家の向きは、最大開口部が面する方向を指します。一般的にリビングの窓を最大開口部とするため、リビングの向き=家の向きとなります。
家の向きは、南向きにするケースがほとんどですが、なかにはあえて南向きを避けることもあります。
この記事では、南向きのメリットや注意点、南向きにしないほうがよいケースについて紹介します。住宅購入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
もくじ
ほとんどの人が南向きを選択!メリットとは
家を購入する人のみならず、賃貸物件を探す場合も南向きを条件とする人は多いです。あらためて、南向きのメリットについて紹介します。
一番は日当たりのよさ!
なんといっても、南向きの部屋は日当たりがよいというのが一番のメリットです。
設計士が間取りを考える際は、基本的にリビングを南にします。ハウスメーカーによっては設計士でなく担当営業が間取りを考えることもありますが、リビングを南に配置するように研修を受けていることもあるようです。
日中を自宅で過ごすというライフスタイルの人にとっては、年中明るい空間で過ごせます。そのためほとんどの人が南向きに家を建てます。
明るい庭がつくれる
家を南向きにするということは、日当たりを確保したいからです。日当たりを確保するためには、建築する土地の南側を確保する、つまり家は土地の北側に寄せるということです。
家を北側に寄せることで、必然的に庭は空いている南側につくられます。
家庭菜園がしたい、夏は子どもを家庭用プールで遊ばせたい、などの要望があれば明るい南向きの庭がピッタリでしょう。
プライベートの確保がしやすい
南向きの家が人気ということは、ほかの人も南向きに建てているケースが多いということです。
周囲とリビングの向きを合わせることで、プライベートの空間を確保できます。たとえば、南向きリビングの家と、北向きリビングの家で隣接した場合、自宅リビングのカーテンを開けるとすぐに隣の家のリビングがあるということになります。
新しい分譲地で、周囲がまだ建てていない状態では、周りがどのような間取りの家を建てるかがわかりません。そのような場合でも無難に南向きにしておくことで、隣人とのトラブル防止につながります。
フェンスなどで目隠しをすることも可能ですが、決して安い金額ではないうえ、高いフェンスを設置するとお互い圧迫感を覚えてしまうこともあり、あまりおすすめはできません。
また、フェンスがあると建物の周りに死角ができやすくなり、空き巣狙いのターゲットにもされてしまいます。
南向きにする際に気をつけるべきこととは
南向きにすることで、起こる不都合もあります。ここで紹介する項目に注意し、対策しましょう。
日当たりがよいからこそ気をつけるポイント
日当たりがよいので、昼間は照明をつけなくても太陽の光が室内に入ってきて快適に過ごせます。その分、気をつけなくてはならないのは、壁紙や床、カーテンの日焼け、退色といった紫外線による損傷です。
- 壁紙の色が焼けてくる
- ラグをひいているところとそれ以外の床の色が異なる
このように日当たりのよさから起こってしまう注意点があります。
南向きの家にする場合は、紫外線に強い壁紙や床材を選ぶ、日焼けが目立ちにくい色にするということも頭に入れておくとよいでしょう。
床の色は濃いウォールナット系のものやブラックチェリーなどの赤みを帯びた色は日焼けが目立ちやすく、無垢材のものは飴色に変わり経年変化が起こりやすくなります。

注文住宅で建てる際には設計士やインテリアコーディネーターに相談すると、より専門的なアドバイスをもらえます。
高気密・高断熱の建物にする
日当たりがよいことから、夏は室内が暑くなりやすく、エアコンの稼働時間が長くなります。一方で冬場は建物が暖かくなる分、暖房代がかからないというメリットがあります。
そのため、夏場の光熱費には注意しなければいけません。子どもがいる場合は、学校の夏休みが約40日あります。子どもが自宅にいる時間が長くなる分、当然エアコンや扇風機を使うことになるでしょう。
そこで、建物を建てる際に、高気密・高断熱の仕様にすることが重要です。よくC値(シーチ)やUA値(ユーエーチ)という言葉で高気密・高断熱の性能を表します。
- C値:建物にどれだけ隙間があるかを表す数値。「相当隙間面積」ともいい、数字が小さいほど気密性が高い。
- UA値:屋根や壁、窓から冷暖房の空気がどれだけ逃げていくかを表す数値。「外皮平均熱貫流率」ともいい、数字が小さいほど断熱性や省エネ性が高い。
