけでなく、品質管理や検査の多くも工場段階で完了させるため、現場では基礎・据付・仕上げが中心です。
工期短縮と大量供給を求める社会の要請により需要が増加
戦後の日本は、都市部の深刻な住宅不足により、従来の工法だけでは需要を満たすことができませんでした。
この状況を打開するために、部材を工場で大量生産して現場で組み立てるプレハブ工法が開発され、急速に普及していきます。プレハブ工法は、天候の影響を受けにくく、安定した品質を保ちながら工期の遅延を防げるのが特徴です。
また、現場作業を減らすことでコスト増を抑え、効率的な建築が可能です。近年では、職人や大工の高齢化・人手不足に加え、環境意識の高まりによる廃材削減の必要性から、多くのハウスメーカーがプレハブ工法を採用しています。
一般社団法人 プレハブ建築協会によれば、令和5年度の全着工新築住宅が80万176戸なのに対し、プレハブ着工新築住宅は10万572戸と、全体に対する割合は約12.6%です。
参考:2022 年度プレハブ住宅完工戸数実績及び生産能力調査報告|一般社団法人 プレハブ建築協会
木材や鉄骨やコンクリートなど多様な材質に対応
プレハブ工法は、木材・鉄骨・コンクリートなど、使用する材質を問わず幅広く採用できる建築方法です。
主な種類と特徴は、以下のとおりです。
プレハブ工法の種類 | 特徴 |
---|---|
木質系プレハブ | 柱や梁などの主要構造部材に木材を使用し、自然の温もりや優れた断熱性が魅力 |
鉄鋼系プレハブ | 壁や柱、梁に鉄骨を採用し、高い耐震性と耐久性を備える |
ユニット系プレハブ | 木材や鉄鋼などを主要部材に用い、複数のユニットに分けて工場で製造して現場で組み立てる建築方法 |
コンクリート系プレハブ | 壁や柱にコンクリートを使用し、耐震性や耐久性に優れた堅牢な構造が特徴 |
プレハブ工法と混同されやすいものに「ユニット工法」や「パネル工法」があります。
ユニット工法はプレハブ工法の一種で、建物を複数の箱(ユニット)に分けて工場で製造し、現場で組み立てる方法です。一方、パネル工法は工場でつくった壁・床・屋根パネルを現場で組み合わせて六面体構造を形成する方式で、木造では枠組壁工法(2×4・2×6)が代表例です。
このように、さまざまな材質に対応できる点はプレハブ工法の大きな魅力であり、広く普及している要因の一つとなっています。
プレハブ工法のメリット
プレハブ工法のメリットには、入居時期の見通しが立てやすいことや仕上がりと性能のばらつきが少ないこと、予算計画と将来の維持管理がしやすいことなどがあります。
どのようなメリットがあるのかを理解することで、プレハブ工法ならではの魅力を把握でき、在来工法など他の工法との違いも明確になります。
ここでは、プレハブ工法のメリットについて見ていきましょう。
①入居時期の見通しが立てやすい
プレハブ工法のメリットの一つが、入居時期の見通しが立てやすいことです。
プレハブ工法は、壁や床、ユニットなどを事前に工場で製造して現場で組み立てるため、現場での施工工程が安定しやすくなります。天候による影響も受けにくいため、工期が延びるリスクを軽減でき、引っ越しや子どもの入学、転勤などの予定も計画的に立てられます。
他の工法と比べて工事期間が短いため、仮住まいや二重家賃といった余分な費用を抑えることも可能です。マイホーム購入において重要な引き渡し時期のずれが少なく、新生活のスケジュールを計画的に組みやすいため、安心して準備を進められます。
②仕上がりと性能のばらつきが少ない
プレハブ工法に使われる主要な部材は、工場内で徹底した品質管理が行われ、ロボットや熟練工が厳密な基準に沿って生産します。
そのため、寸法精度が高く、均一な品質を安定して再現できるのが特徴です。例えば、在来工法と比べて人為的なミスが発生しにくく、職人や大工の熟練度に過度に依存せず、規格化されており安定供給できます。
また、現場では部材を組み立てるだけで建築できるため、加工や調整は最小限で済み、施工ミスや手戻りの発生を抑えることが可能です。引き渡し後の不具合リスクも大幅に軽減されるため安心です。
③予算計画と将来の維持管理がしやすい
プレハブ工法のメリットの一つは、予算計画と将来の維持管理がしやすい点です。
