木造軸組工法は、日本に古くから伝わる伝統的な工法で「在来工法」とも呼ばれています。
木材を組み合わせる技術により、部分的な修繕・交換が可能で、長期間の維持が容易という特性や、優れた耐震性を持ちます。そのため、法隆寺の五重塔といった歴史的建造物をはじめ、多くの寺社仏閣にも木造軸組工法が使われてきました。
また、間取りの自由度が高く、他の工法に比べて建築費を抑えやすいことから、現在でも多くのハウスメーカーが採用している代表的な住宅建築工法の一つとなっています。
しかし、木造軸組工法には気をつけるべきポイントもあります。これらを知らずに家を建てると、想定よりも高い維持費がかかったり、施工品質にばらつきが生じたりする可能性があります。
理想の住まいを手に入れるためにも、木造軸組工法の特徴と注意すべきポイントを確認しておきましょう。
もくじ
木造住宅の中で主流となる木造軸組工法
国土交通省の建築着工統計調査報告によると、令和6年度に着工した木造住宅は467,958戸です。木造住宅の中でも、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)が21.2%、木質プレハブ工法が2.4%となっており、残りを木造軸組工法と考えると木造住宅全体の76.4%という高い割合となっています。
日本古来から受け継がれてきた木造軸組工法は、現在でも住宅建築における主流工法として広く普及していることが明らかです。
木造軸組工法で家を建てる場合、以下の順序で施工されます。
- 地盤調査・改良
- 基礎工事
- 土台敷き+1階床下地
- 建て方(柱・梁・小屋組み)
- 屋根仕舞・屋根材施工
- 外壁下地・サッシ・防水
- 断熱・気密・設備荒配管
- 内装下地 → 仕上げ床・壁・天井
- 設備仕上げ・外構
- 検査・引渡し
屋根が比較的早期の段階で取り付くのは、雨の多い日本において、施工中の構造内部や建築資材を雨から守るためです。
このように、木造軸組工法は高温多湿な日本の気候に適した通気性の良さと、間取りの自由度の高さという特徴があります。また、施工できる業者が多いという利点もあり、現在でも日本の住宅建築における主流工法としての地位を確立しています。
日本の気候に適している
高温多湿の日本においては、マイホームの快適な住環境を保つための工夫や取り組みを行うことが重要。
木造軸組工法が、日本の気候に適しているとされる主な理由は、次のとおりです。
- 木材には調湿効果があり、室内の湿度を自然調整するため快適な空間を保ちやすい
- 木造構造は断熱性に優れていて、夏は涼しく冬は暖かい住まいを実現しやすい
- 壁の中や床下、屋根裏などに空気の流れを確保しやすく通気性の高い構造にしやすい
- 間取りや開口部など柔軟な設計が可能なため自然風による換気がしやすい
上記の理由から、高温多湿の日本に合った家づくりに適しており、一年を通じて快適に暮らせる空間をつくることが可能です。
通気性や断熱性が高く、湿気がこもりにくいことから、結露やカビの発生リスクを軽減することもできます。結露やカビは建物の耐久性に影響を与える可能性があるだけでなく、住んでいる人の健康にも悪影響を及ぼす恐れもあります。
日本に住んでいる以上、梅雨時期の湿気や真夏の蒸し暑さといった高温多湿の気候は避けられません。そのため、このような環境に対応するためのマイホームの工夫や対策が大事です。
マイホームは長く住み続ける場所だからこそ、日本の気候に適した家づくりを行うことがとても重要です。
使用木材の種類と品質基準
木造軸組工法でよく使われる木材の種類は、次のとおりです。
木材 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|
スギ | 軽くて加工しやすく調湿性が高い。国内で広く流通している | 柱・間柱など |
ヒノキ | 耐久性・防腐性に優れていて香りも良い | 土台・柱など |
カラマツ | 強度が高く乾燥後の変形が少ない | 梁・土台など |
ベイマツ | 北米産の輸入材で強度が高い | 梁など |
例えば、木造軸組工法の柱には、地域や価格によってヒノキを多用するケースもあれば、スギを中心に使用する場合もあります。
上記以外にも、ヒバやアカマツ、カバ、ナラ、ベイスギ、スプルースといった木材や、化粧張りの集成材など、用途や目的に応じてさまざまな木材が使われることがあります。
なお、木造住宅で使用される木材には、日本農林規格(JAS)などによる品質基準が定められており、構造材として一定の性能を満たすことが必要です。
建築基準法においても、使用する材料は日本産業規格(JIS)または日本農林規格(JAS)に適合するもの、あるいは国土交通大臣の認定を受けたものとするよう規定されています(建築基準法第37条)。
【参考】
施工できる工務店・ハウスメーカーが多い