どちらか一方の性能がよくても意味がありません。C値は大工さんや電気業者さん、水道業者さんがいかに丁寧な施工をするかがポイントです。隙間を専用のテープでふさぐ、コーキングを打つなどの気密施工をするかで効果は大きく変わります。
UA値は断熱機能の高い材料を使うことで値が変わります。外壁と石膏ボードの間に使う断熱材、サッシの種類でもUA値は変わります。
断熱材は建物が完成してしまうと見えないため、あまり気にしないという人も多いです。
人気なのは、グラスウールと呼ばれるガラス繊維を綿のようにした断熱材で、隙間なく施工すると高気密の性能を発揮します。
サッシもアルミ、半樹脂、樹脂と分かれますが、一番断熱の性能が高いのは熱を伝えにくい樹脂サッシと呼ばれるものです。断熱材もグレードが上がるほどコストはかかるので予算とのバランスが重要です。
土地とのバランスを考える
南向きの家はメリットが多いのですが、建てる場所がどういった土地なのかを理解する必要があります。
たとえば南に道路が面している場合、その道路の交通量が多いとせっかく日当たりのよいリビングが南にあっても窓を開けるのは抵抗があります。
外構工事でフェンスをして目隠しをするなどで対処はできますが、日当たりが少し悪くなってしまったり、フェンス設置のコストがかかってしまったりします。
ほかにも、土地が南北に縦長の形状をしている場合、駐車場も南に配置することが多いです。その際に駐車スペースがリビングの前になってしまうと、駐車スペースにカーポートをつけたい場合は、せっかく日当たりがよくてもカーポートが遮ってしまうおそれがあります。
土地とのバランスを考慮したうえで南向きが適しているかを判断する必要があります。
あえて南向きにしない人もいる?
あえて南向きにしない人もいます。ここで紹介するケースに該当する場合は南向き以外を検討してもよいかもしれません。
夜勤が多い仕事をしている場合
南向きの家は日当たりがよく、日中を自宅で過ごす人にはおすすめです。
しかし、夜勤が多い人や勤務時間が変則的な人にはあまり恩恵がありません。むしろ夜勤の場合、寝るのは日中になるため、明るすぎたり暑かったりすると睡眠の邪魔になるかもしれません。
そういう人は、北向きのほうが相性がよい場合もあります。北からの光は常に一定の明るさのため、一日中やわらかな光が入ってきます。北側は暗いのではないかというイメージを持つ人も多いですが、窓の大きさや位置、取り付け高さを高くすることでむしろ均一な明るさを確保できます。
家でどのような生活を送っているかイメージすることも大切です。
土地代を抑えたい場合
南向きの家が建てやすい土地は人気が高く、高額な傾向にあります。
土地から探して新築戸建てを建てたい場合、少しでも土地代を浮かせて建物に予算をかけたいという人は、南向きの家にこだわる必要はないと考えられます。
その場合は、西向きや北向きの間取りが向いている土地を選ぶことで、少しでも予算を抑えられます。
特に現在(2022年8月時点)は新型コロナウイルスやウッドショックの影響を受けて、数年前から建物価格は高騰の傾向にあります。もともと計画していた予算を数百万単位で上回る人も多く、建築業界でも価格が下がってくるということは当面ないといわれています。
どうしても予算を上げたくないという人は建物の向きも見直す必要があるといえます。
意外と多い?コレクションを持っている場合
紫外線によって傷みやすいのは床や壁紙、カーテンだけではありません。
- 書斎を作って本を収納したい
- これまで集めてきたコレクションを飾りたい
- 思い出の家族写真を飾りたい
こういった趣味趣向を持っている人は、せっかく集めた本やコレクション、写真は日が当たると色あせを起こしてしまうため南向きを避けます。特に手に入りにくいものや1点ものは、よい状態でいつまでも保管していたいはずです。
このような理由から南向きの家を避けることもあるようです。
「どのような生活を送りたいのか」を考えよう
家の購入を検討する際は、どういった家にするのかを考える前に、自身や家族の生活スタイルから、「どのような生活を送りたいのか」をまず考えてください。
設備や間取りをテレビや友人宅に憧れて真似したものの、活用しなかったという話は珍しくありません。
夢のマイホームではあれもこれもと妄想が膨らんでしまいがちです。
建築計画を進めていくには、不動産会社のサポートが必要です。しっかり話を聞いてくれて、時に現実的な提案もしてくれる担当者を見つけましょう。