プレハブ工法は規格化された部材や設計仕様を用いるため、見積もりの比較や総予算の組み立てがしやすく、予算計画を立てやすい特徴があります。事前に追加費用が発生しやすい部分を把握できるため、予算オーバーのリスクも抑えられます。
また、規格部材を使用しているため、修理や交換がスムーズに行えて、将来的な維持費の見通しも立てやすくなります。工場での製造や施工の記録が残るため、売却時には住宅の性能や管理状況を説明しやすく、資産価値の維持にもつながるでしょう。
プレハブ工法は、住宅に関する費用管理や資産管理の面でも安心できる工法です。
プレハブ工法のデメリット
プレハブ工法には、設計の自由度が制限されやすいことや敷地・搬入条件の影響を受けやすいこと、メーカー独自の仕様に依存しやすいといったデメリットがあります。
メリットだけでなく、デメリットも把握しておくことで、自分たちの条件に合った工法かどうかを判断しやすくなります。
ここでは、プレハブ工法のデメリットについて見ていきましょう。
①設計自由度と後からの変更に制約がある
プレハブ工法は規格化された部材を用いるため、在来工法に比べて設計の自由度が制約されやすいのがデメリットです。
例えば、開口部のサイズや吹き抜けの設計に制限が出やすく、希望のデザインや空間を実現できない可能性があります。工場での手配後に仕様変更を行うことは困難で、変更できたとしても追加費用や工期の遅延が生じやすいため注意が必要です。
また、将来的に間取り変更や増改築を計画する際は、耐力壁や柱など構造上の制約が原因で思うような変更ができなくなることもあります。外観や細部のディテールについても規格化されたものが中心となるため、自由設計と比べると選択肢が限られます。プレハブ工法は、こういった制約を踏まえた上でプランニングすることが大事です。
②敷地条件や搬入条件に左右されやすい
プレハブ工法は、工場で製造された大型ユニットや部材を現場に運び込み、設置・組み立てを行う必要があります。そのため、建築時には次の点に影響が出ます。
- ユニットの搬入可否と搬入ルートの確保
- クレーンの設置可否と作業半径
- ユニット寸法に伴う設計・納まり上の制約
- 必要機材の規模(クレーン・大型車両など)
- 工期およびコスト
- 近隣調整の手間(通行止め・騒音・作業時間帯 等)
また、重量のあるユニットの場合は地盤の強度や基礎の精度に対する要求水準が高くなり、場合によっては地盤改良や補強などの対策費用が発生するため注意が必要です。このように、プレハブ工法を採用する際は、事前に敷地や搬入条件を確認して、コストや工期への影響を踏まえた計画を立てることが大事です。
③メーカー固有仕様への依存度が高い
プレハブ工法は、多くの場合、各メーカー専用の金物や規格部材が使用されるため、不具合や破損が発生したときに、他社での修理・改修対応が難しくなる可能性があります。
また、部材の型番変更や廃番によって、同一部材の入手が困難になったり、調達までに時間がかかったりすることもあるため注意が必要です。オプション追加やグレードアップを行うと、当初の見積額から費用が増加するため、きちんと予算管理を行うことが重要になります。将来的な修理やリフォーム・リノベーションなどを見据え、メーカー独自の部材の供給状況について、事前に確認しておくことが大事です。
プレハブ工法を採用している代表的なハウスメーカー
プレハブ工法は、安定した品質で住まいを提供でき、優れた耐震性なども備えていることから、多くのハウスメーカーが採用しています。
ここでは、プレハブ工法を採用している代表的なハウスメーカー3社の特徴について紹介します。
ハウスメーカー | 特徴 |
---|---|
セキスイハイム(積水化学工業) | プレハブ工法で強靭なボックスラーメン構造体を構築 |
積水ハウス | プレハブ工法で安定した品質と精度の高い住まいづくりを実現 |
ベーベルハウス(旭化成ホームズ) | プレハブ工法で厳格な規格にもとづき各部材を生産し、強靭な構造躯体を実現 |
それぞれの内容について見ていきましょう。
セキスイハイム(積水化学工業)
セキスイハイムでは、自社工場で強固かつ高品質な住宅を生産しています。
セキスイハイムのプレハブ工法の主な特徴は、次のとおりです。
- 精密化された工場でボックスラーメン構造体を組み立て
- 大型機械を用いた施工で安定した精度と強度を確保
- レーザー測定による組立精度の徹底チェック