木造軸組工法は古くからある伝統的な建築工法であるため、施工できる工務店やハウスメーカーが多いことも特徴の一つです。
木造軸組工法は対応できる工務店やハウスメーカーが多いため、サービスの内容や価格、利便性などを比較しながら、自分たちに最適な事業者を選ぶことができます。
選択肢が豊富
多くの工務店やハウスメーカーが対応しているため、マイホームを建てる際には、複数の選択肢の中から自分たちの希望や条件に合った事業者を選ぶことができます。
価格競争が働きやすい
木造軸組工法に対応する工務店やハウスメーカーが多いため、見積もりやプランの比較がしやすく、コストを意識した検討が可能になります。事業者側も他社との差別化を図る必要があるため、コスト削減や価格調整に力を入れる傾向があり、施主にとっては予算を抑えた家づくりが実現しやすくなります。
アフターサポートやリフォームが受けやすい
木造軸組工法に対応する事業者が多いため、将来的にメンテナンスやリフォームが必要になった際も、複数の工務店やハウスメーカーの中から選ぶことができます。緊急時には、スピーディーに対応してくれる事業者を見つけやすいのも特徴です。
ツーバイフォー工法(枠組壁工法)との違い
ツーバイフォー工法は「枠組壁工法」とも呼ばれる建築方法で、規格化された木材を使用し、壁、床、天井を一体化させて建物全体を箱型の構造に仕上げるのが特徴です。
木材の枠組みに構造用合板を貼ることで、建物全体が高い剛性を持つ六面体となり、優れた安定性と強度を発揮します。
使用される規格材は「2×4材」が基本ですが、用途に応じて2×6材や2×8材、2×12材といったサイズが大きな規格材を用いることもあります。
ツーバイフォー工法は北米で誕生し、1970年代以降、日本の住宅にも広く採用されるようになりました。
木造軸組工法とツーバイフォー工法との主な違いは、次のとおりです。
工法 | 木造軸組工法(在来工法) | ツーバイフォー工法(枠組壁工法) |
---|---|---|
構造 | 柱・梁・筋交いを組み合わせて骨組みを構成する構造 | 2×4材などの枠組みに構造用合板を貼り、箱型の構造を形成 |
材料 | 用途に応じてさまざまな木材を使用 | 2×4材を中心とした規格化された木材を使用 |
設計の 自由度 |
間取りや開口部の設計など自由度が高い | 構造上、間取りの自由度は低め |
工期 | 職人の手作業が多く比較的工期が長くなる場合がある | 部材の規格化や施工の効率化により工期は短めになる傾向 |
それぞれの工法には異なる特徴があるため、メリットとデメリットを理解して、自分たちのライフスタイルや希望に合った工法を選ぶことが大切です。
木造軸組工法の構造的特徴から見る住宅性能
木造軸組工法の特徴は以下のとおりです。
- 設計の自由度が高い
- リフォーム・メンテナンスがしやすい
- コストパフォーマンスに優れている
これらの特徴を把握しておくことで、他の工法との違いを理解しやすくなります。また、自分たちに合った工法かどうかを判断することが可能です。
ここでは、木造軸組工法の特徴や住宅性能について見ていきましょう。
設計の自由度が高い
木造軸組工法は、柱や梁といった軸組を組み上げ、その上に屋根や壁、床を取り付けて住宅を完成させます。
壁を設ける位置に制約が少ないため、柱や間仕切り壁を減らして広々とした大空間をつくることも可能です。また、広い開口部を確保して、大きな窓を設置して明るく開放的な住まいをつくることもできます。
例えば、ツーバイフォー工法は壁が建物の主要な構造となるため、パネルのサイズに制限があり、多くの壁を設ける必要があります。そのため、大空間や大開口をつくることが難しく、間取りの自由度が制限されがちです。
木造軸組工法は、このように柔軟な設計が可能なため、住む人のライフスタイルや要望に合わせた空間づくりができます。
建築士と綿密に相談しながら、かなり細かい部分にまでこだわったマイホームを建てることが可能です。さらに、狭小地や変形地など、条件が厳しい土地でも対応しやすいというメリットがあります。
「細部までこだわった設計の家を建てたい」「広々とした空間や大きな開口部を取り入れたい」といった希望がある場合には、木造軸組工法が特に向いているといえるでしょう。
リフォーム・メンテナンスがしやすい
リフォームやリノベーション、メンテナンスのしやすさも、木造軸組工法の魅力です。
木造軸組工法は、壁の位置に柔軟性があって間取りの変更がしやすいため、将来的な増築や改築にも対応しやすいという特徴があります。
例えば、以下のようにライフスタイルの変化に合わせた対応が可能です。
- 一つの部屋を二つに分けて部屋数を増やす
- 複数の部屋を一体化して広い部屋に変更する
- 親世帯と暮らすために二世帯住宅へリフォームする
柱や梁、筋交いなどの構造体はそのまま活かしながら、間仕切り壁を取り外したり移動したりできるため、可変性が高く、住まいの使い方を柔軟に見直すことができます。
