注文住宅のトイレは、間取りや設備の打ち合わせの中では後回しにされやすいものの、毎日の使い勝手や満足度に直結する重要な空間です。
そのため、標準仕様のまま決めてしまうと、住み始めてから使いづらさや不満を感じる場合があります。
日々の生活を快適に過ごすためにも、トイレの種類や特徴について、事前に確認しておきましょう。
もくじ
注文住宅で主に採用されるトイレの種類と違い
注文住宅で採用されるトイレの種類は、主に以下の3つが主流です。
- タンクレストイレ
- 一体型トイレ
- 組み合わせトイレ
それぞれのトイレは、初期費用だけでなく、掃除のしやすさや故障時の対応、将来の交換コストまで含めて考える必要があります。特に注文住宅では、住宅会社ごとに標準仕様として採用されるトイレの種類が異なり、オプション費用の出方にも差が出やすい点に注意が必要です。
また、設置条件や使い方によっては、希望しているタイプが選べないケースもあります。例えば、水圧の関係でタンクレストイレが設置できない場合や、間取りの制約で手洗い器の設置方法が限られることもあります。
こうした違いを理解せずに進めてしまうと、「もっと調べておけばよかった…」といった状況につながりかねません。
適したトイレを選ぶためにも、それぞれのトイレの特徴や向いている家庭の考え方について、具体的に見ていきましょう。
タンクレストイレの特徴
タンクレストイレは、便器の背面にタンクがないタイプのトイレです。見た目がすっきりしており、トイレ空間を広く見せやすいのが特徴です。
そのため、デザイン性を重視したい人や、コンパクトなトイレ空間でも圧迫感を抑えたい場合に選ばれることが多くなっています。

出典:ネオレストLS・AS・RS|TOTO株式会社
例えば、住宅でも人気の高いタンクレストイレには以下のような代表モデルがあります。
| メーカー | シリーズ名 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| TOTO | ネオレスト | 清掃性・洗浄力・節水性能に定評があり、グレードによって機能差が大きい |
| LIXIL | サティス | デザイン性が高く、空間をすっきり見せやすい。価格帯も幅広い |
| Panasonic | アラウーノ | 樹脂素材や泡洗浄など、掃除のしやすさに特徴がある |
タンクレストイレは、水道管から直接水を送り込んで洗浄する水道直圧式や、便器内部に小型タンクを内蔵し、ポンプで加圧して洗浄する方式を採用しているのが一般的です。タンク内に水が貯まるのを待たずに連続使用できる点はメリットといえます。
一方で、本体価格や修理費は比較的高くなる傾向があり、故障した場合にユニットごとの交換が必要になるケースもあります。見た目や使い勝手の良さだけでなく、将来的なメンテナンスコストまで含めて検討することが大切です。
一体型トイレの特徴
一体型トイレは、便器・便座・タンクがひとつのユニットとして構成されたタイプのトイレです。タンクレストイレほど価格が高くならず、組み合わせトイレよりも見た目がすっきりしているため、機能性とデザイン性のバランスを重視したい人に選ばれやすい傾向があります。

出典:アメージュシャワートイレ|株式会社LIXIL
注文住宅で採用される一体型トイレには、以下のような代表的なシリーズがあります。
| メーカー | シリーズ名 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| TOTO | GG/GG-800 | コンパクトな設計で空間を広く見せやすく、清掃性と機能性のバランスが良い |
| LIXIL | アメージュシャワートイレ | デザイン性が高く、タンク付きでもすっきりした見た目を実現しやすい |
| Panasonic | New アラウーノV | 樹脂素材を採用し、汚れが付きにくく掃除のしやすさを重視した設計 |
一体型トイレはタンクを備えているため、水圧の影響を受けにくく、設置条件のハードルが低い点も特徴です。
また、凹凸が少ない設計のモデルが多く、組み合わせトイレに比べると掃除の手間を抑えやすい点もメリットといえます。
一方で、便器や便座が一体構造になっているため、故障時に部分的な交換ができないケースがあります。その場合、修理費が想定以上にかかることもあるため、初期費用の安さだけで判断せず、将来的なメンテナンスや交換のしやすさまで含めて検討したい人向けの選択肢といえるでしょう。