- 機械に加え熟練した検査員による最終確認で品質を担保
- 屋内生産により風雨による部材や設備の損傷を防止
- 約2万5,000点ものパーツをコンピューターで一元管理
- 2030年度には主要構造体の生産を全自動化予定
- 生産、輸送、施工の各現場にWebカメラを導入
セキスイハイムでは、鉄鋼素材を用いたボックスラーメン構造体により、高い耐震性と耐久性を備えた住まいを提供しています。設計どおりの性能を発揮するため、主要な構造体は工場で生産され、大型機械によって精度と強度を安定的に確保しています。
2023年度時点で構造体生産の自動化率は86%に達し、2030年度には主要構造体の完全自動化を目指す予定です。
また、生産工程ごとに専任の作業者を配置していて、マイスター制度を通じて技術者の育成も行っています。
高度な自動化と人の熟練技術を組み合わせることで、安定した品質と信頼性の高い住宅づくりを実現しているハウスメーカーです。
積水ハウス
積水ハウスは、高性能ロボットや先端技術を導入した工場で主要部材を生産し、安定した品質と精度の高い住まいづくりを実現しています。
積水ハウスの工場生産における主な特徴は、以下のとおりです。
- 工場へのオーダーはすべて顧客ごとの邸名で実施
- 高性能ロボットや先端機器を活用して高精度な生産を実現
- 資材や原材料の選定に独自の厳しい基準を導入
- 生産部門すべてで国際規格「ISO9001」を取得
- 屋内生産により風雨による部材や設備の損傷を防止
- 構造用金物は熟練の作業員が手作業でプレセット
積水ハウスは、木造と鉄骨造の住まいを提供しており、優れた耐震性や耐久性、快適性、デザイン性などで、多くの人に選ばれているハウスメーカーです。「邸別自由設計」を基本としており、高品質なオーダーメイド住宅を実現するために、高性能なロボットを導入しています。
積水ハウスは直接責任施工体制を採用していて、工場で生産した部材を施工するのはグループ会社であり、生産部門との連携のもと高精度で安定した施工を行っています。
ベーベルハウス(旭化成ホームズ)
ヘーベルハウスは、地震・火災・風水害などの災害に強い住まいを提供しています。
工場生産における主な特徴は、以下のとおりです。
- 厳格な規格にもとづき各部材を生産
- 機械と⼈の⽬による厳しいチェックで高い品質を確保
- 熟練工による完全手溶接で独自の角柱を接合
- 日常的な点検・保守や部品の在庫管理を徹底
- ボルト類は温湿度管理された環境で加工・保管して寸法ズレを防止
ヘーベルハウスでは「重鉄制震・デュアルテックラーメン構造」や「ハイパワード制震ALC構造」などを採用し、地震などの揺れから暮らしを守る強靭な構造躯体を実現しています。
独自のALCコンクリート・ヘーベルは、軽量でありながら高い強度を持ち、耐火性・遮音性・耐久性・断熱性にも優れているのが特徴です。
家づくりプランで希望条件に合うハウスメーカーを選ぶ
ハウスメーカーを選ぶ際は、複数のメーカーを比較して、自分たちの条件に合うところを選ぶことが大切です。
これにより「あのメーカーにしておけばよかった」と、後悔するリスクを減らせます。上場企業リビン・テクノロジーズが提供する「家づくりプラン」を利用すれば、複数のハウスメーカーを効率的に比較することができます。1度の申し込みで、複数のハウスメーカーや工務店に間取りや土地、資金計画まで含めたプランを一括で依頼することが可能です。
受け取ったプランを比較・検討することで、自分たちの希望や条件に合うハウスメーカーを選べます。無料で利用でき、パソコンやスマホから申し込めます。
これから家づくりを始める方は、早速「家づくりプラン」を活用して、自分たちの条件に合ったハウスメーカーを見つけましょう。
この記事の編集者
メタ住宅展示場 編集部
メタ住宅展示場はスマホやPCからモデルハウスの内覧ができるオンライン住宅展示場です。 注文住宅の建築を検討中の方は、時間や場所の制限なくハウスメーカー・工務店を比較可能。あなたにヒッタリの家づくりプランの作成をお手伝いします。 注文住宅を建てる際のノウハウなどもわかりやすく解説。 注文住宅でわからないこと、不安なことがあれば、ぜひメタ住宅展示場をご活用ください。
運営会社:リビン・テクノロジーズ株式会社(東京証券取引所グロース市場)