また、メンテナンスも比較的容易に行えます。
一方で、ツーバイフォー工法は壁そのものが構造の一部を担っているため、壁の移動や撤去が難しいことが多いです。間取り変更やリノベーションは制限が出やすく、希望どおりの内容を実現できない可能性があります。
「将来的にリフォームやリノベーションを検討している」「ライフスタイルや家族構成の変化にあわせて間取りを変更したい」といった方には、非常にメリットを感じやすい工法といえるでしょう。
コストパフォーマンスに優れる
木造軸組工法は、コストパフォーマンスに優れているのも特徴の一つです。木造は、鉄骨や鉄筋コンクリート造の建物と比べて安価なため、コストを抑えることができます。
また、木造軸組工法に対応している工務店やハウスメーカーが多く、価格競争が働きやすいため、比較的低価格でマイホームを建てられる場合もあります。
そのため「できるだけマイホームの予算を抑えたい」「低価格の工務店やハウスメーカーを探している」といった方にとって、木造軸組工法の家は、魅力的な選択肢ともいえるでしょう。
木造構造の注文住宅を建てる際の注意点
木造構造の注文住宅を建てる場合は、以下の点に注意が必要です。
- シロアリ対策や防湿対策が必要でコストがかかる
- 施工会社によって技術や品質にばらつきがある
上記の注意点を事前に把握して、対策を講じることが、長く快適に暮らせる住まいづくりにつながります。
そのためにも、家づくりの計画段階から信頼できるハウスメーカーや工務店を選ぶことが大切です。
定期的なシロアリ対策や防湿対策にコストがかかる
木造構造で注文住宅を建てる場合、安心・安全な住まいを維持するために、シロアリ対策や防湿対策を行うことが大事です。
シロアリ対策を怠ると、木材が侵食され、住宅の耐久性や安全性に深刻な影響を及ぼす恐れがあります。シロアリの駆除や防蟻処理は、専門の業者に依頼することで対応可能です。
また、ハウスメーカーによっては10年程度のシロアリ保証を備えているケースもあります。
防湿対策としては、風通しの良い間取りにして、24時間換気システムを適切に活用することが効果的です。
湿気がこもりやすい季節や場所では除湿機の導入も検討することで、木材の劣化やカビの発生を防ぐことができます。
シロアリ対策や防湿対策には継続的なコストがかかりますが、家の寿命を延ばし、長く安心して暮らすために大切な取り組みです。
施工会社によって技術に差が出る
木造構造で注文住宅を建てる際は、施工会社によって技術差が出る場合があるため注意が必要です。
例えば、同じ設計図でも、実際に対応する職人の経験や現場管理のレベルによって仕上がりや耐久性に大きな違いが生まれることがあります。
特に木造住宅は構造が繊細なため、丁寧な施工が求められます。
そのため、施工実績や口コミ、現場の見学などを通じて信頼できる会社かどうかを見極めることが大事です。
施工会社を慎重に選ぶことが、後悔のない家づくりにつながります。
ハウスメーカーや工務店選びの際は「大手だから」「近くにあるから」といった理由だけで選ぶのでなく、複数社を比較してから選びましょう。
その際、価格だけでなく、施工体制やアフターサポートなどを確認することが大切です。
メタ住宅展示場で木造軸組工法の理想の家を実現
木造軸組工法を採用しているハウスメーカーは多数ありますが、独自に開発した技術や部材を使用することで、それぞれ異なる性能を実現しています。
例えば、積水ハウスのシャーウッド構法は、MJ(メタルジョイント)接合システムと基礎ダイレクトジョイントという独自技術を使用しています。これにより接合部の強度不足という木の住まいの弱点を克服しています。
また、住友林業のビッグフレーム構法は、日本初の木質梁勝ちラーメン構造を採用しています。幅560mmのビッグコラムという大断面集成柱とメタルタッチ接合により、最大7.1mの大開口と高い耐震性を実現しているという特徴があります。
このように、同じ木造軸組工法でもハウスメーカーによって技術や性能に大きな違いがあるため、独自技術や性能を十分に比較検討し、最適な1社を選択することが重要です。
木造軸組工法で注文住宅を建てたいと考えている方には、メタ住宅展示場の家づくりプランの活用がおすすめです。
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この記事の編集者
メタ住宅展示場 編集部
メタ住宅展示場はスマホやPCからモデルハウスの内覧ができるオンライン住宅展示場です。 注文住宅の建築を検討中の方は、時間や場所の制限なくハウスメーカー・工務店を比較可能。あなたにヒッタリの家づくりプランの作成をお手伝いします。 注文住宅を建てる際のノウハウなどもわかりやすく解説。 注文住宅でわからないこと、不安なことがあれば、ぜひメタ住宅展示場をご活用ください。
運営会社:リビン・テクノロジーズ株式会社(東京証券取引所グロース市場)