組み合わせトイレの特徴
組み合わせトイレは、便器・タンク・便座をそれぞれ別々に組み合わせるタイプのトイレです。従来から広く採用されている形式で、多くのハウスメーカーでは標準仕様として設定されやすいのが特徴です。
最大のメリットは、価格を抑えやすく、将来のメンテナンスにも柔軟に対応しやすい点にあります。例えば、便座のみを交換したり、故障した部品だけを修理したりできるため、長期的なコスト管理がしやすなります。また、停電時でもタンク内の水で流せるので、安心感があります。
一方で、便器とタンクの継ぎ目や凹凸が多くなりやすく、タンクレスや一体型トイレに比べると、掃除の手間が増えやすい傾向があります。また、デザイン面ではやや存在感が出やすく、空間をすっきり見せたい場合には不向きと感じることもあります。
コストを抑えつつ、将来の修理や交換のしやすさを重視したい場合や、「必要十分な機能があればよい」と考える家庭にとっては、現実的で堅実な選択肢といえるでしょう。
注文住宅のトイレでよくある失敗例
トイレは毎日使う場所でありながら、間取りや設備の打ち合わせでは優先度が下がりやすい部分です。その結果、標準仕様のまま決めてしまい、住み始めてから不満が出るケースも少なくありません。ここでは、注文住宅でよく見られるトイレの失敗例を整理します。
リビングやダイニングに近すぎて音やニオイが気になる
注文住宅では、動線を短くしたり水回りをまとめたりする意図から、トイレがリビングやダイニングの近くに配置されるケースがあります。
間取り図の段階では気にならなくても、実際に暮らし始めると、来客時や家族がくつろいでいる最中に音が響いたり、ニオイが気になったりすることがあります。
特に、換気計画が不十分な場合は、音やニオイが居住空間に伝わりやすくなります。「使えないほど困るわけではないものの、毎回少し気を使う」というストレスにつながりやすい点が、この失敗の厄介なところです。
対策としては、間取り段階での工夫が最も重要です。
例えば、トイレとリビングの間に収納や廊下を挟むことで、音やニオイの伝わり方を大きく抑えられます。また、引き戸ではなく開き戸を採用したり、防音性の高い建具を選んだりすることも有効です。
加えて、24時間換気とは別にトイレ専用の換気扇を設け、常時しっかりと排気できる計画にしておくことで、ニオイが居室側へ流れるのを防ぎやすくなります。設計段階で「トイレの位置は音やニオイがどう伝わるか」という視点を持ち、生活シーンを具体的に想像しながら配置を検討することが、後悔を防ぐ最大の解決策といえるでしょう。
トイレの数を減らしすぎて不便
注文住宅では、建築費を抑えるためにトイレの数を最小限にするケースがあります。
特に「1階に1か所あれば十分」と判断し、2階トイレを省略する判断は珍しくありません。しかし、実際に暮らし始めると、朝の身支度が重なる時間帯や、体調不良時にトイレ待ちが発生しやすくなります。
また、2階に寝室がある間取りの場合、夜間にわざわざ階段を下りる必要があり、ストレスを感じる場面も増えがちです。
来客時に家族用と来客用を使い分けられない点を不便に感じる人も少なくありません。子どもが成長し、使用時間やタイミングが重なるようになると、「やはりもう1か所あればよかった」と後悔しやすいポイントです。
解決策としては、現在の家族構成だけで判断せず、将来の使い方まで想定することが重要です。共働き世帯で朝の行動時間が重なりやすい場合や、2階に個室が集中する間取りでは、2か所目のトイレがあることで日常のストレスを大きく減らせます。
また、フル仕様のトイレを2か所設ける必要はなく、2階はシンプルな組み合わせトイレにするなど、仕様にメリハリをつけることでコストを抑えつつ利便性を確保する方法もあります。
初期費用だけで判断せず、「毎日使う回数」と「不便を感じる場面」を具体的に洗い出したうえで、トイレの数を検討することが後悔を防ぐポイントといえるでしょう。
トイレ内に収納を設けず掃除用品や備品の置き場に困る
注文住宅では、トイレをできるだけコンパクトにしようとするあまり、収納を設けずに計画されることがあります。図面上では問題なさそうに見えても、実際に暮らし始めると、トイレットペーパーのストックや掃除用品の置き場に困りやすくなります。
その結果、床に直接置いたり、簡易的なラックを後付けしたりすることになり、見た目が雑然とした印象になりがちです。床に物が増えることで掃除がしにくくなり、「せっかく新築なのに生活感が出てしまう」と感じる原因にもなります。
対策としては、設計段階で最低限の収納スペースを確保しておくことが重要です。
例えば、壁厚を利用したニッチ収納であれば、空間を圧迫せずにトイレットペーパーや清掃用品を収めることができます。また、手洗いカウンター下を収納として活用したり、目線より高い位置に吊り戸棚を設けたりすることで、床をすっきり保ちやすくなります。
後から収納を追加すると、圧迫感が出たり動線を妨げたりすることもあるため、「何をどれくらい置くか」を事前に想定したうえで、無理のない収納計画を立てておくことが、トイレの使い勝手と満足度を高めるポイントといえるでしょう。
トイレの広さを最小限にしすぎて圧迫感がある
注文住宅では、延床面積を抑えるためにトイレの広さを最小限に設定するケースがあります。法的な最低寸法やカタログ上の数値は満たしていても、実際に使ってみると狭さを感じることが少なくありません。
特に、掃除をするときや、小さな子どもの補助が必要な場面では、身体をひねったり立ち位置を工夫したりする必要が生じ、使いにくさを実感しやすくなります。将来的に手すりの設置を考えた場合、余裕のない広さでは対応が難しくなることもあります。
対策としては、数値だけで判断せず、体感的な広さを意識して計画することが重要です。
例えば、引き戸を採用すれば、扉の開閉スペースを気にせず使えるため、同じ面積でも圧迫感を軽減しやすくなります。また、明るい色で統一した内装や床や壁の継ぎ目を少なくすることで、視覚的に広く感じさせることも可能です。
トイレは面積を削りやすい空間だからこそ、「最低限」ではなく「無理なく使える広さ」を基準に考えることが、後悔を防ぐポイントといえるでしょう。
注文住宅のトイレ選びで迷ったときの判断基準
トイレ選びに、誰にとっても当てはまる絶対的な正解はありません。
掃除のしやすさを重視するのか、初期費用を抑えたいのか、将来の修理や交換のしやすさを優先したいのかによって、選ぶべきトイレのタイプや仕様は変わってくるためです。
そのため、家族構成や在宅時間、来客の頻度、将来の使い方までを具体的に想像したうえで判断基準を持つことで、「何となく選んだ結果の後悔」を避けやすくなります。
トイレは毎日使う設備だからこそ、スペックではなく暮らしとの相性を軸に考えることが大切です。
トイレ単体で決めず間取り全体とのバランスを見る
トイレの使い勝手は、便器の性能や設備のグレードだけで決まるものではありません。実際には、どこに配置されているか、どの部屋と隣接しているかによって、満足度が大きく左右されます。
例えば、トイレ自体の性能が高くても、リビングやダイニングに近すぎると音やニオイが気になりやすくなります。
また、寝室のすぐ横に配置した場合、夜間の使用音がストレスになることもあります。こうした問題は、トイレ本体を選び直しても解決できず、間取り全体の計画に原因があるケースがほとんどです。
そのため、トイレを検討する際は、「どのトイレを入れるか」だけでなく、「どの位置に配置するか」「廊下や収納を挟めるか」「来客動線と生活動線を分けられるか」といった視点で考えることが重要です。
間取り全体とのバランスを意識することで、設備の性能を十分に活かしつつ、後悔の少ないトイレ計画につながります。
一社の提案だけで判断しない
「注文住宅のトイレ」は、一社の提案だけを見て判断してしまうと、「本当に必要な部分にお金をかけられているのか」「逆に削っても問題なかった部分はどこなのか」が分かりにくくなります。
複数社の提案を並べて比較することで、トイレにかける費用の妥当性や、自分たちに合った仕様の落としどころが見えやすくなります。
こうした比較を効率よく行う方法として、「家づくりプラン」を活用するのもひとつの手です。
延床面積や間取り、家族構成などの条件をそろえたうえで複数社の提案を見ることで、トイレの仕様やコスト配分の違いを冷静に比較でき、「何となく決めてしまった」という後悔を防ぎやすくなります。
この記事の編集者
メタ住宅展示場 編集部
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運営会社:リビン・テクノロジーズ株式会社(東京証券取引所グロース市場)




